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侵略のポップコーン  作者: 進常椀富
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宇宙を貫いて1

 ミッションシップが急加速して鈴木家を飛びだした。

 鈴木家は破片を撒きちらして崩壊する。

 ミッションシップの操縦席は壁面の七割くらいが外部を映すスクリーンだった。

 とうぜん、生家の崩壊も鈴木の目に映った。


 鈴木は声を震わせる。

「ああああ、ぼくんちもう壁しか残ってないじゃんかぁぁぁー……」


 隣で進常が言った。

「生きて帰ってくれば十億円だ。新しい家建ててやるって。考えてみれば晴れて新築に住めるんだからある意味ラッキーじゃん?」

「思い出のたくさん詰まった家だったのにー」

「勝てば新しい家、新しい友だち、そして新しい世界! よりどりみどりだ! 未来は明るいぞ! 過去を振り返るな!」

「はーいー……」

 鈴木は理性を振り絞って、無理やり自分を納得させた。


 そういっているあいだにも、鈴木家ははるか遠くに見えなくなった。

 弾丸より速いミッションシップはもう雲の上だった。

 凄まじい加速だったが、操縦席に加速のGはかかっていない。

 異星テクノロジーは鈴木たちの予想以上に優れている。


 通信機の画面ではまだハデットが怒鳴っていた。

「裏切り者め! 貴様など本艦には近づけん! 必ず撃墜してやる! そのうえでメリコ149、おまえの実家には相応の損害賠償をせいきゅ……」


 メリコは通信機のスイッチを切った。

 偽物のサイコグラスを外しながら言う。

「シンジョー! 敵の気配はどう? こっちはシールド無いから一発食らったらアウトだかんね! あなたの予知だけが頼り!」


 進常は鉛筆を握りしめて、メモを手にとった。

「おう、任せておけ! デブるのはイヤだけどしょうがねえ! 十億円も新しい世界も、命あってこそだからな! でもいまのところ、ぜんぜん反応ないみたいだ」


 スクリーンに映しだされる外部の様子は急速に移り変わっていった。

 輝く青空から藍色が濃くなっていき、もう外は暗い。

 ほとんど宇宙に達していた。

 ミッションシップは星の瞬く世界に入っていく。


「そろそろいいみたいです」

 アマガが手を下ろして、自分のサイコグラスを外す。

 鈴木も進常も落下しなかった。

 身体は浮いている。無重力だった。


 メリコの身体はシートにベルトで固定されていたし、

 アマガとモルゲニーは慣れた様子で姿勢を安定させていた。

 漂っているのは鈴木と進常だけだった。


 進常の身体がくるくると横回転をはじめていた。

「鈴木くん、無重力だ! わたしが夢にまでみた無重力! すげぇ! 気持ちいい!」


 鈴木は変なスイッチを押さないよう注意しながら壁面のでっぱりにつかまっていた。

「進常さん、はしゃいでないで姿勢を安定させてくださいよ。いまは進常さんが肝なんですから自覚を持ってください」

「わかった、わかった」

 進常もでっぱりにつかまって身体の回転を止めた。

「ちょっと聞きたいんだけど、マザーシップのなかも無重力?」


 アマガが答えた。

「マザーシップには人工重力があります。だいたいいつもカンパニースーツを着ているのではっきりとはわかりませんが、地球と同じくらいだと思います」

「この身体の軽さも束の間か。残念」


 そのとき、進常の右腕が痙攣した。

「おおおお! 来たぞ、みんな注意しろ!」

 鈴木が片腕でつかんで進常の身体を安定させる。

 進常は鉛筆をメモに走らせて言った。

「円状に攻めてくる! まず左上から右回りだ!」


 メリコが悲鳴のような声をあげた。

「えーっ、それだけじゃわからないよ! アタシから見て左上でいいの?」

「そのはずだ! こっちがどう動いても向こうは左上から来る!」

「なんだかわからないけど、精一杯やるから!」


 メリコはミッションシップの武装をスクリーンの左上に合わせた。

 そのまま飛び続ける。

 ピピピッと警告音が鳴る。

 メリコは身を乗りだした。

「来た!」


 スクリーンの左上に敵ドローンシップ出現。

 ついでこちらの武装が射程圏に入った。

