やきにく異星人2
ここまできて、やっと進常も目を覚ましたようだった。
部屋の入口に姿を現す。
「んもー、なに騒いでんのー、こんな夜中にー」
進常の部屋はここから見て玄関側だった。
そちらを見ると玄関も目に入る。
そして鈴木は見た。
玄関のドアがそっくり外されて転がっているのを。
ゆるい空気の流れが頬にあたるのを感じる。
鈴木は固まった。
鈴木のただならぬ表情を見て進常もその視線を追う。
ドアをなくし、ぽっかり開いた玄関があった。
「ぎゃー! なんてことすんの、あんたたち! だれ! これやったのだれ!」
口にキャンディーを頬張ったまま、アマガが申し訳無さそうに言った。
「すいません、原住生物のかた。開かなかったものですから仕方なく……」
進常は床に座るアマガに目をやった。
メリコと同じ服を着た銀髪赤眼の異星人が、のんきにお菓子を食べている。
進常はふたたび叫んだ。
「ぎゃー! 侵略者! 紙! 紙とペン! お、おまえの動きなんてすぐ予知してやるからなー! 動くな!」
鈴木は慌てて説明した。
「落ち着いてください、進常さん! 彼女、もうバイザーしてないでしょ。ばくたちが勝ったんですよ、力を使わずに!」
「な、なに……?」
「メリコちゃんがうまくバイザーを奪ってお菓子を食べさせたらおとなしくなりました。もう敵対していません」
進常はお菓子まみれになっているメリコとアマガを見た。
確かにもう戦っていない。
アマガはぺこりと頭を下げてきた。
「おじゃましてますぅー」
「あああああ、んんんんっ!」
進常は全身に力を溜めてなにかをこらえているようだった。
しばらくそうしてぷるぷる震えたあとで力を抜いて言う。
「ふぅー。無傷の宇宙船が手に入ったと思えば安いもんか、ドアの一枚ぐらい……」
アマガが聞く。
「うちゅーせんってミッションシップのことでしょうか?」
「そうだよ。あんだろ、アンタの乗ってきたミッションシップ」
アマガはにっこり微笑んだ。
「それなら、もうダメかと思われます」
「なんでっ!」
「サイコグラスが破壊された場合、乗機が敵に利用されるのを防ぐため、連動して自壊装置が作動しまして。早い話がいまごろバラバラかと思われますわ」
進常はのけぞった。
「くぉー! ドア壊されただけで終わりかよ!」
鈴木は諦めずに言った。
「とりあえず調べてみまようよ。近くにあるんでしょ、えっと、あなたのミッションシップ」
アマガは鈴木より年上、二十歳くらいに見える。
アマガは言った。
「わたくしはアマガ162ともうします。ミッションシップはこの建物の上に停めてきました。ご案内しましょう」
鈴木は言った。
「名前のあとの数字ってやっぱ身長かな」
鈴木はTシャツにハーフパンツ、進常はぱっつんぱっつんになったパジャマだが、
外は蒸し暑く、寝間着姿でも寒くはなかった。
四人はアマガを先頭にして屋上への階段を上がっていった。
時間はもう四時。空はうっすらと明るくなっていた。
アマガのミッションシップは果たして、自壊装置がその仕事を完遂していた。
薄明を背景にして、うず高く金属片の山ができあがっていた。
アマガは言った。
「ごらんのとおりですわ」
鈴木はミッションシップのかけらを手に取りながら首をひねった。
「なんか納得いかないな。なんでだろう」
進常も同意する。
「わたしもだ。なんか状況が違うよなこれ。……あっ!」
メリコが声をあげた。
「アタシのミッションシップは形が残ってる!」
「そうだよ!」
「それ!」
鈴木と進常は同意した。
鈴木はアマガに聞く。
「メリコちゃんの乗ってきたミッションシップは壊れて飛べなくなってるけど、形はしっかり残ってるんですよ。いったいどういう違いがあるんですか?」
アマガは困惑を顔に浮かべた。
「それは、どういことでしょう。可能性としてなら、サイコグラスより先に自壊装置が壊れたのかもしれません。それならミッションシップは破片にならないでしょうし」
「うぅーん……」
鈴木は腕組みして昨日の状況を思い出そうとした。
そうだ。
確か、ミッションシップが上から落ちてきたので、まずそっちをビームで撃った。
そのあとメリコに光線を浴びせてカンパニースーツを溶かして、
さらにそのあとサイコグラスが壊れたのだった。
鈴木は説明した。
「昨日、まずミッションシップをぼくのビームで撃ちました。メリコちゃんのサイコグラスが壊れたのはそのあとです。つまり先にミッションシップの自壊装置が壊れていた可能性があります。そういうことですよね、アマガさん!」
アマガの返事はなかった。
「ぐー……」
横でメリコが驚く。
「うあ! この人寝てる! 立ったまま!」
進常はアマガの腕を揺さぶった。
「ちょっと寝ないでよ! いまだいじなとこなんだから!」
「ん、おなかがいっぱいだったもので、つい寝てしまいましたわ」
起きたアマガに鈴木はもう一度説明する。
「メリコちゃんのミッションシップは残ってるんです。おそらく自壊装置が壊れたから。そんなふうにしてなんとか無傷のミッションシップを手に入れる方法はないですか」
アマガがあごに指を当てた。
「えぇっと、そうですね、自壊装置が働いてなくて状態よく機体が残っているなら、ここにある破片になったパーツも使って、飛べるように直せるかもしれません。わたくしサバイバルのための修理技能ありますので」
メリコは目を輝かせた。
「アマガすごい!」
鈴木も反射的に喜んだ。
ミッションシップが飛べるようになれば、こちらから攻めることができる。
次々とくる相手を待ち受けている必要はなくなるだろう。
戦うのは不本意だが、やるなら早く終わったほうがいい。
鈴木もアマガの技能に期待した。
「お願いします、アマガさん!」
進常だけは渋い顔で唇を尖らせた。
「じゃ、まずはウチのドア直してもらおうか。宇宙船に比べれば簡単だろ」
アマガは明るく返事する。
「はぁーい、承りましたぁー。おまかせくださぁーい」




