Epilogue
「おーっす! 祈―っ。久しぶりー!!」
「あ、奈々子ちゃん! こっちだよ!」
ある春の日、大学生になった祈は、奈々子と久しぶりに二人揃って出かけようとしていた。
「最近どう?」
「最近か…もうレポート書くのが大変で大変で」
「あー分かる。私もそんな感じだよ」
何の変哲もない会話をしながら、二人は街を歩いていく。そんな中、奈々子が祈の首元を覗き込んできた。
「え、何、どうしたの?」
「それさ、結構前から持ってるよね?」
「それって…ペンダントの事?」
そう聞くと奈々子は「うん」と言った。その後、祈はペンダントをじっと見つめる。
「高校生の時に、いつの間にか持っていたって言ってましたよね?」
「うん、そう。こんなの買った覚えないんだけどな…」
祈は初めてこれを見つけた時困惑した。見つけた後すぐにネットでどこの商品なのか調べたのだが、これといったものが全く見つからず、結局正体も掴めなかったのだ。
「うーん…でも、何て言うんだろ」
「どしたの?」
「これ着けてると、なんか、うまく言えないけど、誰かが守ってくれているような…そんな気がするの…」
「それってお守りみたいな感じ?」
「うん、そんな感じ」
しばらく歩いていくと、二人は目的地の一つのカフェに到着した。高校生の時もよく通っていたのだ。祈と奈々子と…。
「…あれ?」
祈はまた拍子抜けしたような声を出したので、奈々子はビクッとした。
「ああ、ごめんね。奈々子ちゃん」
「いや、いいけどさ。今日マジでどうしたの…」
「なんでもないよ。大丈夫」
「いや、全然大丈夫じゃないでしょ。今度は何があったの?」
祈はしばらく考えた後、空っぽになった左隣を見ながら言った。
「なんか…物足りない気がする」
「物足りないって?」
「私と奈々子ちゃんの他にも、もう一人いたような気がしたんだけど…気のせいかな?」
「祈、今日熱でもある?」
さすがの奈々子も怪訝そうな顔で祈を見た。まあ、こういう表情をされるのは、祈は百も承知だったが。
「あーごめん、祈」
「ううん。こっちこそ、本当にごめん。…疲れてるのかな」
「まあ、大学生活始まったばっかで慣れないことも多いし…そうなんじゃない?」
「やっぱりそうなのかな」
「こういう時はさ、甘い物でも食べてリフレッシュしようよ」
奈々子が先程とは打って変わって笑顔でそう言ったので、祈も笑顔で「そうだね」と答えた。
今日も街は、いつもと変わらない。