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 あれから三時間ほど過ぎた今、ユーリはぐっすりと眠っているところ。そして私はベッドの横にある椅子に座って、団長さんが持ってきてくれた本を読んでいる。ちなみに団長さんはユーリに机を借りて読書中だ。


「……」


 ユーリの寝息が静かすぎて大丈夫なのか心配になるから、ふとしたときに呼吸しているのか確認してしまう。それでちゃんと呼吸しているから安心して読書に戻るを繰り返している。


 ぐう、と大きすぎず小さすぎずの微妙な音がお腹から鳴った。咄嗟に本を閉じて抱えるようにお腹にあてる。そして机側に座っている団長さんを見る。


「シーヴァさん……肩揺れてます」


「ふ、申し訳ありません。あまりにも可愛らしい音だと思ったら」


「いいですよ。ユーリが起きないくらいの大きさなら笑ってくださっても」


 口元を手で覆い下を向いて、かたかたと肩を振るわせ続ける団長さん。私は恥ずかしさから顔が熱い。


「もうお昼が近いですからね」


「そうですね。私、何か作ってきますね」


「私も一緒に行きます」


「いえ、シーヴァさんはここにいてください。もしユーリが起きたとき誰もいないと不安だと思うので」


「ですが、お一人で全員分の食事を運ぶのは大変ではないですか」


「大丈夫ですよ。私のことは気にせず待っていてください。ユーリのことお願いします」


「はい。お任せを」


 私はユーリを起こさないように静かに部屋から出た。


 この世界にもお米は存在してるから、お粥や重湯は作れる。だけどユーリの生活環境を考えると、あんまりお粥とか食べたことないかもしれない。さて、何を作ろう。



    ***



 広い調理場で一人料理を作る私。そんな私は今あの狸国王に感謝している。


 私があの狸国王の何に感謝しているのか。それはお城にある調理場や食材を自由に使っていいと言ってくれたことだ。それだけは感謝している。あとは憎たらしいけど。


「おかげでこういうときに困らなくていいから楽だ……」


 できるだけ手際よくユーリと団長さん、それから自分の分を作っていく。


 私はお握りで団長さんにはサンドイッチを。それからユーリには卵粥とスープを作った。どっちが食べやすいかわからなかったから。


「……」


 んー。ただ私は一つ失敗した。それはユーリの嫌いなものがわからないということ。そのことに作り終わってから気づいてしまった。私の馬鹿。


「これは私の失敗だ。もしユーリが食べられないようなら何が食べたいか確認して作り直せばいいだけ。残ったものは私の夕食にすれば大丈夫だし」


 大きく頷き、使った食材をいつも通りメモ用紙に書きボードに貼る。これはここを使うときに料理長さんたちと決めたルールだ。あとは料理長さんたちが使われると困る食材は大きな冷蔵庫に入っているそうなので、私は料理長さんたちの賄い用の小さな冷蔵庫のほうの食材を使っている。


「よし!」


 貼れたのを確認したら、卵粥とスープの乗ったお盆を持つ。そしてユーリの部屋へと向かう。たどり着いたら中にいる団長さんにお願いして中へと入れてもらった。


「ユーリは起きましたか?」


「いいえ。ぐっすりと眠っています」


「そうですか。先にユーリのご飯を持ってきたので、もし起きたら用意をお願いします。私は、シーヴァさんと自分のご飯を取ってくるので」


「救世主様……僕、起きてる」


「あ、おはよう。体調はどう?」


 体を起こしたユーリに近づき問いかけると、とろんとしたまだ怠さが残る目が私を映す。


「だるい、かな……」


 ぐらっと倒れるユーリの体を咄嗟に支える。触れたユーリの体はとても熱かった。熱がさっきよりも上がっているのがわかる。


「寒くない?」


「少しだけ寒いかな」


「重くなりすぎないようにお布団増やすね」


「うん。ありがとう。でも、その前にご飯食べたい。救世主様が作ってくれたんでしょ」


 お布団を足そうとした私の手首を緩く掴むユーリはそう言った。


「気持ち悪さとかない? あと嫌いな食べ物とか……」


「ない。ないよ。大丈夫。なんでも食べれるから、ご飯ちょうだい」


 甘えるような声色でそう言われ、手首を掴むユーリの手に触れ外す。そのとき少し寂しそうで、失礼なこととは承知で頭を撫でる。するとすり寄る猫のように頭を私の手に押しつけた。


「ご飯持ってくるから、ちょっと待っててね」


「……うん」


「救世主殿。私が料理を取ってきますね」


「ありがとうございます」


「いえ。今のユーリなら大丈夫でしょうから」


 そう小さな声で団長さんは言った。


「すぐに戻りますので」


「はい。すみません。お願いします」


 団長さんを見送り、すぐにお盆を持ってサイドチェストに置く。そしてお椀に卵粥を入れる。


「一人で食べられる?」


「無理って言ったら、食べさせてくれる……?」


「うん」


「じゃあ、一人じゃ食べれない」


 ユーリはそう言って、どことなく嬉しそうにしていた。

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