表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

勇者と魔王シリーズ=シャセイの勇者

作者: 藍上おかき

ある日仕事場で思いついたお話しです。

 元ネタとなったのは、もちろんぎっくりをやらかしたあの人なのですが、

 彼女はどうやら、ぎっくり腰をやらかした以外にも意外な経歴がありそこから着想を得て執筆しました。


 




 

 暗雲が大空を覆い、蒼くどこまでも広がるはずの空は真っ赤に燃えている。 悠久の時を燃えるような紅い色で染め上げ、まるで無限に続く夕焼けの空。


 はたからみれば、とても幻想的な空で、地上の人々が、一度は訪れてみたいというような幻想で芸術的な空模様なのであるが…………。残念なことに、ここは魔界と呼ばれる、地上より遥か地下の世界。


 空に届くような連なる山々は紅の大空をバックに色を失って影となりそびえる。


 むろん、真っ赤に焼けた大空でつくられた影もその存在は背景にしかならず、この景色を切り取り一枚の回がにぢあげるのであれば、その題名はズバリ、『魔 界』の二文字にしかならないだろう。


 

 当然のことだが、この魔界の所在が実際に地上の遥か下に存在するということでもないし、コインの表と裏、表側に地上があり裏側に魔界があるというわけではない。

   

 地上の真下に広がる魔界という表現は地上に住む人間達の比喩だ。


 正確に表すのであれば、鏡を合わせた合わせ鏡のどこか鏡の中の鏡の中の…………………………。どこかの世界。

 ひとことでいえば、合わせ鏡の世界。そして、人々はその世界のことを『異世界』と呼んでいる。




その日 魔王の居城に激震が走った。


 魔王といえば、勇者。魔王は勇者に敗れ華々しく散る存在であると同時に、魔王を倒すことのできない勇者は、逆に返り討ちにってしまうというのは定番と化している。


「魔王様ついに現れました」

「おおう、側近よ、ついに現れたか?」

「はい、200年ぶりの勇者です」


 「ふふんっ! 人間どもの送り込む勇者達のなんとひ弱なそんざいなのか、全く、今までにどれだけ余の手を煩わせたことか…………」


 

 魔王が座る玉座の前に駆け付け膝を付き頭をあげぬまま、表情を見せずに玉座に座る魔王へ報告するのは、魔王以下二第位の存在。側近だ。


 側近の役割は、魔王のお世話と、警護、そして第二位以下上位階級への命令及び、上位及び、上位以下階級のものからの報告を魔王へ伝達するというものだ


 そして今回ソンザイハがこうして 魔王の下へ報告に来たのは200年もの昔最期に葬った勇者並びに勇者一行を葬って以来の実に二百年ぶりの勇者の出現にかんする報告であった。



「して、側近よ、今回の勇者はいかがなものだ?」

「……………………………………………」


 魔王は勇者の出現に弾むような声をあげて質問するのだが、側近は口をつぐみ黙り込む。


 いつもならば、その時に出現した勇者の特徴を簡潔に述べ伝えるのだが、何故か耳まで顔を真っ赤にして口を開こうとしない。

 それに、よく見れば体が小刻みに震えているのがわかる。



 魔王はいつもとは違う様子の側近に対してもう一度側近に聞き直すのだが、側近はプルプルと振るえながらこたえようとしない。


「どうした、側近よ、今代の勇者はいかがなものだ?」

 

 魔王は先ほどと同じ質問を繰り返す。


「…………………………」


 だが、側近はなおもうつむいたまま、耳まで真っ赤にして身を震わせて答えようとしない。


 このような反応、当然ながら魔王にとって、なにかがあるということを察したたのであろう。いつもならば明確に答える側近の様子に魔王はいぶかしむ。


 「側近よ、もう一度聴く! 今だいの勇者はいかがなものだ?」



「………………」


 さすがの側近も三度も同じ質問をされ、答えないわけにはいかない。 これ以上の沈黙は魔王の気分を害するのは必至だ。


「Sya…………」


ようやく側近が重い口を開いたと思えばたったの一語。

 sya…………。しゃであろうか?


 魔王にとって、sya(しゃ)だけではわからるはずもなく眉根を寄せて腕を組む。

 とうとう、困り果てた魔王は玉座に背中を預け天井を預けた時だ。


 魔王の玉座の対面、正面の扉がーーバーン!ーー と勢いよくいよく開かれるとそこに現れたのはその場に似つかわしくない姿格好をした、青年が現れた! 


