十四章 アマルスクール 其の拾弐
サクラコ裏話。
自作のトネリコインミラーワールドの続編に当たるので読むと繋がりが見えるかも?
桜子達が入学してから二週間が経った。
勉学に、特訓、そして、部活動。
それら全てが初めてのことである桜子は疲れ知らずの元気を発揮し、誰よりも学園生活を楽しんでいた。
「ねえ、ねえ!桜子ちゃん!放課後都市に行ってお茶しよー」
「ごめん!放課後は来月の四季祭の特訓しなきゃダメなんだ!だから、また今度でいいかな? 」
「もちろん!空いてる時に言ってね! 」
「なぁ、桜子!今度、飯行かね? 」
「うん!いいよ!でも、今度ね! 」
教室内で多くの生徒に話しかけられては答える。
二週間という短い期間であるにも関わらず、桜子は教室の中心の人物になっていた。
放課後、教室での誘いを全て断り、桜子は廊下を駆けた。
すると、レイズと結衣が共に廊下を歩いており、それに気づくと桜子は声を上げた。
「やっほー!結衣!レイズ! 」
「さ、桜子ちゃん、や、やっほー」
「うるさいのに会ったな」
三人は合流すると一緒に生徒会室に向かいながら今日あった出来事や、昨日の特訓のことなどを話した。
そして、生徒会室の前に着くと彼らは一度ドアの前で止まった。
「今日もやるか」
「そうだね」
「い、いつもやるよね」
そう言うと再び同時に口を開いた。
「ヒビキ先輩! 」
「イチカ先輩」
「ヒ、ヒビキ先輩」
言い終わった瞬間、ドアが破壊され一人の男が吹き飛ばされた。
「痛い、俺止めただけなのに」
男は一言残すと気を失ってしまった。一度だけしか見たことないその男が生徒会役員であるのは知ってはいるものの自分たちが予想した人間ではない存在がドアを突き破り現れたことに三人は戸惑った。
生徒会室の中では、薙刀と戦輪を携えたヒビキとイチカが互いの武器をぶつけ合っていた。
「ヒビキィ!あんた!また!私の!プリンを! 」
「ん、美味しかった。あれ、都市で売ってた数量限定プリン? 」
「そうよ!知ってて食べたな!このバカァヒビキィ! 」
イチカは怒りで辺りを構わず、戦輪を投げ付け、蹴り付ける。
ヒビキもまた薙刀を振るい、イチカの攻撃を防いだ。
武器がぶつかる度、火花を散らすとそれを見た桜子達はいつも通りの光景にため息をつき、争いが絶えない生徒会室に入って行った。
***
「初めましてだ、新入生諸君。俺は二年の金 マイケル、気軽にマイケルって呼んでくれよな!あ、役職はえーと、なんだっけ、セラちゃん」
急に話を振られたセラは少しびくりとするとすぐに答えた。
「マイケルさんは議長と庶務ですね」
「あ、それだそれ。てか、俺だけさん付けなのなんで? 」
「あははは、なんででしょうか」
茶髪に無精髭。
背も高く相手に威圧感を与えかねない迫力、尚且つ軽薄さの中にある隠し切れない実力。
三人はそれに当てられ、少し緊張感を露わにするもののそれを感じてか、マイケルは笑顔で声をかけた。
「そう緊張しないでくれよ!俺はみんなと仲良くしたいだけなんだからさー。あ、そうそう、もし強くなりたいなら俺を頼ってくれよ! 」
マイケルの一言が終わったが桜子達からの反応は無く、シンとしていた事に彼は涙していた。
「いつもだけど、俺の扱い酷くない?!ヒビキィ〜、なんでだ〜」
マイケルの一言にヒビキは何を思う事なく応える。
「マイケルだからじゃないかな」
「悔しいけど右に同じく」
「あはは、左に同じくです」
「酷すぎる! 」
***
訓練室でヒビキと桜子は自らの手に握る得物を振るい互いに実力を高め合う。二週間前では防ぐのに精一杯だったヒビキの連撃を今ではしっかりと反応しきり、桜子が攻撃に転じることすらあった。
桜子は三つの浮遊した剣で距離を取った後、構えると呟きながら距離を詰める。
「魔桜ニ刀流、実鷹・二連撃」
二つの剣をヒビキの体目掛けて振るうも彼もまた、神秘解放による神秘の異能を引き出した。
「黄泉津狼・紫電」
薙刀からバチバチと音が鳴り、体に雷が回ると桜子の攻撃を弾き返した。ヒビキは電撃による身体強化を使い、一瞬にして攻防が反転すると先ほどよりも早い速度の突きが放たれ、桜子の体に突き刺さるギリギリのところで防いだ。
「ん、いいね、桜子。昨日よりも反応速度が上がってる」
「そりゃ、どうもです。ヒビキ先輩も昨日よりも速くなってません? 」
二人はそう言い合いながら見合うと武器をしまい、近くにあった水筒に手をつけた。
桜子は冷えた水を飲むと浮遊する剣を動かす事に使っていた脳を冷ました。クールダウンでぼんやりしていると気になることを思い出し、ヒビキに喋りかけた。
「ね、ヒビキ先輩、今日会ったマイケル先輩って何者なの? 」
「ん、マイケル?マイケルか、うーん、あの人、なんて言えばいいんだろう」
ヒビキは考えると少しして再び口を開いた。
「僕、彼に負けてんだよね。四季祭「春」で」
「え、ヒビキ先輩が負けた?! そんなに強いの!? マイケル先輩?! 」
「うん、あ、後、実はマイケルはね、ツクヨ先輩が龍仙学院からヘッドハンティングした生徒なんだ」
それを聞き、桜子は驚愕しながら呟いた。
「何者なの、あの先輩」
その呟きにヒビキは飲み物を飲み、自分が敗北した相手に対しての賞賛と負けたことに対しての悔しさを合わせたような表情を浮かべながら応えた。
「軽薄の根底にある強さ、底を知れない深さ。ある意味、今の二年生の中では一番、各学園の政を執っている人たちに近い存在なんじゃないかな」
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