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グルーバー伯爵家にて

「お時間をいただきありがとうございます」


ここ数日で顔色や髪の毛や生気のいろいろなものが薄くなった父と、私と、ニヤニヤ笑いがとまらないルカの3人でグルーバー伯爵家を訪ねた。ルカは馬車から下りるときにニヤニヤ笑いは引っ込めていた。

さすがに私が跡継ぎと言っても、現在のスウェンソン伯爵家の当主は父だからこういった場には父が必要だ。丁度良く悲壮感が漂ってるし、同情票が買えないだろうか。


「いやぁ、災難でしたねぇ……いやはや、何と言えばいいのか……」


グルーバー伯爵家の当主は普通に良い人だった。私はあんまり顔を合わせたことはなかったけど、人の好い感じがにじみ出ている。姉の頭の悪さがバレる前にうちのお父様が頑張って嫁ぎ先を探したんだけど、それに引っかかっちゃってるからなぁ。まぁグルーバー伯爵家もその時は借金があって、うちがお金を貸したりしたんだよね。ついでに姉を押し付けたんだけどね。その時の関係はWIN-WINではあったかな?

問題は当主の隣で何を考えているのか分からない、姉の婚約者だったエリオット・グルーバーの方だ。


「多大なるご迷惑をおかけして大変申し訳ございません」


「いやいや、うちだって借金を」


「いや……うちの娘がなんてことを……なんとお詫びを申し上げれば……」


「いやいやいや」


当主同士の話を聞いているが、さっきからこんな感じで何も前に進まない。

父は貴族らしい腹芸はそこそこできるけど、この状況だから難しい。グルーバー伯爵家当主は悪い意味でもいい意味でも貴族らしくない。こりゃあ、投資に失敗して借金できるよね……。


「父上。これでは話が進みません」


不毛な会話に割って入ったのは、さっきから何を考えているのか分からないエリオット・グルーバーだった。ちなみにエリオットは……なんというか濃い目の顔立ちなのだ。整っているが、眉は太くて肌も浅黒い。まぁ何が言いたいかというと、姉の好みの真逆なのだ。そんなエリオットの幼少期は姉の好みど真ん中の天使の如き可愛さだったのだが、成長して濃くなったのだ。

姉の駆け落ちの原因はこの辺りにもあるのかな。もちろん、姉のやったことは許されることじゃないけど。


「ペネロピー嬢が駆け落ちしたことが社交界に知られれば僕は完全に笑い者だ。一体、どう償っていただけるんですか?」


思ったよりもエリオットは直球男だった。真顔で言ってるのが怖いくらいで。


「エリオット!」


「慰謝料なのですが……」


当主2人の声が重なり……どちらも気まずげに口を開かず場を沈黙が支配した。


「ええっと……我が家からグルーバー伯爵家にお貸ししたお金についての返済はなしで」


父が顔色を悪くしながら掠れた声を出す。貸したお金は返さなくてOKよということね。


「まさか、それだけですか?」


エリオットが太い眉を顰めている。貸したお金もそんな小さい額じゃないんだけど。

にしてもエリオットはいちいち要求が直球だな。


「もちろん、追加で慰謝料を支払いますよね?」


当主があわあわしている横で、エリオットはまたも直球を投げてくる。うちの父を脅すとか、上品になじって父から慰謝料はこのくらいでという言葉を引き出すとか、もうちょい貴族らしいやり方しないのかなー。お金目当てをあまり前面に押し出さない方が……。

あら、お父様の顔色が白くなってる。そろそろ助け船ださないと。


「あ、その前に別件で1つお話があります。王太子殿下からなのですが」


さっきまで空気に徹していたルカがここで声を上げた。

それを合図に私は当主とエリオットの前に紙を差し出す。



いつもありがとうございます。

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