五章 アマルスクール 其の肆
神秘の解放 神秘解放
幻想換装の中に眠る力を顕現させる事を神秘解放と呼び、解放時、神秘は頭上に輪っか即ちヘイローとして姿を現す。解放するには自身の因果への深い理解が必要である。
@skoll_worldo様より頂きました!サクラコ・イン・フューチャーワールドの手前から、主人公の秤 桜子、旧須 結衣、レイズ・ヴァラティタスです!
ガントレットが光出すと盾は四角形となり拳は小さな少女の体には似つかわぬ程大きなモノになっていた。
ツクヨの頭上には特殊な形状をした薄紫の輪っかが浮かび上がっており、レイズの足止めを簡単に振り解くと桜子の突きを同じく突きで叩き伏せる。
両腕の巨大な拳は誰かを守るために洗礼された幻想換装となっており、ツクヨは五つの突きを弾いた瞬間、桜子と五本の剣に拳を振り翳しながら呟いた。
「転醒神・緋炎砲」
盾の一部が開き、炎が溢れるとツクヨの突きは加速し、桜子が今まで感じた事ない程の一撃が体へ放たれた。
しかし、吹き飛ばされた桜子をレイズが自らの神秘で重力を操作し、彼女の体をそっと受け止めると彼の方から喋りかける。
「礼はいらねえから俺に合わせろ」
「お母さんから礼はしろって言われてるからありがとう。それとツクヨ先輩に勝つには私だけじゃ無理だから、あなたの方こそ私に合わせて」
彼らは短く言葉を交わすと作戦は伝える事なく、レイズはツクヨが動く方向に向けて幾つもの杭を作り出した。
本来であれば一本で身動きすら取れなくするほどの重力の杭をツクヨは気にする事なく動き続け、そんな中を桜子も走り回る。
レイズが覚えた違和感。
それは彼女に重力の操作が効いていない事。
神秘の解放すらしていない少女が抗えぬはずである重力を最も簡単に駆けている事。
しかし、今はそんな事は気にしていられないと杭をツクヨの背後に作っては逃げられるを繰り返す。六本目の杭を刺し終わった瞬間、レイズは彼女の動きを完全に止めようと叫んだ。
「夜乃神・重力場」
六本の杭に浮かんでいた黒い球体が動きを止めると先ほどよりも広範囲で強い重力がツクヨの体に襲いかかる。
辺りの地面を潰すほどの重力により、流石のツクヨですら膝をつくも、それを気にすることなく、桜子は駆けた。
二本の剣を浮かべながら一本の剣を手に力を込める。
「魔桜三刀流! 似鳥・一振り! 」
二本の剣が動きの鈍ったツクヨの拳を弾くと彼女の体に初めて隙と言う隙が生まれ、これを逃さんと力の限りに剣を振るった。
それと同時に完全に息を潜めていた狩人がこの時とばかりに短く呟く。
「神秘解放、双星神」
結衣の頭上には二つの三日月の形をした黄色い輪っかが浮かび上がった。
そして、それに応えるように狙撃銃の先が巨大な銃身へと変わっており、その引き金を躊躇いもなく引く。
ドカンと言う爆発音と共に銃弾はツクヨに向かい放たれ、三人の殺意が一つとなり彼女一人へと向けられた。
(想像以上だね〜、三人とも素晴らしい。桜子ちゃんは神秘の解放はしていないにも関わらず、あの力。他の二人は剪定者の候補にもなれる。これなら、これなら慎一郎先輩、あなたの夢を叶えられるはず)
凶刃と凶弾。
加えて重力による動きの制限。
ついさっきまでいがみあっていた二人と息を潜めていた一人の完璧なまでの連携にツクヨは心を踊ろらせ、自ら神秘のギアを上げるために彼女の体には似合わぬ程の大声を上げた。
「神秘拡張、転醒神太陽」
頭上の輪っかは先程同様のものが二本になっており、ツクヨの体に降りていた転醒の神の依代から更に力を引き出すために、彼女の手に握られていた武器が変化する。
因果に秘められた神秘は解放されると同時に次のステップへ進むことが出来るチケット。
自らの神秘の理解度を上げ、その因果の形を変化させる。
