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 あれから暫く美しい水晶の花を見たり、咲いている横を歩いたりした。そして陽が傾き始めたのでお城に戻ってきた私たち。


「救世主様。今日は私にお付き合いくださりありがとうございます。とても有意義で楽しい時間でした」


「こちらこそ素敵な場所へ連れていってくださってありがとうございました。私もとても楽しかったです」


 ドウマンは柔らかく笑ったあと、少し照れたように「また一緒に散歩をしていただけますか」と言った。


「もちろんです。一緒に散歩しましょう」


「ありがとうございます。それでは、また」


「はい。今日は本当にありがとうございました」


 去っていくドウマンを見送り終え姿が見えなくなってから、団長さん探しのために走り出す。アリシアさんとエミリオはずっとそばにいてくれているし、フォールマとユーリのいる場所もわかる。だけど団長さんは団長だからいろいろな人に呼ばれてどこにいるのかわからない。それに団長さんは忙しいから大丈夫そうならドウマンについてお話がしたい。


 外はあちこち走り回って、室内は競歩の如く歩くこと一時間。やっと私は団長さんの後ろ姿を発見した。



    ***



 あのあと団長さんに時間は大丈夫か確認したところ大丈夫だと返事を頂いたので、今日のドウマンについて話す。そしてドウマンの性格について聞いてみる。


「お話を聞く限り、先ほど救世主殿が共に過ごしたドウマンが私の知るドウマンです」


「そうですか」


 団長さんの言葉に頷きながら、眉間に皺を寄せてしまう。


 それじゃあ最初のほうで会ったドウマンはなんだったのだろう。もしかして何かの呪いとか怪しい術とかにかかっていたのだろうか。それが何かの拍子に解けて今日に至ったとか。


「……救世主殿」


「はい」


「ドウマンは……」


「ドウマンは?」


「その、ドウマンは……」


 歯切れ悪く視線をさまよわせる団長さん。私はじっと団長さんの言葉を待つ。そして意を決したように団長さんは息を吸って口を開いた。


「ドウマンは、救世主殿に恋をしています……!」


「へ?」


「ですから、ドウマンは救世主殿に恋をしているのです」


「恋、ですか……?」


「そうです。恋をしているのです」


「その、いつ頃からとか知っていますか?」


「救世主殿がこの世界に喚び出されたその日からです」


「え……本当ですか?」


「本当です」


 団長さんの言葉にぱちぱちと瞬きをする。そして納得する。


 なるほど。だから最初に会ったときから私に対して好感度高めだったのか。それなら私の胸の下に腕を回してきたのも、頬にキスしてきたのも納得はする……するけど、それとこれとは別の話である。恋をしているから何をしてもいいわけではない。実際された私は嫌悪しか抱かなかったし。


「救世主殿は気づいていなかったのですか?」


「まったく気づいてなかったですね。そういう考えに至りませんでした」


「てっきり私は気づいているのだと思っていたのですが……」


「まあ、これが元の世界でなら気づけたかもしれません。ただここでそういう想いに気づけるだけの余裕がなかったので、まったく考えもしませんでした」


「そうですか」


「はい。あ、でも最近はシーヴァさんたちのおかげで心に余裕が出てきました」


「っ……それはよかったです。少しでも救世主殿の支えになれているのなら私は嬉しい」


 団長さんの嬉しそうな表情に私も嬉しくなって笑顔になる。


「シーヴァさん。ありがとうございます。忙しいのに私の話を聞いてくれて」


「いいえ。私が救世主殿と話がしたいのです。いつでも声をおかけください」


「ありがとうございます。あ、でも疲れているときは断ってくださいね。時間や日を改めますので」


「はい。お気遣いありがとうございます」


 そのあとも和やかな雰囲気で話をしていると、団長さんが騎士団の人に呼ばれたので別れた。そして部屋に戻ってきた私は椅子に座り綺麗な天井を見つめる。


「恋、か……」


 私にはわからない気持ちだ。まだ誰にも恋をしたことがないから。


「……」


 悲しかったり苦しくて痛い。だけど幸せで嬉しくてきゅんとする。

 恋とは難しくて、でもわかりやすい。

 生まれたてのその想いは恋ではなく、興味。それを育てていくと好きになって恋になる。


 恋愛ものが大好きな友人が言っていた言葉が頭の中で音となり聞こえてくる。


 あのときもわからなかったけど、今もわからない。ただ言えるのは、ドウマンと向き合うのは大変かもしれない。


 私がドウマンの想いには応えられないから。

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