三十五章 四季祭「春」 其の拾捌
サクラコ裏話
桜子の神秘が特殊なモノになっているには理由がある。実は、母親が彼女の幻想換装をいじったららで元々一つであった武器を五つに分けた結果、今の特殊な体質のような形になってしまっている。
桜子が放った魔剣気という言葉。
それに呼応してから浮遊剣の一本が地面に転がった。
抜け殻の様になった浮遊剣と打って変わって桜子の神秘が先程よりも大きく跳ね上がる。剣に力と神秘を込め、桜子はアランの攻撃と背後からの弾丸を回転しながら斬り裂いた。
桜子の神秘、それは徐々に跳ね上がり、最終的には随一の量を誇る様になる特殊な物である。だが、同時に、本番までに時間がかかり、ここまでの戦闘で桜子はボロボロになりながらもなんとか勝利を掴むということが多かった。
そして、彼女はもう一つ、自身の特性に気づいていた。それは浮遊剣を操作している時と自身は握る一本の剣を使っている時とでは神秘の総量が全く違うという事。
伊織との戦闘で得た、神秘の感覚。
崩との戦闘で得た、神秘の操作。
全ての戦いを通じた経験により、生み出される新たな境地、それが魔剣気である。
浮遊剣の操作権を消失させる事で、費やしていた神秘を自身に持って来る。そうすることで浮遊剣に費やしていた以上の神秘を身に宿すこと。
そして、桜子の攻撃力と防御力、自身が戦闘に費やす全ての能力を跳ね上げた。
神秘を纏った桜子の一撃は、崩との戦闘で得た、人体の内部を傷つけるものとなっており、それがアランへと放たれる。
ライフルを持って防ぐも、そこから桜子は神秘を流し込みアランを傷つけた。アランは痛みは感じず、神秘による攻撃に何の感情も湧かなかった。
他人の神秘が自身に流れる感覚。それはアランに取って他人との繋がりを感じる瞬間であり、命を感じ取れる瞬間でもあった。
しかし、桜子から流れる神秘は違った。
どこか懐かしい様で、悍ましい。
誰かに似ているがそれを記憶が蓋をし、思い出せない。
ハッキリと言えることは気持ちが悪かった。
これまでの戦いで成長している桜子、糧にしている桜子、自分よりも戦いで繋がりを、絆をハッキリと感じさせ、自分にぶつける桜子。
(嫌いだ、嫌いだ嫌いだ嫌いだ!)
大嫌い。
初めて、明確にする自身の感情。
揺らぎ、激り、ライフルの照準を定める。
至近距離で、二機のドローンで、桜子の頭を、足を、胸を目掛けて、引き金を引いた。
再び放たれる三つの凶弾に、桜子もまた、アランを、殺意を向ける青年を圧倒するために口を開く。
「魔剣気、3rd!」
二本目の浮遊剣が落ちた代わりに桜子の神秘は上昇する。
二本目の神秘が譲渡され、桜子の手に握る剣に力を込めた。
(なっ?! 剣の刃渡を神秘で伸ばした?!)
ドローンとアラン、両方を一撃で斬れる様に、桜子は剣の刃を伸ばし、それを横に力一杯振るった。
洗練された神秘の刃に弾丸とドローン、そして、アラン本人も斬り裂かれる。
痛みは無いが、血は流れた。
アランは自身を人と、他人と変わりのない人間であると認識出来るが故に、傷つけられることを好んだ。
だが、桜子の一撃は違う。自分に、対しての感情は、レイズ以上の嫌悪と怒り。結衣とレイズ、彼ら二人を傷つけられたことに対しての隠すつもりがない激情。
地面に手をつき、四つん這いになっているアランを桜子は見下ろしながら声を上げた。
「立てよ、アラン。お前に、叩き込んでやる、本当の痛みってヤツを!」
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