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何をやってもうまくいかない。
なのに感情はついてこなくて、後から爆発して、今更!?ってときに苦しむ。
悲しいはずなのに涙は出ない。
不器用なのか器用なのかすらわからない。
なのに周りは私のことを努力家だと評価する。
違うんだよ本当はやめたいんだよ。
でも親や先生が喜ぶからやめられないんだよ。
周りは私を変わりものだという。
違うんだよ本当はもっとみんなみたいになりたいんだよ。
みんな私をわがままだって言わないで、
私は、私は、私は、私は、私は、私は、私は
、私は、私は、私は、私は、私は、
「死にたいんです」
そうポツリと呟いた少女の顔には表情が無かった。高校3年生という年齢の割に幼く見えるその姿は緩いパーカーを羽織り、帽子を被っているせいもありどこか疲れている様だった。
何にも期待していないまるでそう言う訴えかける視線は目の前の高齢の僅かに禿げた医者に向けられていた。
彼女の母親は廊下で何を思っているのだろうか。あんなに気にしていた母親の評価すら今は気にならない。心の底から望むのは[死]という永遠の終わりだけ。
小さな体を猫背にして更に丸めると、目からポタポタと涙が垂れていた。しかし、少女には何も感情を感ておらず、少女自身なぜ涙が出ているのかわからなかった。
先程受けたテスト用紙を医師がペンでなぞりながら目を通している。それを見つめる時間は永遠のようにも一瞬のようにも感じた。
「白井夏美さん、あなたは重度のASDとADHD、そして鬱です」
「・・・えーえす・・でぃー?」
鬱なことは納得ができた。しかし少女、夏美には聞いたことのない病名にこの日初めてやや垂れている目を大きくした。
「発達障害って聞いたことあるかな?」
医師の口から出る言葉に夏美は目を更に大きくすると、かすかに体が震えた。
私が発達障害?違う私は障害なんて持ってない。違うんだよ。なにかの間違いなんだよ。だって17年間ふつうに生きて来たんだよ?何言ってんの?ねぇ?
この震えが怒りなのか悲しみなのかは分からなかったが、夏美は今まで生きてきた。17年という人生を振り返りながら懸命に言う言葉を考えた。
「私障害なんて持ってない」
夏美と目を合わせながら医師は口を開かず夏美の次の言葉を待った。
「私は人と合わせることができた。進学校にだって通ってる。体だって普通です。どこも悪くなんかない」
まるで恨みを込めるかのように噛み締めながら言うと医師は穏やかな顔をして口を開いた。
「"合わせることができたんだね"それは過剰適応って言うんだよ。
白井さんは今まで普通になるために人の何倍も何十倍も努力してきたんじゃないかな?
凄いね。頑張ってきたね。でももう普通に合わせることなんてないんだよ。自分のペースの生き方を探していこう」
そう言ってこちらを見ている医師に、なぜかホッとしている自分がいることに気づいた夏美は涙を流しながら被っていた帽子を頭に押し付けた。
私は今度は自分が不出来な理由を障害のせいにするのか、死ねない自分が情けない。
そう思いながら涙を流し続けた。
母親が診察室に入ってくる音が聞こえた。