三十八章 四季祭「春」 其の弐拾壱
サクラコ裏話
魔剣気について。
桜子は四本の浮遊剣と手に握る一振りの剣で戦っている。これは桜子の母が元々一本の大剣であったものを桜子が扱いづらそうにしていたから五つに分けた。その結果、桜子の神秘は四本の浮遊剣と共に分割され、時間経過と共に徐々に神秘の総量が上がっていく特殊なものとなってしまった。四季祭「春」にて、桜子は自身の浮遊剣が神秘により、動いていたこと、自身に流れる神秘の操作を覚えた。それらを存分に使い、彼女だけが作った技が魔剣気である。魔剣気は浮遊剣の操作権を捨てることでその分の神秘を桜子本人に渡すというもの。持っている神秘が増えれば出来ることも増えると解釈した結果、4thでは、身体能力の上昇。3rdでは、神秘による攻撃範囲の延長。2ndでは、神秘による相手の神秘の全自動中和。(これは相手が自信を強化するタイプの神秘であれば剣を交えた瞬間に強化した箇所を中和で無効にしたりも出来る)。1stでは、神秘による遠距離斬撃を放てる様になる。(この斬撃は2ndの神秘の全自動中和も含まれているので当たった箇所を神秘で覆っていた場合、その箇所を中和し、相手が強化していた能力を無効化することが出来る)
***
桜子の神秘を見てツクヨは笑顔を溢す。その深さ、その底知れなさ、それら全てが彼女の想像を超えており、自身をも超える可能性を秘めた桜子の姿に笑いを隠せずにいられなかった。
(桜子ちゃん、すごいね。間違い無く、私に至る。いや、超えるんじゃないかな)
笑いが止まらず、卓上に乗せられた最高の料理に対しての笑みと思慮。
「おいおい、ツクヨぉ〜。顔、ヤバいぞ」
刃も嬉しそうな表情を浮かべながらツクヨに声をかけるとハッとなり、すぐに普段通りに取り繕おうと頭を振った。
「今のは忘れて」
「嫌だね、あんな顔見せてくれんなら俺と戦う時もそれしてくれよ」
「性格悪いね、刃くん」
「お互い様だろ?」
互いに会話を交えながらも桜子の試合に目を向ける。
***
桜子の本来の神秘は大きさでは無く、深さを感じさせた。
「桜子!!!!」
アランは怒り任せに走り出し、自身の神秘を纏わせると拳を振るった。神秘の波長を多重に変化させ、自らと桜子を繋げ、彼女に自身の痛みと感情を理解させようと感情任せの拳を振るう。
桜子は構えた剣の柄を力強く握りしめると向かい来るアランに対して真っ向勝負を持ちかけた。
アランのせまりくる拳に対して、桜子は冷静に、彼の攻撃をいなす。自身の体にアランの神秘が纏わり付くのを理解しており、終わらすのであれば一撃でキメる、いや、一撃で決めきらなければこちらが終わる、そう考えていた。
魔剣気、1stは無色透明である桜子の神秘を全て一つに纏めたものであった。故に、未知数であり、桜子本人ですら何が出来て何が出来ないのか完全に把握出来てない。ただ、その未知数性は誰もが思い付かない手段となる可能性の塊である。
振り翳される拳を丁寧に弾き、桜子は自身の神秘の可能性について考え始めた。
(一撃で終わらすには剣に全力で神秘を注ぐ? これだとアランが耐えた時、私が不利。じゃあ、どうするか、うーん、神秘が気づく前に相手を倒す。なら、構えはこれで、神秘の注ぎ方はこうで……)
自身が編み出す勝利の法則。
桜子はそれに則り、手に握る剣を腰に差した。
その構えは抜刀術のもの。
桜子が決めたのは最速、最強の一撃を放つための型であり、失敗すれば自身が危険に晒される可能性があるものでもあった。
襲いかかるアランは構えた桜子に対して、恐れることも止まることなもなく、無我夢中で距離を詰める。
自身だけを傷つける桜子に向けるのは憎悪と嫌悪。
初めて知った痛みと言うものに対しての怒りを桜子へとすり替え、自分の欲していたはずの痛みを拒む。
アランは自身の神秘を一箇所に集中させ、その拳を桜子へと放った。
既に、桜子の体にはアランの神秘により、ある程度の痛みを共有される状況になっていた。最後の一撃が当たれば桜子と自身の肉体の受けて来た傷を彼女と共有し、倒すことが出来る。
迷いは無く、自身が傷つくことに恐怖はあれど桜子も共に傷みを分つと確信したアランは止まらなかった。
そこには技術もなく、感情任せにただ振りかざすだけのパンチ。
それを前にして、桜子は母から習った剣の最奥を魅せる。
「魔桜一刀流奥義、無龍・晩華」
一言残した後、腰に差されていた剣を抜く。
桜子自身が最速であると豪語する斬撃は正しく目にも止まらぬ一撃であった。
決まったことすら、当たったことすら、知っているのは桜子のみであり、彼女の腰には先ほど同様に剣が腰に差されていた。もとより、自身が最速の技として決めていたモノに、自身の神秘を一点集中させ、全てを載せて解き放った結果、何が起きたのか周りは理解できない、そのような状況が生まれた。
アランは桜子を前にして、その洗礼された神秘を見て、自身の脳に刻まれていた記憶がフラッシュバックした。
***
最後の戦場。死に行く武器と、動かぬ肉塊。知ってる者だった手と足。残らぬ半身。それらを前にして少年は何を思わない。何も思えない。
歪に歪まされた感性と感覚を持っていたただの消耗品であった彼は自身もこの戦場で死ぬことを覚悟していた。
死を恐れることはない。この戦場で死ねるのであれば今までで一番の安堵を得られる、残っていたのか分からない感情がそう囁いていた。
だが、その日、何者でもなかった使い捨ての道具であった彼は人と成る。
神々しくも禍々しい、両極端の性質を持ったそれは彼の目の前に降り立った。
(な、んだ? あれ)
目の前にあった自分達を傷つけていたものが、存在が降り立った者が剣を振り翳すだけで全て無くなり、消えていく。
「あら、少年、元気? あなた達の戦争、五月蠅かったから全部終わらせたわ。後処理とか考えなくていいから私の前から消えなさい。死にたくなければね」
***
あの時見た光景、自身を気まぐれに救った女神。
後に、彼女が魔王であると知った。そして、魔王である彼女をアランは神の様に崇拝していた。
その魔王が、あの時、見せた神々しいまでの神秘が、桜子が見せた神秘と重なり、倒れる最中に口を開いた。
「魔、王、?」
桜子の見せた神秘を前に、落ち行く意識の中で放った言葉。アランの神秘は桜子の攻撃に気付く事なく、彼は地面へと倒れ込んだ。
会場は何が起きたのかサッパリ分からず、時が止まった様に静まり返っていたものの自身の勝利を確信した桜子だけが自分の時を過ごしており、右手でピースサインを上げた。
それに気づいたクロノはハッとしていた口を動かし、四季祭「春」決勝戦の結果を告げる。
「決着!!!! 決着です!!!! 四季祭「春」決勝戦!!!! アラン・カロVS 秤 桜子、勝者は、いや、四季祭「春」優勝者はアマルスクール、秤 桜子選手!!!!」
四季祭「春」決勝戦
アラン・カロVS 秤 桜子
優勝 秤 桜子
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自作の続編でもあるのでもしよろしければこちらも是非!




