一章 学園都市エデン 入学式
学園都市エデンで繰り広げられるSF×神秘の真説伝奇譚!
よろしくお願いします!
イラストは七狗様(@779nanaku)様より頂きました!ありがとうございます!
春の匂いがした。
何が新しいことが始まる予感。
そんな匂いが仄かに香る。
黒髪の先端を桜色に染めた少女は初めて身に纏う学生服を偉く気に入っており、そのスカートをヒラヒラと回しながら歩き回っていた。
楽しそうにそれは楽しそうに。
クルクルと回りながら少女は向かうべき場所へと足を運んだ。
アマルスクール。
そう刻まれた校門の前に立つと彼女は大きな声を上げた。
「友達いっぱい出来るかな!」
***
学園都市エデン。
学生が自らの運命と未来を決める事を理想と掲げ、どんな生徒でも試験に合格すれば無償で入ることが出来る、学生のために作られた楽園の名を冠する学園。
2090年に創立され、今年で210年と言う長い歴史を持っており、学生達は六つの学園へと自らの意思で進んでいく。
その一角、アマルスクール。
最も新しく出来た学校で入学への条件が緩く、多くの生徒がそこに身を寄せていた。
校内の体育館に多くの生徒達がおり、そんな彼らが見守る中、舞台の上にとある少女とその臣下である四人の男女が登壇する。
少女の身長は150㎝ほどで左目が瑠璃色、右目が緋色になっており、薄紫に染まっていた髪が腰ほどまでに伸びていた。
少女は舞台上で生徒達を見渡すとにへらと笑い、喋りかけた。
「やぁ、諸君、こんにちは、私は斗南ツクヨだよ。そんじゃ、まぁ、よろしくね〜」
短くマイクを使い、伝えるとすぐにその場から離れようとする。しかし、メガネをかけ、黒髪で短く整えていた少女が舞台上から勝手に帰ろうとするツクヨの腕を引き摺りながら教壇の下に戻すと声を荒げた。
「ツクヨ先輩! 何やってんですか!? ちゃんと挨拶はするってあれほど自分で言ったのに?!」
「まぁ、まぁ、セラちゃんも忙しそうだから短めにしてもいいじゃないか〜」
「そうじゃなくて!全く!ほら、早くしてください、時間押してるんで」
再び壇上に上げられたツクヨは面倒臭そうに同じ場所に立つと先ほどよりものんびりとゆっくりとだが、少しだけ楽しそうに口を開いた。
「そんじゃ、まぁ、入学生諸君、今から試験を始めるよ〜。これを超えてからが本当の意味での入学だ」
学園都市エデンの入学式、それは学生の理想を追い求める為に行われる儀式であり、最初の試練。
学生達はその場で何が行われるのか理解し、自らの体に眠る因果を引き出すために全員同時に叫んだ。
「「「「「起動!!!!」」」」
***
彼らの叫び声に呼応して、体の中に眠る因果が武器の形となり、それらを手に取り、一斉に動き出す。
その名を幻想換装。
現代における最も強く、最も使われる兵器。
斧や、剣、銃や、弓、杖や、棍や、鎌。
各々が自分の武器を用いて、それを振るう。
だが、その中で一際目立つ武器を持っていた者がいた。
それは剣と呼ぶにはあまりにも特殊な形状であった。
浮遊する四本の剣。
それらの真ん中に一振りの剣を握り、少女はニコニコと笑っている。
周りが動く中、彼女だけ一歩も動くことなくただ忽然と佇んでいた。
そんな彼女を壇上にて斗南ツクヨはニコニコしながら笑って眺めている。
「ん?気になる人でもいるの?ツクヨ先輩」
舞台の上にいた銀髪を短く結び、そこそこ背丈のある青年が嬉しそうにしているツクヨに問いかけた。
「お、ヒビキくん〜、うーん〜、そうだねぇ〜。ある人から直々に承った生徒が一人いてね〜。期待してんだけど今のところ全く動かないんだな、これが〜」
「へえ、先輩が期待するほどの逸材なんていないから。自分も注目する」
「まぁ、そうだね。ただ、私のご先祖の知り合い? の娘らしいから」
「え? 本当? それ本当にすごい人じゃ?」
「だと思ってたけど、期待違いかな?」
未だに動かぬ少女に対して、ツクヨの興味が薄くなっていた。
顔も見せず、先祖の知り合いとだけ伝えられ、先祖との契約書の様なモノが送られてくるだけでそれ以外が全く不明の未知数。
