三十七章 四季彩「春」 其の弐拾
サクラコ裏話
桜子の技名はニ〜五までは鳥の名前、一から零で龍がつくようにしてる。作者がかっこいいと勝手に思ってからそうしているのと桜子自身が技を作る時になんと無く読んでいた鳥類図鑑から取っているのと龍はかっこいいからという理由でつけてるよ。
(傷、つかない? なん、で? なんで、だ? 何故、何、どうして?)
地面へと膝を着くも桜子は止まらない。
魔桜二刀流奥義、撥咫硝子は八箇所を容赦なく切り裂く技であり、相手が一瞬でも隙を見せた瞬間を突き、削る。そこに温情は無く、一度発動すれば相手が倒れるまで続く無限地獄。
桜子は神秘過受体質ではない。
だが、ひたすらに神秘に晒されていた結果、他の人間よりもその持てる総量が多くなっていた。そして、今、積み重ねてきた全てのものを使い、全力でアランを傷つけるためにそれらを振るう。
膝をついたからなどと言う理由で桜子は止まらない。
(これは結衣の分、これはレイズの分、これも、これも、これも! これも! これもこれもこれもこれも、全部、彼らの分!)
これまで一度も、自身のみを傷をついたことないアランに取ってそれは煩わしく、鬱陶しく、痛かった。
アランには痛覚遮断機構が施されており、痛みを、恐怖を感じる感覚が極限までに薄れていた。
だが、レイズとの準決勝、そこで彼は恐怖を思い出した。うっすらとだけが自分が持っていた感情、無理矢理蓋をされていた感覚が水面下に現れていた。
そして、その時の恐怖が楔となり、突き刺さっていた結果、アランは痛みを理解し、痛みに恐怖した。
(嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ! 僕は、痛みを知りたかっただけなのに。こんなに痛みが、傷が、痛いなんて聞いてない! 僕だけが傷ついて、痛めつけられてあんまりだ。あんまりだあんまりだ)
アランは痛みを知り、痛みを恐怖し、痛みを拒んだ。
自分だけが痛みを知らず相手を傷つけていたと言う事実に彼は目を向けず、いや、向けようとせず、それを他人と共有していないことに怒る。
怒りと、狂気。
それらをミックスし、抽出した結果、彼は自分の神秘を更なる段階へと引き上げた。
桜子はアランが発していた神秘を全自動で中和する様にしており、連撃を止めることなく続けている。だが、そんな桜子の連撃の最中、アランの頬を剣で斬った瞬間、彼を斬った同様の切り傷が生まれ、血が垂れた。
アランは無意識のうちに神秘の波長を変化させていた。
神秘の中和に必要なモノは相手の神秘の能力の理解とその神秘の持つ波長を知ること。
自身の窮地にて成長を見出すのは桜子のみならず、アランもまた同じ。桜子は自身の頬に溢れた血を腕で拭き、その箇所が赤く染まった。
お気に入りの学生服が赤く染まるもそれは今の彼女には関係なく、自分を脅かす可能性を手に入れたアランに対して可能な限りの情報整理を始めた。
(全自動中和はゴリゴリに神秘を食うから、今、私が動きながら神秘が上がっていってるけどそれを上回る速度で失ってる。ガス欠までざっと3分、かな。一旦、立て直す? いや、攻めて攻めて攻めまくる。こっからは、とっておき見せてあげるよ)
この間、約0.2秒。
距離は変わらず、握る得物を一本投げ捨てる。
「魔剣気、1st」
桜子の神秘が一つとなり、集約する。
握るのは一本のみ、失った神秘が戻ってきた訳でもない。
だが、彼女の神秘の深みは今までで一番深く、底知れぬものとなっていた。
アランはその姿を見た瞬間、傷つけられた体と与えられた痛みによる怒りをぶつけるために叫んだ。
「桜子ぉぉぉぉォォォオ!、! お前は、お前だけは! 堕とす、堕とす、堕とす、堕とす! 俺に痛みを教えたお前だけは! 許さない!」
アランの声を聞き、桜子は剣を構えると不敵に微笑みながら応えた。
「痛みが知りたいだ、他人と繋がりたいだ。そんなこと言ってたのに自分の体に刻まれた痛みは怖いんだね! アラン! いいよ! やってみせてよ! 最終ラウンドだ!」
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自作の続編でもあるのでもしよろしければこちらも是非!




