三十三章 四季祭「春」 其の拾陸
サクラコ裏話
神秘は開示するとその秘匿性が薄れるために更なる秘匿を求める。故に、神秘拡張や、神秘応用がしやすくなる。ただし、能力を明かすため、対策しやすくなったり、相手の解釈次第では完封されてしまう場合がある。
会場に多くの人が入り込む。
四季祭「春」三日目決勝戦。
戦士達の最後の試合を見守ろうとこれまで以上に集まっていた。
そんな彼らを見ながら、時間になった事を確認するとクロノは大声を上げた。
「観客の皆様!!!! 遂に、遂に、この日がやって来ました!!!! 四季祭「春」決勝戦!!!!!!!! 激動の予選、そして、激闘の決勝リーグ! 全て、全て、素晴らしいモノでした! しかし、祭りも大詰め! 新緑芽吹く「春」の決勝を飾るのはこいつらだ!!!! 神秘の到達点、神秘応用を見せつけ、アマルスクールの学生二人をのした新入生きってのアマルスクールキラー! 又しても、彼の手にアマルスクールは落ちるのか!? アラン・カロ選手!!!!」
自身の名が呼ばれるとアランは入場口をくぐり、姿を現した。アランが出てくると同時に観客達から多くの声援が浴びせられるも彼は全く目を向けず、もう片方の入場口を睨みつける。
「その強さ、天真爛漫! 私に、いや、私達に最高の試合を魅せてくれた! 逆境の中で、進化を続ける剣士!!!! 秤桜子選手!!!!」
入場口に踏み込むと桜子は笑った。相手を嘲笑するためでなく、これからの戦いに向けた興奮と武者震いにより、笑顔を浮かべ、睨みつけるアランの前に堂々と立った。
「演者は出揃いました!!!! 最後の試合、最高の盛り上がり見せて下さい!!!! それでは! 試合開始!!!!」
***
「起動」
「起動!」
互いに武器を握ると桜子は一気にアランとの距離を詰めた。
四本の浮遊剣を用いたミドルレンジのスタイルでは無く、クロスレンジでの戦闘。桜子らしからぬ、戦い方であるものの、これまでの蓄積と経験を存分に活かそうと手に握る剣を振るう。
そんな攻撃をアランは自ら受けた。
何の防御の構えを取らず、ただ、その一撃を受けると同時に口を開く。
「神秘解放、両性有神」
頭上に輪っかと変化した武器。それらを用いて、桜子目掛けて引き金を引いた。
一撃喰らえば、自身の四肢の制御を奪われる弾丸を浮遊剣を用いて弾くと桜子は更に間合いを詰め、アランの顔目掛けて拳を振るった。
急に拳が頬に入り、アランは抵抗出来ずに吹き飛ぶ。
剣士であった桜子から放たれた拳に会場は騒然とし、殴られたアランも少しばかり、驚いていた。
「剣士なのに拳で攻撃、面白いね」
アランは殴られた頬を触りながら笑顔を浮かべて桜子に喋りかけた。
「ありがと、でも、私、あなたのこと嫌いだから、あまり話くないの」
「そっか、君は前から感情が分かり易かったけど、今はもっと分かりやすい」
その一言を後に、アラン目掛けて浮遊剣を放つとアランはそれを楽しそうに避けた。それと同時に、いつの間にか飛んでいた三つのドローンが桜子を捉えており、それらから彼女へとプレゼントとして弾丸が放たれる。
「両性有神・狂詩曲」
桜子は自分に向けられた凶弾を避けることなく、自身の体に回り始めた神秘を用いて防いだ。
桜子は自身の神秘が、戦闘を経過により、回り始めることを理解た。そして、ここまでの戦闘で、自身が持つ神秘の流し方と使い方、それら全てを踏まえ、桜子はその特殊な神秘の扱いを完全にマスターしていた。
今現在、彼女の体には神秘が流れており、それを鎧として、アランの攻撃を受けたため、彼の能力が及ばなくなっている。
(へえ、昨日よりも明らかに神秘が洗礼されてる。そっか、そっか、なら、僕も本気でやろう。僕も、君のことが嫌いかも知れない、桜子)
アランは桜子に明確に嫌いとした。
感情を潜めた自身がハッキリと拒否する感覚。そして、その感情の昂りをアランは神秘で表現しようと叫んだ。
「神秘拡張、両性有神饗宴」
感想、レビューいつもありがとうございます!
嬉しくて狂喜乱舞です!
続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします!
評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタップすればできます!




