表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/70

二十章 四季祭「春」 其の参

サクラコ裏話

(ホウ)の趣味はお茶を汲むこと。

茶葉には拘っているよ。


 会場の姿が見えて来ると先頭を走る桜子(さくらこ)達六人はラストスパートをかけようとしていた。


 神秘の解放をした面々も着々と準備をしており、最後の一直線になった瞬間、全員同時に足に思いっきり力を入れる。


 最初に動いたのは桜子(さくらこ)(ホウ)であった。

 自らの運動能力の限界を引き出し、四人との距離一気に差をつけた。


 その背後をアランは走りながらもスコープ越しで見て、どちらを貫こうか決めると引き金を引く。


 狙われたのは桜子(さくらこ)

 無防備な背中に放たれる弾丸は正確に、無慈悲に、桜子(さくらこ)を貫くはずだった。


 弾丸が桜子(さくらこ)を貫く直前、もう一つの弾丸がぶつかり軌道をズラした。


 狩人は息を潜め、友を狙う凶弾を許さない。

 旧巣(ふるす)結衣(ゆい)はアランが引き金を引いた瞬間、その銃身の方向で桜子(さくらこ)を狙っているのに気付き、彼女もまた引き金を引いていた。


 結衣(ゆい)が握る幻想換装(ファントム・ユニット)であるライフルは速度を重視したタイプであり、アランが持つモノは一撃で相手を屠るためのものであった。


 故に、引き金を引くのが遅れたとしても、速度は間に合う。しかし、それは言葉にするのは簡単であるものの実際に行うとしたら限りなく不可能に近いものである。


 高速で移動する弾丸をもう一つの弾丸で撃ち落とす。

 それを、そんな神がかった行動を旧巣結衣(ふるすゆい)はやってのけた。


 本来の結衣(ゆい)であれば、ギリギリのことや、自身が責任を負ってしまうことを進んでやるような人間ではない。


 今の状況ですら、気づいたら動いていたと言うものであり、終わった瞬間に緊張の糸が切れ、思考が纏まらなくなっていた。しかし、そんな彼女が誰かを、いや、桜子(さくらこ)という友人を救うために一歩踏み出したことは大きな成長である。


(それ、落とせるんだ。この前もそうだけどこの子、やる時はやるっていう確固たる覚悟を持ってる。このレースはもう捨てよう。別に、この範囲なら予選突破できるしね)


 銃弾を落とされたことに驚いたアランは考えながら少し速度を落とすと先頭から後ろを走り始めた。


 そして、桜子(さくらこ)もまた、そのことに気づいており、自分を助けてくたことを心の中で感謝し、(ホウ)とのデッドレースにギアを入れる。


 そんな中、残り100メートルを切った瞬間、レイズが仕掛けた。


夜乃神(ニュクス)重力加速(グラビティアクセル)


 自らに前方へと向かう重力を課すとそれは彼の体を前に、前にと押し上げる。レイズは一瞬にして桜子(さくらこ)(ホウ)の横に並び、彼らを追い抜こうと地面を蹴った。


 三人が並び、そして、レイズが一歩二歩とリードし始め、桜子(さくらこ)(ホウ)は離されそうになるも懸命に食らいつく。


 結衣(ゆい)は先程の行動により、集中力が切れたのか走り出そうとはせず、先頭グループに着いていくように走っており、伊織(いおり)はそれらの様子を見ながら冷静に自らの位置を確認していた。


(一番になりてえってとこだが、ここはあいつらに譲るか。これ以上、神秘(わざ)を見せたら俺が不利になるからな。ここは次の勝利への引き、貯めの期間だ。落ち着いて行く)


 伊織(いおり)の思惑とは裏腹に三人の速度はドンドン上がっており、誰が勝ってもおかしくない程、接戦していた。


 残り50メートル、40メートル、30メートル。

 ゴール直前にして、およそ一秒程の間。

 (ホウ)が足を止める。


 桜子(さくらこ)とレイズはそれに気づき、少しばかり動揺するもののそれよりもゴールすることだけを考え、最後の一歩を踏み出そうとした。


歩複絶爽(ホフクゼッソウ)


 しかし、(ホウ)の一言と同時に、決着を迎えた。


 巨大な音と共に地面が抉れ、ゴールテープを切る手前の桜子(さくらこ)とレイズの体が宙に浮いた。そして、浮くと同時にゴールするものの一着ではなく、彼らの前に一人の男が立っていた。


「ゴ、ゴ、ゴォーーール!?い、一着は、() (ホウ)選手だ!!!!なんだ!?なんなんだ?!さっきのは!!!!桜子(さくらこ)選手とレイズ選手がゴールに後一歩のところから急に止まった瞬間に一瞬で(ホウ)選手がテープを切っていた!?何度見ても瞬間移動にしか見えない?!これが(ホウ)選手の神秘なのか?! 」


 クロノの実況は会場はざわつかせ、(ホウ)が一着になったことが事実に歓声が上がる。そんな中、桜子(さくらこ)とレイズは地面にうつ向けになりながらゴールテープを切っていた。


「なんなの〜、さっきのは〜」


 桜子(さくらこ)はうつ伏せの籠った声で呟くもレイズはそれに反応することなく立ち上がった。


「レイズ〜、立たせて〜」


 レイズはバタバタと手足を動かし、寝っ転がる桜子(さくらこ)をため息を吐きながらも立たせると目の前に立っていた(ホウ)に喋りかけた。


「さっきのは何だ? 」


 名前も知らない男に喋りかけられた(ホウ)はそんなことを気にすることなく問いかけに答えた。


「体の力を一箇所に集中させて蹴り上げただけだ。俺は、お前達みたく神秘で身体を強化出来ないからな。小細工ありきで申し訳ない」


「ふん、そんなのは小細工なんて言わない。お前自身が見出した技だ。俺の神秘はそれに負けた。結果が全てであり、事実だ。俺はレイズ・ヴァリティタス。次、会う時は試合の時だ、覚えておけ」


 レイズはそう言うと(ホウ)へ背を向けるとその場を後にした。そんな光景を桜子(さくらこ)はニマニマしながら眺めると(ホウ)に手を振り、彼女もレイズについて行き、姿を消した。


 観客の歓声と熱狂が(ホウ)と言う勝者へと向けられ、自分が初めてこの場で認められたことにほんの少しだけ喜ぶもすぐに切り替え、会場に押しかける取材班を無視して彼が師事する師匠の下へと足を運んだ。


 四季祭「春」予選 障害物マラソン結果発表


 一位 () (ホウ) 龍仙学院所属

 二位 (はかり)桜子(さくらこ) アマルスクール所属

    レイズ・ヴァリティタス アマルスクール所属 同立位

 四位 望月伊織(もちづきいおり) ソドラ学園所属

 五位 旧巣結衣(ふるすゆい) アマルスクール所属

 六位 アラン・カロ ソドラ学園所属

 七位 亜号(あごう)奈々(なな) BULLET school所属

 八位 アストラ・ディオナ BULLET school所属


 以上、八名による個人戦のトーナメン方式で優勝者を決める。

感想、レビューいつもありがとうございます!

嬉しくて狂喜乱舞です!

続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします!

評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタップすればできます!

自作の続編でもあるのでもしよろしければこちらも是非!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