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侵略のポップコーン  作者: 進常椀富
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勝利へのカツカレー2

 鈴木はメリコたちはどんなものかと様子を窺った。

 驚いたことに、メリコの周りに散らばっているパーツの数が減りはじめていた。


 鈴木はメリコに聞いた。

「メリコちゃん、もしかして山場越えた?」

 メリコはにっこり笑った。

「うん! もうクロンダイト合金の取り付けは終わってて、外したパーツを戻してるとこ」

「ミッションシップ、うまく動きそう?」


 その問いには操縦席のなかからアマガが、大きな声で答えた。

「だいじょうぶです! すべてのパーツを戻すまでテストできませんが、クロンダイト合金はしっかり付きました!」

「だって。直ったら操縦はアタシに任せて!」

 メリコが頼もしげに言う。


 鈴木は言った。

「そうか、メリコちゃんのシップだからメリコちゃんじゃないと操縦できないんだ。メリコちゃん操縦うまいの?」


 メリコは胸を張る。

「アタシむっちゃ操縦うまいよ。みんなに銀河一の鉄砲玉って言われてた」


 その言葉で鈴木はちょっと不安になってきた。

「それ、褒められてるのかビミョーだな。言葉の翻訳ミスでないとすると」


 鈴木、進常、モルゲニーの『暑さを感じているグループ』は飲み物をとって休憩した。

 メリコとアマガは「もう少しだから」と、作業を続行する。

 カンパニースーツは涼しいのだろうから、強く休憩を勧めることはしない。

 鈴木たちはメリコたちの判断に任せた。


 それから一時間ほどが経った。


 完成したサイコグラスの偽物を身に着けて、虚無のごとく進常がつぶやく。

「ワレワレハ、ウチュージンダ……」


 鈴木は相手にしなかった。

 進常は暇かもしれなかったが、鈴木はやることを見つけていた。

 残ったプラスティック片を切ったり、熱で曲げたりして、

 モルゲニー用の食器を作っていたのだった。

 何枚かの皿ができ、スプーンやフォークなどのカトラリーもできた。


「モルゲニーちゃん、どう?」

 鈴木はできた食器の具合をモルゲニーに確かめてもらった。

 モルゲニーはにっこり頷く。

「よいぞ、スズキ。わらわの手にフィットする。見事じゃ」

「次はなに作ろうかな。カップの類がまだか。ちょっと難しいかもしれないけど……」


 鈴木がそこまで言ったとき、腹に響くような低周波が広がった。

 ぶぅんぶぅんというその音はメリコのミッションシップが発信源のようだった。


 横倒しになっている操縦席からアマガが出てくる。

「クロンダイト合金は役目を果たしてます。すべてのパーツを元通りに戻し終えました」


 メリコが言う。

「さっそく動かしてみる。危ないかもしれないからみんな下がって。いや、家から出て」


 一同はその指示に従い、中庭に出る。


 全員が外にいるのを確認してから、メリコがミッションシップに命令した。

「シップ、姿勢を安定させて!」


 ミッションシップはメリコの音声で動き始めた。

 家具や内壁をバキバキと砕きながら、

 ミッションシップはふわっと半回転して、脚から着地する。

 もう横倒しではない。


 進常は感心した声を出した。

「やっぱすげえな、エイリアン・テクノロジー。音声操作かよ」


 鈴木は指をくわえておろおろした。

「ぼ、ぼくんち、またさらに壊れちゃいましたよぅー」


 慰めるでもなく進常が言った。

「鈴木くん、諦めよう。これはもう直せるっていうレベルじゃない。建て替えだ。だいじょうぶだ。金はだしてやるから」

「お父さん、お母さんになんて言えば。帰ってきたら家が変わってたなんて……」


 メリコとアマガはミッションシップへ近寄り、操縦席のなかへ入った。

 鈴木と進常もそれに続く。

 メリコは席につき、機器のチェックをしている。

 それを覗きながら進常が言った。

「ヤバいな。考えてなかったけど、この宇宙船とても四人は乗れないぞ。乗れて二人だ」


 鈴木もハッチから頭を突っこんで上下左右をよく観察した。そして言う。

「だいじょうぶですよ。幅は二人がやっとですが、この操縦席、上の空間がだいぶ余裕あります。無重力になってしまえばそこぼくたちが収まるのはわけありません」


 進常が言った。

「重力圏にいるあいだはどうする?」

「メリコちゃんは操縦だから、アマガさんに持ちあげててもらいましょう。片腕にひとりずつ。できそうですかアマガさん?」

「やってみましょう」


 アマガが出てきて進常を抱えた。

 両腕で持ちあげたあと、片手に移してバランスをとる。


「こわいこわいこわい!」

 進常は言いつつもバランスを崩さないよう身を強張らせている。


 アマガは、いまや丸い肥満体となった進常を涼しい顔で片手持ちしている。

 カンパニースーツのパワーのおかげだが、

 これなら痩せている鈴木も問題なく持ちあがるだろう。


 鈴木は聞いた。

「マザーシップまで戻れますか? エネルギー源はどう?」


 進常をおろしてアマガが答える。

「この距離だと、マザーシップからのエネルギー供給があるはずです。戻るのに問題はありません」


 服の裾をただしながら進常が言った。

「ということは当然、むこうはここに動くミッションシップがあることを察知しているな?」

「それは間違いないでしょう」

「どうする? ちょっかい出される前にこっちから突っこむか? でも今日はもう疲れたし、腹も減ってるんだよなー」


 進常の意見にみなも同意した。

 今日は全員、朝から活動し続けた。

 休息が必要だった。

 夏の日が長いとはいえ、もうすぐ暮れる時間だ。


 鈴木は自分の考えを述べた。

「確かにちょっかい出される可能性もありますけど、むこうからしたらいままで消息の途絶えていたミッションシップが復活したことになりますよね。だからむこう目線では、ぼくたちに囚われの身だったメリコちゃんが脱出して善戦しているっていうふうに捉えている可能性もでてくるんじゃないかと。それならぼくたちには余裕ができたことになります」

「うん、それでいこ」

 進常は適当に同意した。


 メリコが機器のチェックを終えて、ミッションシップから出てきた。

「システムほぼオッケー。使えないのはシールドだけ。飛べるよ。どこでも連れてっちゃう」


 進常が言った。

「準備は整ったわけだが。プランどうする? 前に考えたやつでいく?」


 鈴木が口を開く。

「前に考えたやつって、アレですか? ぼくたちが眠ってシグナルを消して、メリコちゃんたちに倒されたと思わせるっていう。そのあいだにメリコちゃんがマザーシップへ帰還してぼくたちを運びこんじゃうって手はずの」

「それ。それしかないと思うんだ、やっぱ」

「そんなに都合よく寝たり起きたりできますかね、ぼくたち。しかもそのあと一大決戦だっていうのに」

「そうだな。人間、そんなに自在に寝たり起きたりできないもんなー。今晩徹夜するとか。それで薬でも飲めば気絶するように眠れるはず」

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