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姉がやらかしただけなのに

短く終わる予定。

どうしても駆け落ちものが書いてみたくなってしまった……


タイトルは変更の可能性あり。

やらかした。

まさかこんな形で、とは。

別に悲しいわけではない。ただ、見抜けなかったことが少し悔しいのだ。


朝から屋敷は上を下への大騒ぎ。


「ペネロピーの行き先に心当たりはないのか!?」


「全くありません、お父様」


あの姉の頭の中なんて一生かかっても理解できない。もちろん行き先なんて分からない。


「じゃ、じゃあ……ペネロピーの友人達の屋敷に行って泊まっていないか聞こう! そ、そうだ! きっと遊びに行って遅くなって泊まったに違いない!」


父はクシャクシャに丸めた便せんを床に投げつけ、少し肌寒い朝だというのに顔中に汗をかいている。

私は黙って投げられた便せんを拾い、破れないよう丁寧に広げる。せっかくの証拠なのに父はクシャクシャにするとは何を考えているのか……。


「なるほど。では、晩餐を家族でとったあとにお姉さまは使用人の誰にも見つからずにお友達のお屋敷にお出かけされたという事ですか? しかも玄関からではなく窓から? 馬車も使わずに?」


現実を受け入れたくない様子の父に冷たい視線を投げながら私は問う。現実逃避しても現実は変わらない。昨日の晩餐を家族でとったことも覚えていないなんてお父様はもうボケが始まったのかしら。


「そ、そうだ!」


ちなみに母は残された便せんを見て卒倒してしまったので、部屋に寝かせてある。

たまに卒倒するスキルも貴族には必要だろうが(体調不良を装うときとか、嫌な婚約を体が弱いと装って回避したい時など)、今この状況で発揮されては迷惑なことこの上ない。


「でも、お父様。この便せんには『駆け落ちします、探さないでください』と書いてありますが……お姉さまの字で間違いないです。それに綴りも短い文章なのに2箇所間違えています。これは間違いなくお姉さまが書いたものです。字も少し汚いですし」


「あぁぁぁ!」


事実を指摘すると父は後退し始めた頭をかきむしりながらしゃがみ込む。


「お父様。貴重な髪の毛が抜けてしまいますよ」


育毛に良いという苦いお茶を飲んでいる努力が水の泡ですよ。私から見たらあれは効果がないんじゃないかと思うけど。


「それどころではない! 早く、早く見つけなければ! と、とりあえず屋敷にいないなら友人たちの屋敷に使いをやってペネロピーがいないか聞こう! きっと誰かの屋敷にまだいるか、匿われているに違いない!」


「あら、お父様。そんなことをしたらペネロペお姉さまが駆け落ちした、あるいはいなくなったとバレますわよ? よろしいのですか? それにお姉さまを快く泊めてくれるような同性のご友人はいないと思います」


「……じゃあ、どうしろと言うのだ!」


「朝一番で婚姻届を提出されていたらまずいですから、ひとまず役所で確認してはいかがでしょう? まぁ提出した後だったら連れ戻すのはムリですけど」


「誰か! 役所まで行って確認してきてくれ! 書類を提出していても無理矢理離縁させればいい!」


「あら、お父様。結婚の際に必要な取り寄せる書類にお姉さまがどこそこのだれそれと結婚して離縁したと×がついていることを明記されるのですよ? 連れ戻して婚約者と結婚させようにもグルーバー伯爵家の方々にどう説明するのですか? あ、書類の偽造は犯罪ですから無理です」


「くっ……じゃあ、フランシーヌ! ペネロピーが帰ってこない場合はお前がペネロピーの婚約者と結婚しろ!」


「無理ですわ、お父様。お忘れとは嘆かわしいですが、私には婚約者がいます。しかもお姉さまの婚約者である、エリオット・グルーバー様は伯爵家の嫡男でいらっしゃるのでうちに婿入りはできません。元々、お姉さまがあちらに嫁入り予定だったのですから」


あ、過去形で喋っちゃった。それに私は姉の婚約者なんて大嫌いだ。


お父様たちはペネロピーと呼んでいる、私より2つ年上のペネロペお姉さまには婚約者がいるが、便せんから推察するに姉は他の人と駆け落ちしたようだ。

いまだに白馬の王子様を信じているかなり頭の悪い姉は、なんとカーテンを取り外して結び、それを使って2階の窓から出て行ったようだ。そこに関してだけは姉を称賛したい。私には無理だ。他は……うん、特に称賛すべきところはない。別に姉が帰ってこなくても私はいいけれど、駆け落ちしたと知られるのは家にとって恐ろしい醜聞だし非常にマズイ。

姉がグルーバー伯爵家に嫁入りして、私がこのスウェンソン伯爵家を継ぐことになっている……のだけれど。


「あぁ……ペネロピーが見つからなかったら……見つかっても既に入籍済ならグルーバー伯爵家には何と説明すれば……慰謝料でもう家は終わりだ……社交界の笑い者だ……いっそやっぱり書類の偽造を……」


お父様、本当にハプニングに弱いですね……執事のスカイの方が青い顔をしながらまだ冷静ですよ。


「グルーバー伯爵家に関しては私に任せてもらえます? 何とかなると思います」


「やぁ、フラン。呼んでるって聞いたから来たよ」


ノックもせず入ってきたのは笑顔の私の婚約者だった。ノックはして欲しい、心臓に悪い。それになんでこんなに早く来るんだ。さっき、相談があるから明日か明後日にでも訪ねていいかという手紙を送ったはずだけど。


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