十一章 アマルスクール 其の玖
BULLET school
学園の中でもトップレベルの実力主義。
入学にも生徒会との実戦があり、そこで生き延びた者だけが入学を許される。
学校運営は生徒会。
生徒会長、百代目ゼロ・ラビットこと、如月百兎
頭上には獣の牙四つが円を描く様に浮かび上がると同時に、得物の姿が形を変えた。
手に握られていた刀がゴリゴリと音を立て、黒い石に覆われるとギザギザの刃が立った武器が姿を表した。
「黒煙神・壊刃」
伊織は両手で黒い刀の柄を持つと同時にそう言いながら得物を振り下ろす。
振り下ろされた刃から、黒い斬撃が放たれるとレイズは鎌でその攻撃を防ごうと構えるもそれを無視するように彼の体には切り傷が生まれ、そこから血が溢れ出た。
レイズの胸部から滴り落ちる血を見て、ようやく、桜子は自らが彼に守られたことを理解するとすぐに自分も武器を握ろうと声を上げる。
「起動!」
武器を構え、レイズの横に立つと伊織を睨みつけた。その視線に、伊織はすぐに気づくと先ほどとは別のベクトルの笑みを零し、桜子に喋りかける。
「桜子! お前のその目、嫌いじゃない! 怒りの籠ったいい目だ!」
「なんで、なんでこんなことするの!? 私、伊織の事、友達になれたと思ったのに」
桜子の言葉に少しだけ悲しい表情を浮かべるもすぐに切り替え、再び口を開く。
「そうか、俺もお前のことを今でも友達と思っているさ。だが、それはそれ、これはこれ。アラン! お前も早く来い! 二対二でやるぞ!」
アランは呼ばれるもそこから動こうとせず、伊織は再び彼を呼んだ。
「アラン! どうした? なんで動かない!」
「うーん、今、一番、ピンチなのって僕なんだよね。この子、いつのまにか起動詠唱を口にしてたのかわかんないくらい早くから僕の動きを止めてる」
アランは背後に視線をやるとそこには彼の頭に銃口を向けている結衣の姿があった。結衣はアランの頭を吹き飛ばすことだけに集中しており、彼が指の一本でも動かした途端、引き金を引こうとしていた。
「てな訳で、やるなら伊織一人でやって」
アランの声を聞き、ため息を吐くと黒い刀を握りながら構えると桜子が走り出す。
そんな彼女に対して桜子も四つの剣を携え、迎え撃つ。
二人の刃がぶつかろうとした瞬間、それは唐突に現れた。
二人の生徒の決闘の間に白と黒が美しく混ざり合い美しいコントラストを生んでいる短髪の青年が二丁の銃を手に握り、両者の首元にむけている。
胸にはBULLET schoolの学章がついており、彼から放たれる殺意に二人の少女の危険を察知する感性が刺激され、すぐに、武器を向ける相手を変えた。
自分に武器が向けられていることに驚くこともなく、青年は淡々と口を開く。
「学園都市での決闘は御法度だ、お前達、それ以上やるなら僕が相手になる」
***
「うん、うん、わかった、ありがとう、百兎くん」
ツクヨはそう言うと桜子をその場から連れ出した。
学園都市エデン警備局の檻に入れられていた桜子は珍しく元気がなく、しょんぼりとしながらツクヨの後ろに着いて歩く。
「ごめんなさい、ツクヨ先輩。私、迷惑かけちゃった」
桜子の謝罪を聞くもツクヨは普段通りニヘラと笑い、答えた。
「桜子ちゃんは悪くないよ〜。今回は完全に相手側に非があるからね〜、むしろ、褒められるべきだ。三人とも友達のためにって言う最適の動きをした結果、こうなってしまったんだ。仕方ないさー」
「ううん、私が伊織達とお茶会なんてしたからレイズが怪我をしたし、ツクヨ先輩の手も煩わせちゃって」
桜子の普段の威勢の良い声と違い弱々しく元気のない声に少し驚くもツクヨは変わらず彼女を慰めた。
「他校の生徒と仲良くするのはいいことだよ。相手が急に切り替えて攻撃してくるなんて思いもしないしさー、桜子ちゃん意外と繊細だね」
