九章 アマルスクール 其の漆
学園都市エデン内の学園を運営する立場である生徒会役員には毎月一定の給料が支払われる。支払い先はスポンサーからであり、彼らは学生達への投資として支払いをしている。
文芸部の部室にて部員届けと書かれた紙に三人は自らの名前を記入をし、自分の意思で部員になることを刻む。
最初に書き終えた結衣は二人が入ってくれたことが嬉しくて彼らに喋りかけた。
「ふ、二人とも入ってくれて、あ、ありがとう」
「別に、入りたくて入ったんじゃない、ジャンケンで負けたから渋々だ。お前とも戯れ合うつもりはないからな」
レイズは怒りを露わにしながらも綺麗な字で部員届けに自らの名前を書いて行く。
「結衣と一緒に過ごせる時間が増えるなら私は全然!! レイズも私に負けたから入ったんだし文句言わないで〜」
「その言い方だとお前に負けたみたいになるだろ! ジャンケンに負けたと言え! ジャンケンに!」
「あらぁ〜! 負け犬の遠吠えですか〜? はいはい、言い直しますよ〜。ジャンケンに負けたレイズ〜」
再び火花がバチバチと散らし、彼らを結衣が涙目で抑えようとしているといつの間にか部室の扉が開いており、二人の間に負のオーラを漂わせる薄紫の髪をした生徒が立った。
それはムスッとした表情を浮かべたツクヨであり、その空気を察したセラが少し心配した様子で口を開く。
「ツクヨ先輩?! どうしたんですか?! もしかして、庭園会議で何かありましたか?!」
「あれ? なんかあったように見える?」
「それは、はい、もう、その何かあったかのような空気を纏ってましたよ」
セラの言葉を聞き、ツクヨは短くため息を吐くと自らが発してしまった負のオーラを消そうと顔を振るわせる。
少しばかり表情が和らいだツクヨは三人が部活に入ることに気付き、先ほどとは変わって嬉しそうに声を発した。
「三人とも部活に入るだね。うんうん、会長は嬉しいなぁ〜。セラちゃん以外の他の役員達はみんなバイトやら特訓やらで入ってなかったからねー」
「そうなの?! なら、三人も文芸部に入ったのはいい事だったかな?」
「それはもう、私たちの活動に否定的な人もいるからね。部活動も出来るというイメージは重要なんだよ〜」
桜子の言葉にツクヨはのんびり答えると目でセラに合図を送り、それに気づいた彼女はすぐに声を上げた。
「三人とも部員届けの方は受理したので本日はもう学校も終わりです。放課後なので都市にでも行って見てはどうですか?」
「えー、ツクヨ先輩も来たことだし、もう少しここでゆっくりしたいなー」
「ごめんね〜、桜子ちゃん〜。セラちゃんに用事ができちゃったから〜」
そう言うとツクヨとセラは外に出て行き、三人は部室に取り残されてしまう。
「うーん、じゃあ、とりあえず、行ってみる? 都市」
***
「単刀直入に聞きますよ。庭園会議で何があったんですか?」
生徒会室に移動したセラとツクヨは椅子に座ることなく話を進める。セラが心配そうな口調で問いかけるとツクヨは少し渋い顔をしながら答えた。
「う〜ん、実はね、その〜、四季祭がね、来月に決まったんだよね〜」
「え? え?? ええええええ?!!!!」
セラは四季祭という言葉を聞くと大きく反応し、驚きのあまり、大声をあげてしまう。
「セラちゃん〜、落ち着いて〜。私もびっくりなんだよ〜」
「いや、だって、毎年、6月か遅かったら7月とかの四季祭ですよ?! というか、先月やったばっかじゃないですか?! それなのにこんな短いスパンでやるなんて!? 準備とかはどうするんですか?!」
「そこは提案者の伽藍重工附属が全部やるらしい。グレイのやつ多分ずっと準備してたね」
ツクヨがそう言うと彼女の顔が少しばかり顔が険しくなり、セラがそれを見て心配そうに見つめるも二人は頭を悩ませる。
しかし、今考えても無駄だと考えるとツクヨは二ヘラと笑いながら、口を開いた。
「とりあえず、桜子ちゃん達が今季の大会で優勝するために特訓しないとね」
「それもそうなんですが、今回の大会の形式は去年同様なんですか?」
「うん、去年同様シングル、個人戦だねー。はぁ〜、一体何が目的なんだろうね。グレイのやつは」
含みのある言い方するとツクヨは生徒会室の天井を眺め、二人の間には沈黙が流れた。
***
四季祭。
それは四季になぞり、行われる四つの大会。
学園の序列を上げる唯一にして絶対の儀式。
そして、春の大会は新緑が名乗りを上げる六つの学園の一年生達が挑む交流戦。
栄光は誰の手に?
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