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侵略のポップコーン  作者: 進常椀富
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宇宙を貫いて4

 もう大丈夫だろう。鈴木たちはカートの裏から出ていった。


 メリコが説明する。

「アタシたち超光速通信機使いたいんだけど。会社の違法操業を中央宇宙連邦につーほーするの。そうしないとこの戦いは終わらない」


 リーダー格らしい女性社員が答える。

「わかったわ。超光速通信機の場所はわかる? この先よ。ハデットはなにをしてくるかわからない。わたしたちは通信を途中で切断されないよう、管制室をコントロールします。ゴー、チーム、ゴー!」

 ふたたびイレイザーを引き抜いて、社員の一団は走っていってしまった。

 鈴木たち一同が残る。


 アマガが先に立って歩きはじめた。

「通信機はこっちです。さっきの社員たちにわたくしの知り合いはいませんでした。おそらくあと半数ほどがまだ事態を知らないままでしょう。敵対してくる可能性があります。気をつけて進みましょう」


 それは杞憂に終わった。

 鈴木たちは無事に超光速通信室の前に着いた。

 ひときわエレガントなデザインの扉を抜けて中に入る。

 機器に囲まれた部屋だった。

 真正面に三次元ホロモニター。

 左右に大画面のサブモニターが並ぶ。

 五人が入っても余裕のある広さだ。

 超光速通信機はひときわ強力なパワーを必要とする特別な機器だった。

 司令室でさえ普段はより劣る亜光速通信を使っている。


 ひと通り目視でチェックしたあと、アマガが機器を操作しながら言った。

「メリコは告発人だからホロモニターの正面に立って。左右にスズキさんとシンジョーさんが並ぶといいでしょう」


 鈴木たちは言われたとおりに立った。

 アマガが機器の操作を続ける。

 ぶん、ぶんと唸り、各機器が目覚めはじめる。


 鈴木は感慨深いものを覚えて口を開く。

「この通信がつながれば、とうとう地球も宇宙連邦の一員になるんだね。すごいことだなぁー」


 メリコが緊張の面持ちで言う。

「アタシ、中央宇宙連邦の人と話すの初めて」


 進常も巨体でふぅふぅ言いながら頷いた。

「奇遇だな。わたしもだ」


 室内を飛びまわりながらモルゲニーが言う。

「中央宇宙連邦の役人はおもしろいカッコしてるんじゃぞ」


 アマガが言った。

「チャンネル、つながります!」


 中央のホロモニターに光の波紋が広がる。そのあと立体映像が現れた。

 モッツァレラチーズに目と口をつけたような姿の受付嬢がそこにいた。

 拍子抜けというか、気が抜けるようなゆるい姿だ。

 これが救いの女神かと思うと、鈴木は微妙な気持ちになったものだが、

 そこは顔にださないよう気をつける。


 受付嬢が分厚い唇をぐにぐに動かす。

「こちらは中央宇宙連邦です。このチャンネルでは主に宇宙辺境で活動している各企業のへの苦情を受けつけております」

 どうやら正しい場所に通信がつながったようだった。


 メリコが勢いこんで口を開く。

「違法そーぎょーですッ! 条約違反なんですッ! すぐに保護してくださいッ!」


 メリコの支離滅裂にも受付嬢は冷静だった。

「お話を詳しく伺いましょう。ゆっくり、順序立てて最初からご説明ください」

「あの、えっと、まず地球っていう星があって、そこには人型生命体が文明を持っててね……、それで、えっと……」

 たどたどしいながらも、メリコはなんとか事実のすべてを伝えてくれた。


 受付嬢が応える。

「なるほど。新たに発見された地球は人型生命体の星で、後進文明保護条約の対象であるのに、テホルル・ペットフーズが違法な侵略行為をし、これから略奪までを行おうとしているのですね」


 メリコは言った、

「そう! そーゆーこと! 早く処置の執行して! こっちもまだなにがあるかわかんないから!」


 受付嬢は落ちついた口調で続ける。

「地球を人類文明の地であると登録するのに必要な事項があります。そちらに地球人類の女性はいらっしゃいますか? 生命の基本形は女性ですから、サンプルとして地球人類の女性をスキャンできないかぎり、そちらの訴えを認めることはできません」


