第3話 レトロで近代的な町
「ここは特殊な場所にあるので町の近くまでこの“ポーター”と言う機械を使って転送します。」
光る床の上で僕達にそう説明したのは薄い茶だった髪を黒くし角を特殊な魔法で隠したケルビィさんだった。
本人曰くあまり目立ちたく無いのだそう、
この世界ではまだケルビィさん以外、異世界の人と出会っていないけど割りと角を持ってたりする人間は少ないのだろうか?
そんなことを考えている内に辺りの景色が変わり、少し遠くに大きな壁で囲まれた町が見えた。
「ここはガイヴス帝国に属する商業都市パルトです。まぁ細かい国や町、ダンジョンの位置と関係の説明は帰ってからにして、とりあえずここでは多くの商人が行き交っているので大抵の物は手に入れる事が出来ます。
そしてここには“ギルド”もあるので取り敢えず最初はそこに向かいましょう。」
「あの、ギルドってなんですか?」
「ギルドでは魔物の討伐や捕獲、薬の材料調達、要人の護衛と言った仕事の斡旋を行っています。また今回の目的でもありますが、ギルドに登録することで桜さん達のようなどの国にも属していない人の身分証明書を発行する事が出来ます。」
「なるほど、ギルドについては分かりました。…あと全く別のことなんですけど質問いいですか?」
「ええ、構いませんよ。なんでしょうか?」
「説明してもらってる最中に普通に門番がいるところを素通りして町に入りましたけど…その、検問とかってないんですか?」
「…もう終わりましたよ?」
「…え…いつの間に?」
「先ほど門にはセンサーがあるのでそれで私の情報は向こうに入っているはずです。あと、あなた達のことは私が既に連れて来ると連絡を入れているので問題ありません。」
「センサー…見た目はそんなに新しいものでもなさそうなのに…」
桜さんが驚くのも無理はない。さっきの壁といいここの建物といい、センサーが付いていると説明されても信じられないくらいレトロな見た目だった。
「確かに場所によってはビルなど近代的な建物ばかり並ぶ所もありますが、ここはこの景観を壊さない様に外装はあまり建て替えたりせず魔法で中を広げたりしています。
さぁ目的地に着いたことですし、その事については実際に中を見て実感してもらいましょう。」
そう言われ周りより一際大きな建物に入るとその見た目より遥かに広い空間と多くの人で中は賑わっていた。
ケルビィさんは奥のカウンターでその反対側にいる職員と僕達の身分証明書を発行する手続きをしてくれた。
「これから身分証明書を発行するにあたり、あなた達には個別で検査を受けて貰います。私は少し用事があるのであとは担当の職員の方にお願いしています。
身分証明書の発行が終わる頃には迎えに来ますので、もし早く終わったらこの建物の右側に飲食スペースがあるので昼食をとっておいてください。」
お弁当を渡しどこかへ行ったケルビィさんと入れ替わりで二人のギルド職員が来て僕達は別々の部屋に向かった。