8 ナナ、ドラゴンと戦う!
今回は少し長くなります。よろしくお願いします。
8 ナナ、ドラゴンと戦う!
わたしが戦うことを伝えると、ズズメーノは、戦いの条件を告げた:
「攻撃魔法は禁止じゃ」
「それは卑怯です。ナナたんは魔法がなかったらただの少女です」
「ナナの攻撃魔法は強力すぎて周囲の者たちを巻き込むわ」
「そ、その通りですが、それではナナたんに不利すぎます」
「このルールが飲めないなら、わらわは戦わず、城を攻撃するわ」
「そ、そんな・・・」
わたしの後ろで不利を訴えるよこたんに、わたしは言葉をかける。
「よこたん、大丈夫だよ。わたし、勝つから」
わたしがイメージしたのは、有名なスマブラの格闘家であるドラゴンというキャラクターだ。ドラゴンVSドラゴンなので、ちょうど良いキャラだ。手から魔法の炎を出せるが、攻撃魔法は禁止なので、今回は封印となる。
格闘家のドラゴンのキャラの動きを脳内で繰り返す。
それから息を吐きだしながら、ゆっくりとズズメーノに近づく。その間に、防御障壁の魔法を全身にかけ、次に身体強化アップを唱えた。
そして、一気に地面を蹴り、前に駆け出した。
ズズメーノもわたしの動きを読んでいた。スズメーノの巨大な右腕とわたしの小さな左腕がぶつかり合う。バシーンと空間を引き裂くような音が響く。
強化魔法の効果で、引き分けである。
拳を引くと同時に、二人とも後方に離れる。
ズズメーノが多分、薄い笑みを零す。ドラゴンなので詳しい表情までは読み取れない。
「ナナよ、予想以上にやるわね。わらわと殴り合って無事だったものは、ドラゴン族以外では久しぶりだわ」
どうやら喜んでいるようだ。
わたしの中での格闘家のイメージをもう一度、繰り繰り返す。そして、思い出した。あのセリフを。
「ドラゴンアッパーを破れない限り、あなたの勝利はない」
再び駆け出し、ズズメーノに向けて今度は右腕を突き出す。
「また同じ手を」
ズズメーノは左腕を伸ばしてわたしの攻撃を受けようとする。そこで、わたしは右腕を引き戻し、その勢いで膝を曲げ、体を沈めた。次の瞬間、ジャンプしながら左腕をドラゴンの顎に向けて、思いっきり殴った。
「ドラゴンアッパー!」
格闘家ドラゴンの必殺技だ! わたしの左腕は見事にズズメーノの顎に激しくヒットし、身体ごと吹き飛ばした。
ズズメーノは背中から地面に倒れこんだ。
ここでわたしが決めセリフを叫ぶ。気分は格闘家ドラゴンである。
「この程度で終わりじゃない。そうだろう、スズメーノ?」
「こ、これぐらいで終わるわらわではないわ・・・」
ふらふらと立ち上がろうとしたズズメーノに向かって、わたしは再び駆け出す。
そして、ジャンプと共に、左足を伸ばしながら体をぐるぐると回転させて、今度はドラゴンの弱点である逆鱗に向けて打ち込む。回転に合わせて、何度も逆鱗にキックが炸裂する。バシバシと蹴りが入っていく。
「ハリケーンキック!」
「ナナたん、凄すぎます」
逆鱗を何度も強打され、さすがのズズメーノも鈍い叫び声をあげて、その場でばたりと倒れこんだ。そして、再び決め台詞。
「わたしは戦い続ける、その先に答えがあると信じて」
「ナナたん、強すぎます」
よこたんの歓喜の声に、わたしは油断していた。きっとドラゴンのキャラになりきって調子に乗っていた。
ズズメーノは再びふらふらと立ち上がり、わたしを見ながら告げる。
「まさか、ここまでやるとは・・・でも、わらわは負けないわ、奥の手を使わせてもらうわ。リサーチ」
スズメ―ノから素早い光が発せられて、わたしを包む。
