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侵略のポップコーン  作者: 進常椀富
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やきにく異星人4

 鈴木はため息をつきながら自分の考えを口にした。

「本当はイヤですけど、これしかないですよ。ぼくたちを倒したと思わせて、ぼくたちが寝ているあいだにミッションシップでマザーシップへ帰還。ぼくたちも一緒に行きます。そして向こうに着いたら強行突破で一気に超光速通信機を制圧します。通報さえできれば勝ちなんだからあとのことは考えない」


 進常は頬杖をついた。

「マザーシップの乗組員て何人くらいいるの?」


 アマガが言った。

「数十人、およそ四十人です」


 鈴木は驚いた。

「たったそれだけ!? それだけで地球征服しようっていうんですか!?」


 アマガが続ける。

「そのかわり、攻撃・回収用ドローンが一億体います」


 鈴木は息をのんだ。

「い、一億……!」


 進常が腕組みして言った。

「一億かー。やっぱそれぐらいいるよな。でも人間のほうはたった四十人。うまくやればほぼ全員改心させられないか、その人数なら。最初から違法行為だと知っててやってるエライやつらは味方にできないとしても」


 メリコが言った。

「みんな基本的には悪人じゃないし。みんな真面目に仕事やってるつもりだから、可能性はあるよ! 事実を知ったら味方になってくれる!」


 しかし、

 人型じゃなければ他文明を侵略して搾取しようという人種なんだけどな、

 と鈴木は思ったが口にしないでおいた。


 文化的背景が違えばいろいろあるだろう。

 いまはメリコの「みんな悪人じゃない」というセリフに期待しておくしかなかった。


「ぐー……」

 アマガはまた座ったまま寝ていた。


 進常はあくびをして身体を伸ばす。

「まあ、鈴木くんの作戦でいくしかないか。向こうに着いたらわずかな希望があるってことで……」


 進常は立ちあがって窓へ行き、カーテンを開けた。

 外はもう明るかった。

 部屋のなかが光で満たされる。

 照明のスイッチを切りながら、進常はもう一回あくびをした。

「夜中に起こされたから眠いや。ひと休みしよ」


 鈴木は聞いた。

「進常さん、今日、銀行いくんでしょ?」

 進常は首を振った。

「いや。よく考えたら今日は土曜だわ。銀行やってない。換金は月曜までお預けだね。ゆっくりしよ」

 鈴木もあくびをした。

「ぼくもやっぱり眠くなってきました」


 それから進常はアマガのために予備のマットレスを出してやり、

 タオルケットをかけてリビングの床に眠らせる。

 テーブルに上には食パンといちごジャムを用意した。

 ジャムの蓋の開けかたをメリコに教える。

「メリコ、おなか減ったらこれ食べてな。起きたらもっとうまいもん食わせてやるから」

「へへー」

 嬉しそうな声をだして、メリコはさっそくパンに手を伸ばした。

 ほかの三人は眠った。

 しばらくパン&ジャムを味わって感動したのち、メリコもやることがなくなって眠った。





 鈴木が目覚めたとき、もう昼に近かった。

 ほかのみんなはまだ寝ている。

 リビングのソファにメリコ、その下の床にアマガ。進常も部屋から出てきていない。

 安らかな寝息の音ばかりが耳に届く。


 のんきなものだった。

 しかし、休息をとらなければ戦えないのも事実。

 いま地球は侵略されつつあるのだ。

 一億体もの戦闘ドローンが地球に狙いを定めている。

 鈴木と進常が破れてしまえば、人類はみなペットフードにされてしまうのだった。


 そう自分に言い聞かせたところで、やはり緊張感のない場だった。

 宇宙人と地球人が仲良く眠りこけている。

 この場のゆるさは揺らがない。

 穏やかな鳥のさえずりまで聞こえてくる。

 地球の危機はともかく、おなかが減った。

 

鈴木はテーブルの上にあったパンの袋を見た。

 八枚切が詰まっていたはずなのに、もう二枚しか残っていない。

 メリコの食欲は大したものだった。

 別のものを食べたほうがよさそうだ。


 鈴木はまず洗面所で顔を洗った。

 洗い終わるときに進常が起きてきた。

 昨日の午前に比べたらまるまると太った姿で、目をこすりながら言う。

「鈴木くん起きたんならさー、なんか作っといてよ、朝ごはん。ごはん炊いてもいいしさー。食材てきとうに使って。あと連中が起きたら焼き肉にしちゃってもいいし。じゃ、できたら起こして」

 それだけ言うと進常はベッドに戻っていった。

 まだ寝るらしい。


 鈴木も一年の半分はひとり暮らしをしている。

 調理の腕にはそれなりに自信があった。

「まかせといてください。なに作ろっかなー」


 キッチンへ行き、進常家の冷蔵庫を物色する。

 昨日買い物したおかげで中身はみっちり詰まっている。

 しばらく悩んで、鈴木は焼きそばと玉子焼きを作ることにした。

 何人食べるかわからないので一袋三玉全部作る。あえて肉は入れない。


 ごはんも炊いておくことにした。

 ごはんさえあればおかずを作らなくてもおにぎりができる。

 まず、米を研いで炊飯器にセットした。

 次は焼きそばだ。


 進常が以前自慢していた中華鍋をみつけ、油をひいて火にかける。

 鍋を熱するあいだにキャベツを切り、袋の生麺を電子レンジでチンしてほぐす。


 玉子焼きの準備もした。卵を四つ割り、ボウルで混ぜる。

 中華スープの素があったのでお湯で溶いて、これも混ぜる。

 これで玉子焼きは驚くほどおいしくなるのだ。


 鈴木は手際よく調理を続けた。

 焼きそばは最終段階を迎え、よく混ざった麺とキャベツに粉末ソースを振りかける。

 芳しくスパイシーな香りが部屋に漂った。

 と思ったらメリコが起きた。

「スズキ! なにしてるの、いい匂いする!」

「いま焼きそばと玉子焼き作ってるからね。できあがったらみんなを起こして食事だよ。はい、焼きそばできた」


 鈴木は中華鍋から大皿に焼きそばを移した。

 熱くなっている中華鍋はそのまま火にかけ続け、溶き卵を投入する。

 卵はおいしそうな音を立てて固まっていった。

 これだと玉子焼きにソースの匂いも混じるだろうが、そんなことは気にしない。

 これなら洗う鍋がひとつで済む。

 ここらへんが鈴木流である。

 考えてみれば玉子焼きを先に作ったほうがよかったかもしれないが、

 つい手間のかかるほうを優先してしまうのが癖だった。


 お玉でちょいちょい混ぜてやると玉子焼きはすぐにできた。

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