 『シャセイさせてくれ!』

 魔王が鎮座する玉座の間に扉を勢いよくバーン! と開き、そこに現れたのはその場に似つかわしくない恰好をした青年だ。

 

 しかも、魔王が鎮座する玉座する目の前まで怖じける素振りも見せずに堂々と歩みより、魔王が鎮座する玉座の前で彼はもう一度声高らかに大きな声で言った。


「シャセイさせてくれ!」


 その場に似つかわしくない恰好をした男の声が玉座の前で反響し響き渡る。

 ーーバタン!ーー


 魔王はその青年に興味を抱くと同時に そのものが相当な実力者でありてだれであることがわかった。

 ただの人間風情が、こんな魔界まで来て、さらには魔王城にまで乗り込み、そして魔王本人である魔王の前まで無傷でやってきたのだ。 そして目の前の魔王という恐怖の象徴であるものに対してさえ、怖じける素振りも、怯む素振りもなく声高らかに『シャセイさせてくれ!』 と言い放ったのである。


 さらに、特筆すべきは傍らにいる魔王城第二位の階級である側近をこの青年の放った『シャセイさせてくれ』という言葉で失神させたのだ。


 当然、言葉一つで側近を失神させるほどの実力者だ!魔王自身興味を抱かないはずがない。

 魔王は200年前以来よりも前に、己を討伐せんがためにきた数多の勇者というつわものを返り討ちにしてきたのだ。

 もちろんのことだが、 訪れる勇者達は諸々が弱かったわけではない。魔法や特殊能力をもちいる勇者に、精霊や女神に愛され聖剣や神器を承り必死になって挑んできた勇者達だ。弱いはずがない。


 魔王自身も満身創痍になりながらも諸々の勇者を屠り、返り討ちにしてきたのだ。

 無敗を誇る絶対王者の魔王。 そして、魔王の前に無傷で現れた場違いな青年に、魔王はこの者が今代の勇者だと推察する。


 彼は魔王に向かいシャセイさせてくれと叫んだこと、そして、側近がSYAのヒトコトで沈黙したことを考察するに側近が言いたかったのは、この青年ことであろうと思った。

 「シャセイの勇者というところか」

 

 魔王はひとり小声で呟きながら、その場でだらしなく倒れ、口から泡を吹き白目を向いている側近を一瞥しながら玉座に座ったままシャセイの勇者に応じる。


 「相手にとって不足はない。 よかろう、シャセイするがよい」

 

 魔王はシャセイの勇者の叫びを受け入れた。

 

 シャセイといえば、あれであろう? あれにきまっている。 しかもあれをあれして放出する行為のことだろう? 


 このシャセイの勇者のシャセイ…………、放出する威力が想像を超える威力と破壊力でビューっ!と放出され、魔界に来て行生きつづけ、さらにはこの魔王城へ乗り込み、無傷で玉座までたどり着いたのだ。

 シャセイの勇者! 否! ド変態勇者とでも言うべきか?


「貴様のシャセイ! みせてみよ!」


 魔王は、眼前のシャセイの勇者改めド変態勇者のシャセイに関心を寄せたのだ。


 このド変態勇者のシャセイがどんなものなのか?

 威力や破壊力がけ桁違いなのか、それともシャセイとともにあれから炎やイカズチも一緒に放出されるのか?

 このド変態勇者のシャセイ。

  

 しかしだ、魔王に向け、『シャセイさせてくれ』と叫んだ勇者はおのれの神器を露出させシャセイを行おうとせず、魔王から少し距離を取り、ところどころで立ち止まりながら熱い視線を向けてぐるぐると周回。


 「ここじゃだめだ! 外だ、外が良い! 外でシャセイさせてくれ!」


 自分の周りを周回し、絶好のシャセイポイントを探していたのだろうと魔王は期待していたのだが、このド変態勇者は、屋内ではなく、『外で』という要求。


 魔王はもちろんド変態勇者の要求にウム。 とヒトコトしゅこうすると同時に、魔王城中庭へと移動した。

 もちろん、考えてみればわかることだ。 ド変態勇者のシャセイがどれほどの威力と破壊力があるのか検討もつかないし、そのシャセイに炎やイカズチ等の魔法が混じっていようが、シャセイはシャセイだ。


 それだけの威力があるのならば、濃さもニオイも恐ろしい事になるのでは? 当然、そんな劣悪な環境では、魔王自身も ド変態勇者のシャセイをしっかりと見極めることができないとおもったからだ。

 

 

