そして聖女は人を救った―聖女戦記―
「おお、異界から来たりし聖女よ、どうか、どうか我らを救いたまえ」
「ふむ?」
魔族に襲われ、もはや我が王国は風前の灯火。魔王に率いられた魔族は強く、王国の勇敢なる戦士達は次々と倒された。
もはや滅ぶしかないのか、藁にもすがる思いで王国に伝わる秘術を行う。王城の中に光の柱が立つ。
「おぉ……」
光が消えると、魔方陣の中には見たことも無い衣服に身を包む一人の女が立っていた。
「聖女よ、魔族の脅威から私たちを救いたまえ」
「ふむ、やれるだけやってみようか」
聖女様は頼もしく頷き、我が王国の現状を見て回った。
「貴様ら……、これで本気で戦っているつもりか?」
「え?」
そして聖女様は我が王国の軍を立て直すところから始められた。騎士に魔術師を集め、聖女様が自ら訓練を行った。
「クズが! その程度でへばるな! このカスが!」
「ぐ、うぅ、愚弄するか聖女よ」
「愚弄? 甘ったれるな! それでも騎士か! いいや騎士ならば民を守る為に立ち上がる筈。ならば貴様は騎士では無い! ただのウジ虫だ!」
「わ、私は騎士だ。王国の騎士だ!」
「いいや貴様はウジ虫だ! 騎士だというならば立ち上がり剣をとれ! それができなければ貴様はクソにたかるウジ虫だ! 泣き叫びながら魔族に踏み潰されてしまえ!」
「おおお! このクソ聖女がああ!」
「いいぞ! その目だ! 戦いは殺意だ! たとえ手足を失おうとも相手に食らいつけ! 喉に噛みつけ! 耳を噛みちぎれ!」
こうして聖女様の苛烈なる指導のもと、我々は異世界の戦争の仕方というものを学んでいった。
そして王国の反撃の狼煙が上がる。
「聖女が問う。あれに見えるはなんだ?」
「奴等は魔族! 同胞の仇! 人類の怨敵!」
「ならば貴様らのすることは?」
「殺せ! 殺せ! 魔族を殺せ!」
「そうだ! 人を敵に回したことを後悔させてやれ! 最も無惨に殺せ! この地を奴等の死体で埋めろ! ここに地獄を作れ!」
「オオオオオ!!」
聖女様に鍛えられた我々は生まれ変わったように強くなった。魔族を押し返し戦況はひっくり返り、今は我々が優位に立っている。
まだ戦争は終わっていないが我が王国は滅びを免れた。
こうして聖女様のお力で我々は救われた。
聖女様のもとに集うのは死を怖れぬ一騎当千。もはや我が王国に魔族に怯える者は一人もいない。
聖女様と共に戦えることは誉れ。
偉大なる聖女様に栄光あれ。
「ヒャッハー! 聖女様に水と食料を差し出せえ!」
「魔族は消毒だあ!」
「聖女様に逆らう奴は皆殺しだ!!」