 メリコはトリガーを引く。

 光条が疾走ってドローンシップは爆発四散した。

 メリコが確認する。

「右回りにくるのね!」


 実際、そのとおりにドローンシップが出現した。

「こなくそー!」

 メリコは照準を回転させ、次々と撃墜していく。

 メリコは頭上の進常を振り仰いだ。

「次は?」


 進常の鉛筆は止まっていた。

「しばらく休憩だな。いや、来たぞ! 今度は右上だ!」

「右上ね!」


 メリコは照準を移動させる。

 ちょうどそこへドローンシップが出現した。間髪を入れず破壊する。


 ドローンシップは次々と接近してきて波状攻撃をしかけてきた。

 進常が自動書記のように鉛筆を走らせる。

「次、真ん中!」

 メリコは指示に従う。

「オッケー!」

「右下!」

「なんの!」

「また右上!」

「おまかせ!」

 メリコはドローンシップの群れをものともせずに宇宙空間を突っ走った。


 鈴木は感嘆して言う。

「すごいじゃん! メリコちゃん強い!」


「へっへっへーっ!」メリコは得意そうに笑った。


 モルゲニーが興奮して言う。

「すごいではないか、メリコ! わらわはあいつらにズタボロにされたのじゃ、思いっきり仕返ししてやってくれ!」


 アマガが口を開く。

「ドローンシップの射程よりミッションシップのほうが射程は長いので出現位置さえわかれば遅れをとることはありません。あとはメリコの操作技術しだいです」


 鈴木は進常の身体の変化に気づいた。

「うわ、進常さん! 太って腕が赤ちゃんみたいです!」

 力を使い続けたために進常はぶくぶくに太っていた。


 二重あごになった進常は苦しげに言う。

「ぐぬぬ、服が苦しくなってきたぞ……。早く勝負をつけないとヤバい……」


 操縦に集中していたメリコが大きな声で言った。

「マザーシップ補足! 距離一万!」


 スクリーンにはまだ見えない。

 しかし進常が反応した。

 右腕を動かすのとほぼ同時に叫ぶ。

「右に回避! すぐ!」

「はい!」


 すでに進常を信頼しきっているメリコは反射的ともいえる素早さで指示に従った。

 虚空から飛来した光条が左にそれていく。

 マザーシップからの砲撃だった。


 メリコは額の汗をぬぐう。

「危なかった。あんなの当たったら蒸発しちゃう……」

 進常が言った。

「次、左に回避!」

「はい!」

 光線が外れていく。

 ミッションシップはふたたび難を逃れた。

 鈴木たちは宇宙空間を突き進んでいく。


「進常さん……?」

 鈴木がつかんでいる進常の身体が振動していた。

 ものすごい勢いでメモを書いている。

 進常は言った。

「おおおおお、来るぞ、来るぞメリコ! 心の準備しとけよ!」

「なんでも言って!」


 進常の途切れない指示が始まった。

「まず左に回避、その後左上に敵! 円形の波状攻撃、三機まで倒したら右に回避! そのあと右下から攻撃機出現! 二機撃って左に回避、残りを倒したら左に回避!」

「くっ! 難しくなってきた、燃えるぅぅぅー!」


 メリコは指示されたとおりに機体を操縦した。

 光条がミッションシップをかすめていく。

 敵ドローンシップは出現しだい破壊された。

 スクリーンのなかで星空が回転し、爆発と閃光がよぎってゆく。

 ミッションシップは熱いカオスのなかを突進した。


「左に回避!」

「はい!」

 光条がミッションシップをかすめる。


 その直後、スクリーンに敵マザーシップの姿が映った。

 亀の甲羅を積みあげたような黒いシャンデリアか都市のような外観。

 鈴木が二度めに目にする敵の本拠地だった。


 マザーシップは逃げようとしていないのか、

 いったん姿を捉えると、それは急速に巨大化していった。


 攻撃をかわしながら接近していく鈴木たちのミッションシップ。

 近づいてみるとマザーシップの大きさは途方もないものだった。

 町がひとつすっぽり収まりそうな大きさがある。


 鈴木が言った。

「この大きさで乗組員数十人か。これなら敵と出会わずに目的地までつけるんじゃ」

「中に入れればな!」

 進常が鉛筆を走らせながら言う。


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