06
ゴミを体現したような存在の僕と違い、学級委員ちゃんは容姿端麗、文武両道、温厚(え?)であるということで、クラスメイトからの信頼も厚い。当然、僕の隣にいる人間として相応しくない。きっと誰しもそう思っている。
その点、この学校の図書室は素晴らしい。
いつ来てもガラガラ。存在意義を疑うレベルだ。昼休みこそ受付に図書委員が座っているが、放課後は利用者が自分で貸し出し手続きをすることになっているので、受付も無人。
図書室は僕らの貸切となり、「お前が何で学級委員ちゃんの近くにいるんだよ、調子のんな」と言う人もいない訳だ。
わあい。
僕をここまで半ば強引に連れてきた学級委員ちゃんが、空いている椅子に座った。まあ全部空いてるわけだけど。僕は念のため二つ離れた椅子に座る。
「隣座って」
ひいい。
僕が膝をガタガタさせながら隣に座ると、学級委員ちゃんは小さくため息をついた。
「別に取って食おうとしてるわけじゃないから。波木くん、よくそんな様子で学級委員できてるね」
やりたくてやってんじゃねえんだよ!
「……いや……仕方なくやってるだけ……」
「ああ、そういえばそうだったね」
「……」
「何でゲーム持ってきたの?」
「……いや、その、すきだから……」
「そう」
結果的に放課後が潰されてゲームの時間は減ったわけだ。校則破りの対価。
学級委員ちゃんは鞄を開けると次々に問題集と参考書を取り出す。今授業使ってる問題集の他に、応用問題集、2年生用のものも。え。
「これ教えて」
学級委員ちゃんは当然のように来年履修する範囲の問題集を広げた。いやわかんねえよ。
「この問題」
「……えっ……いや……わかんない……これ2年生の内容だから……」
「ほんとに?」
逆になぜ僕が既に勉強したと思っていたのか。
学級委員ちゃんが僕の顔をまじまじと見る。僕は目を逸らして窓の方に向けた。
ふーむ、と学級委員ちゃんが小さく唸る。
「じゃあこれは明日教えて。勉強しといてね」
「は?」
「ゲーム」
「……いや、でもいくらなんでも」
「あ、教科書は貸してあげるから」
そういう問題じゃない。想像を絶する横暴さ。何なんだ。今更ながらにゲームを持ってきたのを後悔する。なお、全ては画面を覗いた学級委員ちゃんが悪い。普通覗くか?
「今日はこっち教えて」
1年の問題集を開く。まあこっちなら。
◆◆◆
二時間弱経ち日がかなり傾いたところで、ようやく学級委員ちゃんは問題集を閉じた。教えていた僕まで頭が良くなった気がする。
「今日はここまででいいよ、ありがと」
微笑をたたえてお礼を言った学級委員ちゃんにビビった僕は短く、おう、と応えた。
「……じゃあこれで」
図書室のドアを開く。
「待って」
学級委員ちゃんはあわてて筆箱をしまう。
「靴箱まで一緒に行こ」
「あ、うん」
学級委員ちゃんの斜め後ろ1メートルの距離を維持しつつ歩き、僕は靴箱まで行った。会話はなかった。
「じゃあこれで」
「うん、またね。あ、波木くんってさ」
学級委員ちゃんが靴紐を結びながら言う。
「自分のテストの順位とか知ってる?」
知らされてないな。
「知らない」
学級委員ちゃんはぽかんとした後、今日一大きくため息をついた。
「ムカつく!でも今日はありがと!これからもよろしく!」