一握りの才能と努力を怠らない強者にのみ許された領域。
それこそが神秘の拡張。
桜子の斬撃と結衣の銃弾は両腕から外れた二つの浮かんだ拳が受け止めた。
浮遊ユニットの様になった拳とツクヨの腕には先程とは違うガントレットが付いており、三人の前に脅威として立ち塞がる。
「これまで出させたからには君達はもう合格でいい。でも、更に引き出したい。もっと死地に立てばその才能を引き出せるんじゃないかな? 」
右目の緋色と左目の瑠璃色が彼女の周りに吹き荒れる炎によって鮮やかに照らされる。
煌々と燃える彼女の闘争心と野心。
両方が普段押さえ込んでいる偽りの自分を曝け出し、本能を剥き出しにした。
満身創痍の三人に意気揚々と盛る一人。
ボロボロではあるものの目の前に立つ壁に立ち向かおうとする意志はしっかりとあり、それを感じ取ったツクヨは彼らに向かって走り出す。
そんな彼らとの間に刀を携えた銀髪の青年が立ち塞がった。
「ツクヨ先輩、欲張りすぎ。それは自分にもたまにしか見せてない本気。抜け駆けは許さない」
彼の幻想換装である刀が腕に握られており、歯止めの利かなくなっていたツクヨに対して刃を向ける。
「ヒビキくん、退いて。これは彼らの成長のためには必要なの」
「ん、嫌だ。ツクヨ先輩の本気は自分に向けてほしい。新入生なんかに向けないで欲しい」
ヒビキはそう言いながらツクヨに向けて刀を振るうも彼女はそれを簡単に弾き、目的の三人へ向かおうとした。
そんなツクヨの姿を見て、自分に向けられない気持ちにヒビキは嫉妬する。
彼女の本気は自分だけのもの。
向けるなら自分へと、自分だけに向けてほしい、自分だけを見てほしい。
嫉妬心が己の神秘と呼応してか、自分の力を使えと叫んでくる。
ヒビキは無理に抑えつけようとせず、刀を握る力を込めて、自らの神秘を解き放った。
「神秘解放、黄泉津狼」
ヒビキの頭上に紫の雷の様なギザギザとした輪っかが生まれると刀に靄がかかり、黒い刀身の薙刀が姿を現した。
自分の背後に現れたもう一つの神秘に気づき、ツクヨが背後を向くとヒビキは既に薙刀を容赦なく突きを放っていた。
刀身がツクヨの頬を擦り、血が垂れるとヒビキはそのまま薙刀を横に振り払う。自分の首へと向けられた刃を当たる間一髪のところで避けると浮遊していた拳型のユニットをヒビキにぶつけて距離を取った。
薙刀の柄で防ぎ、ヒビキはすぐに体勢を持ち返すとようやく自分にツクヨの意志が向けられた事にワクワクしており、戦いのギアを上げようと彼女に向かって走り出す。
互いの間合いに入った瞬間、薙刀と拳型のユニットがぶつかり、火花を散らす。ツクヨもヒビキも笑顔を絶やすことなく、武器をぶつけ続け、置いてきぼりの三人はポカンとした表情でそれを眺めていた。
「なんなんだ、あの人達は」
レイズがそう言うとその背後にセラが立っており、ため息をつきながら答える。
「すみません、ヒビキくんはツクヨ先輩のことが好きで皆さんに先輩を取られた様に感じたようです」
「答えになってないぞ」
しかし、彼らは斗南ツクヨの実力とそれに簡単に食らいつくヒビキの姿を眺めながら自分達が目指すべき領域を確認した。
そんな彼らの視線にセラもまた彼らが立派な役員になってくれるであろうと期待を込めて、目の前で戦っているツクヨとヒビキをおいて再び口を開く。
「とりあえず、皆さんお疲れ様でした! ツクヨ先輩が合格と言っていましたので皆さんを生徒会役員候補としてこれから私達と一緒により良い学生生活を送れる様に頑張って行きましょう! 」
次の瞬間、ツクヨとヒビキの打ち合いで火柱が立つと同時に爆発音が鳴り響いた。
新入生三人は唖然とし、セラは涙目になりながら彼らのことを眺め続ける。
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