 こちらにはもちろん進常がいる。


 進常はバツが悪そうに頭をかいた。

「へっ、へへっ、なんか悪いね、わたしなんかが地球人類代表になっちゃってさ。サンプルならわたしがいるぞ!」


 アマガがスキャナーを操作する。

「それじゃシンジョーさんをスキャンします」


 天井から放たれた走査線が進常の身体を覆う。


 そのとき、進常の右腕がびくびくと痙攣した。

 進常はメモをとろうとするが、ホロモニターの受付嬢に窘められる。

「動かないでくだい。スキャン終了までの時間が長くなります」


 しかたないので進常は口で言う。

「なにか来る! きっと来るぞ! 予知が出かかった! 気をつけろ!」

「進常さんは動かないでください! ぼくたちがなんとかします!」

 鈴木たちは気を引き締めてドアに向かいあった。


 外から誰かの叫び声がする。

「うわー! これはダメだー!」

 ズシンズシンという足音とともに、ハデットの高笑いが聞こえた。

「ワハハハッ! こわっぱどもめ! このアームドスーツまで持ちださせおって! 必ず捻り潰してくれるッ!」


 メリコとアマガはイレイザーを抜く。

 鈴木も第三の眼に意識を移す。

 鈴木たちはドアを開けた。

 通路の奥からゴツゴツした巨体が向かってくる。

 機械式のパワードスーツを身につけたハデットだった。


「しつこいよ、このバカ!」

「そちらこそ諦めてください!」

 メリコとアマガが引き金を絞る。

 しかし、イレイザーの光線はハデットに届かず、スーツの手前で光の波紋となって散った。

 強力な防御があって、効果がない。 


「いくぞぉぉぉッ!」

 ハデットが突進してきた。


 もう鈴木の髪の毛は頭頂部にひとつかみ残っているだけだった。

 この戦いでそれもなくなるだろう。


 宇宙の平和のために、青春と髪を捧げるッ! 


 鈴木は叫んだ。

「この一撃でおまえを止めるッ! 絶力! 消滅こうせぇぇぇーんッ!」


 鈴木の額から白光が迸る。

 だが、その光線もハデットの前で波紋となった。

 ハデットのスーツは光線の圧力で大きく後退したものの、

 エネルギーの多くは無効化されている。


 ハデットは笑った。 

「ワハハハッ! いくら超体の力といえど、次元断層バリアまでは貫けないようだな! 諦めろ! おまえたちはここで死ぬ!」


 ハデットのスーツについている強力なメタルアームは、通路の壁をつかんで踏みとどまる。

 壁は凄まじいパワーでぐにゃりと変形していた。

 そんな力で直接殴りつけられたら、鈴木などひとたまりもないだろう。

 

 鈴木は雄叫びをあげて第三の眼に力を集中させた。光線を放ち続ける。

「うぉおおおおおおッ!」

「おのれぇぇぇぇぇッ!」

 ハデットも踏ん張り、じりじりと近づいてくる。

 アームドスーツが少しずつ分解されていくのも気にしていなかった。

 鈴木の髪の毛はハラハラと舞い落ちて一本もなくなる。


 力比べはいくぶん鈴木に不利だった。

 じわじわと押される。

 ハデットは骨格とコアだけになったスーツで、とうとう鈴木の目前にまで迫った。

「ハハハッ! 終わりだ! 下等生物め!」


 ハデットが鈴木を叩き潰そうとメタルアームを振りあげた刹那、澄んだ声が聞こえた。

「地球の登録完了。違法操業を認めます。生命維持に必要なもの以外、すべての資産を凍結」


 ハデットの動きがピタっと止まる。

 スーツの動力が落ちていた。


 鈴木は光線を発射し続けていたので、光条がハデットを炙る。

「うぎゃぁああああッ!」

 ハデットはスーツを飛びだし、炎に包まれて床を転げまわった。

 そこへ天井から消火液が降り注ぐ。

 ハデットはカンパニースーツも着ていたのでやけどしたのは頭部だけだった。


「勝った! なんとか!」 

 鈴木は膝をついて肩で荒い息を吐く。


 リーダー格らしい女性社員がやってきていた。

「こんなやつでも違法操業の証人として生かしておかねばなりません。すぐ手当します」


 鈴木たちの背後、超光速通信機のホロモニターでは、異星の受付嬢が微笑んでいた。

「ようこそ中央宇宙連邦へ、地球人類のみなさん」

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