十七章 前夜祭
サクラコ裏話。
四季祭は年に四回。
春、夏、秋、冬で別れている。
学園都市は様々な催しと屋台が開かれており、桜子は目を輝かしながら走り回った。
「すっっっっごいいいいい!!!!!!!!何これ!!!!!!!! 」
そう叫ぶと屋台に向かい消えていった。
レイズと結衣はそれを眺めて、この光景この前も見たなと思いながら、辺りを見渡した。
「お、レイズじゃん、あんたも祭りなんてくるのね」
レイズ達の背後から聞き覚えのある声がし、後ろを振り向くとそこには生徒会役員の先輩達が全員揃っていた。
「なんだ、イチカ先輩か」
「なんだって何よ!?あんた本当に態度悪いわよ?! 」
レイズの一言にイチカはプンスカと怒りながら声を上げるもそこにツクヨが割って入った。
「まぁ、まぁ〜、イチカちゃん、今日は無礼講と行こうよ〜」
「そうだぜ〜、イチカちゃ〜ん、いっつも怒ってると可愛い顔が台無、ぶべぇ」
マイケルの言葉は終える前にイチカの見事なアッパーが顎に入る。彼は倒れ込むとヒビキはやれやれとため息を吐き、セラは気不味そうに笑っていた。
ツクヨはそんな彼らを眺めながら嬉しそうに笑っているとふと気が付き、レイズと結衣に質問を投げかけた。
「あれ?でも、桜子ちゃんは? 」
その問いに彼らは首を傾げ、アッとした表情で同時に口を開いた。
「どこ行ったんだ? 」「どこ行ったんだっけ? 」
***
屋台で買った食べ物を手にいっぱい大事そうに抱き抱えながら、桜子は手に握るりんご飴を頬張った。
「あっ、というより、ここどこ? 」
そう呟き、今自分がどの様な状況なのかようやく気づいた。
秤 桜子、15歳にして、初めての迷子である。
辺りをキョロキョロ見渡すも聳え立つビル群に目が回り、何処か座れる様な場所があるかを探した。
一箇所に椅子とテーブルがあり、急いでそこに座ると対面にあった椅子に同時に座り込んでくる人がいた。
同時に対面に来た相手を見合い、同時に声を上げる。
「あ!伊織?! 」「あ?桜子!? 」
そして、それと同時に武器を構えようと起動詠唱を口ずさもうとするも、一瞬、冷静になった。この場で争うことが互いが所属する学園に迷惑をかけることを理解し、それを踏まえて桜子は伊織に喋りかけた。
「こんなところで何してるの? 」
「そっちこそ何してんだよ」
質問を質問で返されるも桜子は嫌な顔を一つせず素直に応えた。
「私はお祭りがあるから楽しんでただけだよ」
「ほーう、そりゃいいな。それはそうといつもの二人は何処なんだよ。お前が一人ってことないし、もしかして迷子か? 」
「迷子じゃないもん!ちょっと一人ではしゃいでただけでみんなとはぐれたとかじゃなくて、そんな事言って伊織はどうなの?!あなただって一人じゃない」
「俺は迷子なんかじゃない。最初はアランと一緒にいたんだが、何も言わずに単独行動になっただけだ」
「それ迷子じゃん」
「迷子じゃねえよ、お前が迷子だろ」
「迷子じゃないもん、伊織の方が迷子じゃん」
「何だよ! 」「何よ! 」
互いに睨み合い、いがみ合う。
しかし、少しして二人は同時にため息を吐くと次は伊織から喋りかける。
「なぁ、桜子、その、なんだ。この前はごめんな」
急な謝罪に驚くも、桜子は頭を下げる伊織を見て、それに対して口を開いた。
「気にしてないっての嘘になるけど、でも、私は謝罪を受け入れるよ。いや、上から目線みたくなっちゃうなー、これ。うーん、どう言えばいいと思う? 」
「おいおい、謝罪した俺にそれを聞くのか?だが、それもお前の良さって事だな。はぁ、でも、よかった、お前が受け入れてくれたなら嬉しいよ」
桜子は伊織が見せた笑顔に少しばかりドキリとするもそんな邪な考えを振り切ろうと再び声を上げた。
「なんか、この前会ったときよりも丸くなった?あ、体型じゃないよ!性格の方が」
「ははは!お前、失礼だな!だけど、まぁ、そうだな。前まではこの学園で頂点を目指すとしか思っていなかった。でも、俺はこの学園の上澄を見た。今の俺じゃ勝てない怪物、圧倒的なまでの力の極地。それを見たら俺の目標は矮小なもんだって思ったら少しは変わるもんさ」
「私も、四季祭前にみっちり特訓させてもらったけど、みんな強くて、みんなすごかった!お母さん以外であんなに強い人は初めて見るくらいに色んな技術と色んな能力、全部新鮮で、魅力的で、言葉で言い表せないくらい! 」
二人は会話に花を咲かせ、先日の争いが嘘かの様に笑いながら様々なことを話した。どれくらい経ったのか分からないがそれでも今日までの学園生活を話し合い、笑い合った。
前夜祭も終わりに近づき、人が徐々に居なくなると辺りが見やすくなったのか桜子を見つけたアマルスクールの役員達が声を上げた。
「桜子!探したぞ! 」
遠くからではあるものの声が聞こえると桜子は嬉しそうに立ち上がると伊織へ挨拶をした。
「またね!伊織!明日の四季祭で! 」
「ああ、またな!桜子!明日は好敵手として会おう! 」
そう互いに挨拶が済むと桜子の姿が見えなくなった。そして、伊織の背後からも声が聞こえた。
「伊織!どこだ! 」
(アランの声じゃなくて、ヒナタ先輩の声か。あいつやっぱり薄情だな)
そんなことを考えるとすぐに立ち上がり、ヒナタがいる方向へと歩き出した。
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