そんな彼女に対しての興味は薄れていき、彼女ではない、生徒へと目線を逸らそうとする。
視線の先には水色の髪の男子生徒が既に多くのライバルを倒し切っており、倒された彼らの山の上に座ってつまらなそうに辺りを見ていた。
しかし、ツクヨの視線が逸らされた間に、彼女は動いていた。
ツクヨの視線をハッキリと理解しており、自分へと向けられた期待を本能で感じると少女は体に眠るバネを全力で使う。
四本の浮遊していた剣は攻撃に転じ、辺りにいた生徒四人にぶつけ、彼らを簡単に吹き飛ばす。新入生でありながら、彼らは武器の使い方になれており、この学園で理想への一歩を踏み込むために自らの因果への理解と使い方に多くの時間を費やしていた。
努力という名の素材を用いて聳え立たせた壁を四つの黒い剣が容赦なく蹂躙する。
斧にぶつかった途端、青年の体が吹き飛ばされ、剣にぶつかった途端、少女の体が宙に浮いていた。
それが他の二人にも同じように行われ、彼女は一瞬で入学生達の注目を集める。
再び自分に向けられた視線に対して、熱いモノを感じると少女は楽しそうに笑った。
入学式と見せかけた自己主張。
実力を見せ合うことで入学生達をふるい落とす一種の儀式。
アマルスクールの入学の条件。
それはその場の生徒を一人以上倒し、生徒会長の号令まで立っていること。
試験内容は知らされてはいないが皆勝手に知っており、それまでに全力で牙を研ぎ続けた。
そんな中、桜色の髪の生徒は一人どころか、四人を一瞬で吹き飛ばし、自分の価値を存分に見せつけ、残りの時間は自分で手を出さずとも入学の要件をみたすこととなっていた
少女は四人の生徒をふるい落とし、条件を一瞬にして満たす。
だが、彼女は当然のごとくうなづき、走り出した。
一直線に、舞台上の生徒会長と四人の役員がいる場所へ向かい、刃を向ける。
四本の剣で各役員の足を止め、壇上のツクヨに一気に詰め寄り、首下に剣を突き立てた。
「はじめまして!ツクヨ先輩!私、秤 桜子!」
四人の役員達も既に各々の因果を形にした武器が握られており、剣を防ぐもその予想外の力強さに生徒会長であるツクヨを守ることもできず、桜子の発言を許してしまう。
自分の喉元に剣があるがそれに目線すら向けず、気にすることなく、ツクヨは面白そうに答えた。
「はじめましてだね〜、秤 桜子。あなたの入学を心の底から歓迎するよ」
ゆっくりとした口調でお淑やかさが溢れ出てる彼女と反対に桜子はとても興奮していた。
「えー! すっごい丁寧! やっぱり、お母さん以外の人ってどんなのかわからなかったけど仲良くできそう! よろしく! ツクヨ先輩!それはそうとなんでみんな急に戦い始めたの?」
「学園都市エデンの入学式は各学園への入学のための試練があって、このアマルスクールの入学式は君たちの実力を測るためのものなんだ」
ツクヨは一切微動だにせず、ニコニコしており、それを見た桜子も天真爛漫な笑みを浮かべながら再び言葉を発した。
「そうなんだ! じゃあ、私は合格?」
「ふふ、そうだねえ〜。でも、このタイミングで私の下に来るのは良くなかったかな」
ツクヨの言葉が終わった途端、桜子の首元に四つの凶器が向けられていた。
一人は銃、一人は双剣、一人は刀、一人は鎚。
一人一人が殺意を桜子に向けるもそれすらも彼女にとっては新鮮で体験したことの無いモノであり、ニコニコしていた。
役員達に舞台から降ろされていく桜子を見て、ツクヨは自分が思っていたよりも素晴らしい才能を持っている事を確認出来、嬉しそうに彼女の背中を見つめていた。
そして、学生数が減り、ツクヨは大きな声で宣言する。
「終了! 現在を持って試験を終わるよ〜。さぁ、意識があって残っている諸君! 君達の三年間、有意義で、素晴らしい青春を過ごして欲しい。さて、入学式を閉会とする! みんな、各自、寮にお帰り〜。あ、学園都市内を探索するのもいいよ〜」
そう言うと舞台の横へとツクヨは去っていった。
残された生徒は体育館にいた内の三分の一。
ここから彼らの本当の学生生活が始まる。
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