十八章 四季祭「春」 其の壱
サクラコ裏話。
桜子の髪が毛先だけが桜色なのは元々全部桜色だから。黒い部分は母親の真似をして黒く染めた。
多くの学生が席に座り、その祭の開催を待った。
ザワザワと言う音が場の賑わいを現しており、まだかまだかと誰かが言うわけではないがその空気がそれを待ち侘びていると言う事だけは確かであった。
熱気に当てられた戦士達もまた、緊張と興奮が抑えられず、様々な思いを持ってその場に立っていた。
当てられた熱気。
冷めぬ熱狂。
それらに応える様、一人の男が壇上に登壇した。
エデン学園生徒会兼学園都市エデン総合生徒会長ツカサ・ヴォーダイン。
彼が四季祭「春」の大会会場現れ、そして、大きな声で宣言する。
「待たせたね、諸君。今年は、いつもより早い開幕だが、この短い期間で最高の準備をするのもそれもまた学生の務めであると僕は考える。また、今年は例年よりも参加者が多い。それほど、今回の大会が期待されていると考える。まぁ、前置きはここまでにして、今宵は春!四季の中でもっとも新芽が芽吹き、そして、新たな時代の兆しを見せる新入生達が名乗りを上げる、目覚めの季節!始めようか!四季祭「春」を!!!!これより、ツカサ・ヴォーダインが開幕を宣言する!大いに示してくれ、新入生諸君!!!! 」
ツカサの言葉が終わると同時に、その背後から火花が散り、観客席から大きな声が響き渡った。
そんな彼らを競技場側から眺める桜子は緊張からか、それとも、初めて大勢の人前に姿を晒したことから来る何とも言えない気持ちからか、ぎこちない笑みをこぼした。
それを見たレイズが桜子の肩を叩いた。
「お前でも緊張するんだな。だが、そんなんじゃ、今後やってけないぞ」
「は、はぁ?!緊張なんてしてないし! 」
「なら良かった。それで本領を発揮出来ずに予選敗退なんて不様な姿を見たくなかったからな」
「そんなことを言われなくてもしないもん! 」
しかし、レイズの言葉で、普段の自分らしさを取り戻した桜子は壇上に立っていた人物が再び口を開く。
「それじゃあ、新入生達。これから予選を開始する。予選の内容はこれだ! 」
ツカサの一言で会場の席側についていた画面に光が灯り、とある文字が映し出された。
マラソン。
「と言うわけで君達にはこの会場をスタートラインに学園都市を一周してもらう。幻想換装の使用も神秘の使用も何でもあり。蹴落とし、登り上がってきて欲しい。それと今年は伽藍重工付属学校が大会の準備に携わっているから、様々な罠や、最新鋭の兵器が君達の道を阻む。それらは今世界が持つ最新技術が用いられている故に、慢心するな、そして、驕るな。全力をもって走り抜け。それじゃあ、まぁ、スタート! 」
スタート。
そう聞こえた。
唐突にスタートなどと言われそれが本当に始まったのかわからないがその場にいた数万という生徒達が茫然とした。
そして、一番その唐突な開始の一言にフリーズしていたのはその大会に参加している一年達であった。
そんな中、スタートという声が聞こえた瞬間、走り出していた存在がいた。
誰もが呆気に取られる中、純粋にその言葉を聞き取り、準備をしていた戦士が一人、駆けた。
それは桜子。
その背後を、気付いたレイズや結衣が走って追いかけており、徐々にそれが始まったと言う事実を受け入れた一年達が一番前を走る彼女達を追う。
ツカサはそれを見てニコニコしていると背後から青髪の長身の女が彼の頭に目掛けて拳骨を振り下ろした。
ゴツんという音がマイクに入り、ツカサはその一撃で脳を震わせられたのかそのまま倒れ込んでしまう。
会場がまたもや唖然としている最中、拳骨をした本人がツカサに代わりマイクから観客に声を上げた。
「大変失礼しました。我々の学園の生徒会長であるツカサ・ヴォーダインがご迷惑をおかけします。これは無視してゆっくりと四季祭をお楽しみください」
***
「「「「「「「「「起動!!!!!!!!」」」」」」」」
多くの一年生が同時に叫んだ。
そんなことをお構い無しにと桜子は誰よりも速く駆け、自分に襲いかかる兵器や、罠を全て振り払う。
自動照準の銃を携えたドローンや、犬型兵器などの様々な障壁が立つも四つの浮遊剣がそれらの急所を一瞬にして貫き、破壊した。
後ろではそれらに苦戦する者もいたが一切気にすることなく突き進む者もいた。
そして、桜子が一番に駆けていた横にある男が並んだ。
「やっほー!はじめまして!私、秤 桜子!よろしくね! 」
桜子は急に自己紹介をすると青年は相手からされた自己紹介に答えなければならないと感じ、彼もまた同じく自らを名乗った。
「龍仙学院、李 崩。よろしく頼む」
「うん!よろしくね! 」
崩と桜子は並んで走ると互いに降りかかる脅威の一切に目も向けずに払い除ける。
「ねえ、ねえ、李 崩ってどう呼べばいいの? 」
「崩でいい」
「了解!じゃあ、崩って呼ばせてもらうね! 」
話しながらも兵器を貫き壊し、蹂躙すると後ろを走る者達も彼らに負けじと走る速度を上げながら自らの得物を振るった。
「よお!レイズ!この前ぶりだな! 」
伊織が金髪の髪を靡かせながら知り合いを見つけて嬉しそうに喋りかけた。
レイズは無視すると彼女は諦めることなく声をかけ続ける。
桜子の背中を追う最中、話しかけるのにイライラし始め、その苛つきが頂点に達した時、レイズはようやく彼女の一方通行に応えた。
「やかましいな!なんなんだ! 」
自分の言葉に答えたのが嬉しかったのか伊織は調子に乗って口を開く。
「おうおう!ようやく喋ったな!この!いや、なんか知り合い探して一緒に走ろうかと思ってな。スタートダッシュ失敗してだいぶ遅れたんだがな全力でかけたら一番早い奴らの次くらいに来れた」
「ふん、羨ましい身体能力なこった」
「だろ〜、俺の取り柄の一つだ。というよりも桜子速いな!あいつの横に並んでるヤツもすげえ!でも、あいつら妨害とかしないのか? 」
「桜子がそんなことを考えるわけないだろ。あいつのことだから自己紹介して、横に並んでるやつと会話してるくらいだ」
「そりゃ、確かにそうだな!俺も妨害OKって言われてけどお前に対してする気もないしな! 」
「俺がするかも知れんぞ? 」
「しねえよ、してもそん時は叩き切ってやる」
互いに見合い、目線で火花を散らしながら駆ける違う学園の彼らの後ろを誰に気づかれることなく、影を潜め結衣は一人寂しく走っていた。
(ううう、みんな、本気すぎて怖い。レイズくん、多分、私に気付いてないし、ううう、みんなに潰されない様にひっそりと駆けよう)
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自作の続編でもあるのでもしよろしければこちらも是非!