 草木が一本も生えていないような岩肌の地面は燃えるように赤く染まり、風も物音一つない開けた空間。 魔王とド変態勇者が魔王城の中庭へと移動する。


 「美しい、今までに見たことがない美しさだ、やはり、魔王という存在は夕焼けが似合う」




ーー申し訳ありません……。 魔王様、彼は巷では『シャセイの勇者と』 名を響かせ、行く先々で『シャセイさせてくれ』 と叫び、シャセイしていたそうです。 そして かれについた二つ名がシャセイの勇者と呼ばれていたのです。ーー側近か……、ーー


ーーああ、わかっている。 今、このド変態勇者とともに、中庭で相対している。 このド変態勇者の

シャセイがどんなものなのか、すごく興味があってな…………。ーー


 そんな、シャセイするまえの雰囲気を出すための口上なのか、魔王自身を褒めたたえる口上なのかはわからないがド変態勇者は玉座の間で、自分の回周りを周回したのと同じように周回していたそのとき、頭の中に側近の声が響く。


 念話というやつだ。


 失神した側近が念話で話しかけてくる。

 どうやら、魔王の周りを何度も周回するこのド変態勇者は魔王の推測通り、シャセイの勇者で間違いなかったようだ。



 「シャセイの勇者よ! 貴様のシャセイを見せてくれないならば、こちらからいくぞ!喰らえ!」



 自分の周りを何度も周回するこのド変態勇者がそろそろシャセイをみせてくれないかと魔王はしびれをきたし魔王は先制攻撃をしかけた。


 もちろん、全力ではないが、数々の勇者に致命傷を与えてきた一撃。 


 それを受けるのがただの人間や側近以下の配下が受ければ一瞬で蒸発してしまう一撃。 音も残像もなく放たれた一撃はシャセイの勇者を蒸発させることなく、そして傷一つ負わせることなく受け止められた。


 しかも魔王の先制攻撃である拳を受け止めたのは浅黒く染まった、元は肌色であったであろう細長い棒。一本の棒に自ら放った一撃が軽々と受け止められたことに魔王の口許が綻ぶ。


「シャセイの勇者よ! いざ、その力みせてみよ!」


「違うそうじゃない」「シャセイの勇者よ、シャセイをみせてみよ」


軽く受け止められた一撃に魔王は、このド変態勇者が相当な実力者であり、ツワモノだと判断し、世界を滅びに導かんとするような数々の魔法を放つ。


 太陽を連想させるような大火球にはじまり、相対しているシャセイの勇者を吹き飛ばすような爆風、全てを切り裂く舞い踊るような見えない光刃、漆黒の渦巻く火炎に包み込み、全てを包み込むと同時に完全に潰すか灰塵ときすか灰も消滅するような火炎の渦を呼びだしたりと地上では当然のこと、魔界ですら見られることもない魔法の数々の魔法を行使するが、シャセイの勇者には傷一つつけることも叶わず、代わりに剥き出しの岩場は黒く染まり、ところどころに巨大なクレーターまで発生している。


 しかもシャセイの勇者は、その場で微動だにせずその場でひざをつき、睨みつけるような熱い視線を放っていた。


「こうなれば!」


その瞬間、シャセイの勇者を中心に代爆発が発生、黒く焦げた岩肌も、穴だらけで見た目も汚い岩肌も全てが、すべてが綺麗に消滅。


中庭全体をえぐるような綺麗なクレーターが出来上がると同時に、バタリとその場に倒れ込んだのは、魔王ただひとり。


 そして、その中心では、全くの無傷、膝をついてなおも熱い視線を放つシャセイの勇者のすがたがそこにあった。


 

「違うんだ魔王、僕は君を描かせて欲しいんだ」


 「な……シャセイはシャセイでもそっちのシャセイか…………」


 どうやら、魔界の絶対王者であるはずの魔王は、シャセイの勇者のことを射精と間違えていたらしい。

 彼は、射精の勇者ではなく写生の勇者だったようだ。



 










 後の死海文書を開くと、魔王城の玉座には、女神を思わせるような美しさの魔王の絵が飾られ千年以上の月日が経っていてもそれは、傷も遜色も見受けられず、みるひとの魂を虜にするような絵画が展示されていたという記述が残っていた。


 

 

 

 

 


 

 


 


 

 

お読みいただきましてありがとうございます。


 dでも学校って場所には沢山の下ネタになりそうなものがありますよね。

 その代表格が、写生です。

  よくもまぁ、学校の人達は子供達にシャセイと連語させたものだと感心します。

 他にも、こうもんなど、随所にある、学校下ネタアルアルですね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