幕間 四季彩「春」 交錯
サクラコ裏話。
結衣の趣味は読書。
読書以外にやることがなかったからそれが定着しただけだぞ。
「な?!いったろ!ツクヨ! 」
そう言うと刃はニコニコしながらツクヨの肩を叩くと彼女はため息を吐き、それでも、その事実を認めた。
「そうだね、あれは本当にモノが違うね。刃くんがとっておきというだけある。だけど、私のところもここからが本番だよ」
「お、そうだな!同立二位の奴らもお前のとこだし。まぁ、ぶっちゃけ、うちは崩以外はダメだったなー。俺が鍛えたって言うのに点でダメだったかー。仕方なし仕方なし。それはそうとなぁ、ツクヨー。今年はお前のとこの一年、龍仙学院に送れよー。去年はマイケル送ったろー。あいつは遊び好きだからな、俺んとこから離れてったけど、俺は違うぜ。ちゃんと、一から十まで戦いを叩き込む。その方がお前の目的のためにもなるだろ? 」
刃の言葉に少しばかりツクヨの雰囲気が変わるも、その変化すらも彼にとっては面白いと思えることであり、ニヤニヤと笑みをこぼしている。
目的。刃に言われた言葉にツクヨはどきりとした。
それは誰にも言えない。
誰かに言えるはずもなくツクヨが背負ったモノであり、口にすれば誰からも嫌われると知っていた。それでも、彼女はそれを背負うことを選び、それを見透かされたことにも思うことはあるがそれを軽くあしらった。
「何のことかなー?刃くん、そうやって茶化すのはあまり良くないよ〜。それはそうと刃くんの提案は考えさせてもらうよ」
「おお!マジ〜?じゃあ、今回の大会終わった後にまた話そうぜ!今回の話ちゃんと覚えておけよー」
楽しそうに会話する間には思惑が交錯しており、会話を知るものは彼ら二人だけであった。
***
ソドラ学園風紀委員会議室にて銀色の髪をくるくると回しながら機器から映された映像を眺めることなく、本を読みながら音声だけを聴いていた。
「多くの選手が参加していながら結果は八人の選りすぐりの精鋭だけが残されました!しかし、インタビューに応えてくれたのは一人だけ!それではその一人に色々聞いてみましょう!七位通過の亜号奈々選手!今回の予選いかがでしたか? 」
マイクを目の前に出された亜号と呼ばれたピンク色の髪をツインテールに結んだ少女はムスッとした表情で答えた。
「どうかで言うと最悪ね。私が目立ってなかったもん」
「え、えーと、つまり、どう言うことですか?」
「だーかーらー!私が目立ってなかったの!みんな最初の六人にしか注目してないし!カメラも私を写してない!こんなの認めない!次の予選、ちゃんと映さないとどうなっちゃうか覚悟しておいてね」
インタビュアーはそれを聞いてあははと言う声をあげるもそれが聞こえた途端、機器の電源を落とした。
(あの子達ちゃんと予選突破したのね。まぁ、見なくてもわかってるけど。次の本戦、どうなるかな)
そんなことを考えながらぼんやりと本のページを一枚一枚捲っていた。
手に取っている本のタイトルは「ヴァリス」。
フィリップ・K・ディック著のSF作品であり、ソドラ学園風紀委員長マガツ・シューヴァルは普段、あり得ることない学園の静けさを一人で読書と共に楽しんでいた。
***
「亜号、アストラが予選突破したのね」
BULLET school四季祭「春」臨時対策本部管理室にて如月百兎とレイがその光景を眺めており、彼女がポツリと呟いた。
「そうだね、何よりちゃんと決勝リーグに進めてよかった」
「そう?彼らは今の一年の中じゃ頭ひとつ飛び抜けてると思ってたけどそんなに心配だった? 」
「心配というよりも他が強いと言うか。始業式の次の日に問題を起こした子達がいてね。その子達相当やる様に見えたけど、実際、そうだった」
百兎はそう言うとカップの中にあった黒い液体を一気に飲み干すとレイの近くにあった中身がないカップを取り新しく注ぎに行こうとした。
「あ、まって、百兎。私が行くから良いわよ」
「良いんだよ、管理局の仕事を任せてるからね。これくらいはやらせて」
百兎はレイのカップを強引に取るとそさくさと部屋から出て、カップに再び同じ黒い液体を注ぎ込んだ。そして、彼は管理室に戻り、湯気から鼻を抜けるスッとした香りが漂うとレイの横に置いた。
「ありがと」
「どういたしまして」
そうして、二人は少しずつ淹れたての珈琲を飲むと大会の熱狂とは違い、ここでも久々と言って良い程のゆったりとした時間が流れていた。
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