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欲するものは?

「事務所に備品を届けに行ったんです。

自分で運転して、1人でね。

事務所には中川さんだけおりました。

客は、おらんかった」

 

鈴子は語り始めた。

 

自然に語り手に目が行く。

 グレーの、もこっとした生地のスーツ。

今日は地味だと、思っていた。

 それが、しっかり見ると

 スーツのジャケットも

 パンツも

 リアルファー。

毛が巻いてるから多分ラム。


 こんな服を着ている人が世界に何人居るだろうかと

 ふと、思考が逸れる。 

 胸元の大粒のトパーズのペンダントも

 揃いの大きなイヤリングも

近くで見ればトパーズとダイヤモンドのコラポ。

裕福だとは知っているが

自分とは別世界の人と、改めて思うのだった。


「帰ろうとしたとき、車に乗ろうとしたときにな、見送りに出てきて、妙な事をいいはったんや」


「妙なこと? なんて、なんて言いましたんや。社長には?」

 薫がさらに身を乗り出す。


「あんな、こう言いましてん『あんた、今でも醜くはないが若いときは美しかったんやろ』って。うちは『はあ?』って答えたよ。あんた呼ばわれされ、驚いたのと、口調がいつもの中川や無かった」

「それで、それから?」

 薫は、

自分と鈴子のグラスに酒を足す。

 なんでだか、嬉々として。


「酔ってるのかと思った。こっそり酒飲んでたと。それなら気づかぬふりして、無かった事にしたろ、さっさと去ろうと思った。そんで車のドアを開けた。そしたらな、私の他に誰も居らんのに、誰かに喋り掛けてるねん」

 中川は空席の助手席に

 指をさして、こう言った。


……お前、退屈じゃないのか? 

お前の仕事なんか無いんじゃないか? 

へっ? 守ってる? 笑わせるな。

その女に、お前の保護が必要か? 

はは。そんなタマじゃない。

いつでも、

来るがいい。

お前に似合った仕事を与えてやる。

お前が存在する意味を

私が

教えてやる……。


「成る程なあ」

 薫は満足そう。

 

聖は一瞬で酔いが醒めるほどショック状態というのに……。

中川が誰に話しかけたのか、

聖には分かった。


昭和のスターJに似た、金髪で白いスーツを着た、

鈴子には見えないが自分はよく知っている

アレ、だ。

鈴子を守っている守護霊らしいモノだ。

中川はアレを

守護霊など必要では無さそうな(ちょっと同意)

 鈴子の元から自分の手下に勧誘した。

 

 そういう事だと想像出来た。

 同時に 

鈴子はアレの存在を知らない、と確認できた。

(誰もおらんのに喋り掛けた)

 と鈴子は言った。

 いつも側に居るのに

 見えてないのだ。


 今も、おそらく工房のドアの外に立っているだろうに

 鈴子は知らないのだ。

 

 聖は、中川の言動の謎を解くために

 自分が今、鈴子の守護霊Jの存在を

 話す必要があるのかと

 迷い頭は混乱していた。


 だが、聖が言い淀んでる間に

 

 鈴子の打ち明け話に、薫が

 これもまた思いも寄らない

 打ち明け話を、返した。

「社長、俺もな、いつやったか忘れたけど

 ……随分前に中川に妙な事、言われたんや」

「刑事はんも?……何を言われましたんや?」

「ハーレム、って言いよった」


「ハーレム?」

 鈴子と聖は声を揃えて聞き直した。

 あまりに突飛な言葉。

 ハーレムって?

 何だったっけ?


「特別な星の下に生まれてきた男や、望めばなんでも、たとえばハーレムでも手に入ると……中川は俺に言うたんや」

 面白くない冗談と受け止めたらしい。

 短く笑ってスルーした。

 

「帰り際、やってん。それも社長と一緒やろ。じゃあ、またと背中を向けた。その時に中川の呟きを聞いた」

 (こいつはハズレだな。どうやら金も名誉も女も、食い物程には欲さぬらしい)


「そう言われたのか」

 聖はちょっと笑いそうになる。

「うん。失礼やろ。まあ、当たってるけどな。 他人に言われたくないやん」


「刑事はんにも失礼な事言うたんやなあ。中川さんは心の病やったんやろうか」

 不可解な言動

 無差別殺人

 自殺

<心の病>を原因と見るのが普通だろう。

 

 聖には、違うと分かっていたが。

 





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