「え? 私、がさつに見えた?」
「ううん、ガサツじゃなくてどんなに嫌なことがあっても前に進もうとする子かと思ってたんだー。でも、こういう事で悩んだり、悔やんだりする繊細さを兼ね備えてるってのを知れて、私は嬉しいよ」
「私ってそういう風に見えるんだ。なんだか、他の人の自分に対しての評価をあんまり聞いた事が無かったから新鮮」
ツクヨの後ろを歩いていた桜子は少し歩幅を広げ、隣に並ぶと歩き出した。夕焼けに照らされて二人の影が伸びると少しの間、沈黙が続いた後、桜子がその沈黙を破った。
「ねえ、ツクヨ先輩」
「なんだい? 桜子ちゃん」
「私、強くなれる?」
「慣れるさ、私が保証するよ」
「そっか、なら、頑張る」
「期待してるよ、桜子ちゃん」
短い中で、交えた言葉。
桜子はツクヨの言葉を胸にしまい、明日からの学園生活に思いを馳せるようにした。
***
「一応、弁明させて上げる。一言だけ言葉を発していいわ」
少女は怒りと怠惰を含んだ低い声で言葉を放つ。
ソドム学園風紀委員会室にて、自らの背丈ほどに伸びた美しい白髪を指でクルクルと弄りながら、問題を起こした二人の生徒を前に風紀委員長であるマガツ・シューヴァルは足を組んで座っていた。
そんな彼女に引くことなく、望月伊織は口を開いた。
「弁明はしないぜ、マガツ先輩。今回は俺の独断で動いたからな」
「なら、死んでもらおうかしら」
マガツの腕には既に巨大な銃が握られており、それに手を置くと伊織の額にその銃口を向けた。
「面倒くさがり屋なあんたの手を煩わせたのは申し訳ないと思うが俺に銃を向けたって事は、あんたと戦わせてくれるってことか?」
伊織はそう言うと彼女から距離を取ると自らの体に眠る幻想換装を取り出そうと起動詠唱を口にしようとした。
嬉しそうに口ずさもうとするも背後から、伊織の首に剣が突きつけられ、それから発せられた殺意を感じると彼女は大人しく両手を上げた。
「おいおい、あんたもいたんかよ。最優の劣等生」
「その名前で呼ぶな新人、死に急いでんのか?」
声の持ち主の青年が伊織の背後から現れるとマガツに向けて声を上げた。
「委員長、こいつらの処理はどうしますか? 入学二日目でこれでは先が思いやられます」
「そうだね、ヒナタ。面倒ごとを増やされたら困るのは私たち。君達を風紀委員会の役員候補としたのは君達が危険分子でありながら、強いからだ。しかし、二日目で問題起こす子なんて初めてだよ」
ため息混じりにマガツが言うと伊織は自らが置かれている状況を気にすることなく噛みついた。
「危険分子なら問題も起こすもんじゃないか?」
伊織の一言にヒナタと呼ばれた青年は首に突きつけていた剣を更に彼女の首の皮に近づけると怒りを込めて言葉を放つ。
「次、発言してみろ、無条件にその首を飛ばす」
「飛ばせるもんなら飛ばしてみな、双子の出来損ない先輩」
「殺す」
ヒナタは怒りに身を任せ剣を振り下ろそうとするも伊織はすぐにその動きで生まれた隙を突き、距離を取るとすぐに起動詠唱を口ずさみ、現れた刀で彼と撃ち合い始めた。
刀身がぶつかり火花を散らすとマガツは自分を置いて行く二人の生徒に対して面倒くさくなり、残されたアランに声をかけた。
「アラン・カロ、君にも弁明させて上げる。何か言うことは?」
唐突に自分に話が振られ、少しだけ困った表情をするも興味がないように答える。
「特に、弁明はないです。僕は何にもしてないんで」
「ふーん、そっか。あなたと伊織と一緒に行動させてるのは彼女を監視させるためでもあるから。次、こんなことがあったらあなたにも容赦しないから」
「とばっちりですが、まぁ、分かりました。善処します」
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