よこたんが後ろから叫ぶ。
「ずるいです。攻撃魔法は禁止ではないのですか?」
「ふふふ、攻撃魔法ではないわ」
ズズメーノの言葉通り、わたしを包んでいた光はすぐに消えた。そして、ズズメーノに目を向けると、彼女は笑っていた。
「あははは、わらわの勝ちですわ。チェンジ」
そう唱えると大きな煙が現れ、ズズメーノを覆い隠した。
「な、なんだこの煙は?」
「ナナたん、油断しないように!注意して」
ズズメーノを覆っていた煙が消え、再びズズメーノの姿が現れた。大きなドラゴンの姿は変化し、中学生ぐらいの少女になっていた。
チリチリの長い髪に、色黒で細い目をし、つぶれたような鼻に下品な笑みを浮かべている少女。
その姿を見た時、わたしは驚愕した。体が震えて、硬直して動けなくなった。
なぜなら、目の前に現れたのは、中学時代、わたしをいじめて転校に追い込んだ村中の姿だったからだ。
「ナナの一番苦手な相手をリサーチさせてもらったわ」
村中の姿をしたズズメーノが昔のままの下品な笑みを浮かべて告げた。
「覚悟しなさい!」
ズズメーノに変化した村中が叫び声と共に駆け出すと同時に、右ストレートが飛んできた。
わたしは、震える体でなんとか避けようとするが、避けきれずに、直撃で殴られ、あまりの衝撃で吹き飛ばされ、地面に倒れこんだ。
「ナナたん!」
よこたんの悲鳴が聞こえるが、わたしはその強烈な一撃と村中への恐怖で立ち上がることができなかった。心の中では敗北を覚悟していた。また、負けた。あいつには、どうしても勝てないのだ! あきらめたまま地面に伏していた。
「もう、終わりなの、つまらないわ」
「ナナたんになんてことするのですか?」
よこたんがわたしのために怒っている声が聞こえる。それでもわたしは、目を閉じ動けずにいた。このまま、もうすべてが終わってしまえばいい。わたしなんて何をしてもどうせダメなんだ・・・絶望していると、よこたんの声が聞こえた。
「ナナたんを、これ以上、攻撃させません。シールド」
よこたんの防御魔法を唱える声がわたしのそばで聞こえたのだ。よこたん、ここは、危ないよ!ダメだよ。逃げて! わたしはそう叫びたかったが、声も出ず、体も動かなかった。
「どうやら、死にたいようね」
村中の下品な声が聞こえてきた。次の瞬間、激しい衝撃音とパリーンという防御魔法のシールドが崩れ去る音が聞こえた。
「どきなさい、ハーフエルフの娘よ!」
「ナナたんは、ボクが守る! 約束したのです」
「では、あなたから先に死になさい」
「いやー」
その声が聞こえると同時によこたんの悲鳴が聞こえ、吹き飛ばされてドサッと地面に落ちたような鈍い音がした。そして、よこたんの微かなうめき声が耳に届いた。
「ま、守れなくてご、ごめ・・・」
「馬鹿なハーフエルフね、邪魔しなければ死なずにすんだのに」
よこたんの気配が消えた。し、死んじゃったの? え、よ、よこたんが・・・わたしの大切な友達が。かけがえのない友達が! ゆ、許せない! 絶対に許さない。
気が付くとわたしは、立ち上がっていた。目を開くと30メートルほど離れた左側に視線が止まった。よこたんが地面で倒れていた。ピクリともせず、倒れていた。
わたしは怒りで体の震えが止まっていた。同時によこたんを見つめながら、視界がぼやけていた。涙で溢れていた。
「よ、よこたん、死なないで」
「馬鹿な娘ね! あなたを庇わなければ死なずにすんだのにね」
その言葉にわたしの怒りはMaxに達した。もう許さない! 絶対に許さない!
わたしは奇声をあげるとともに、村中に殴りかかっていた。
村中は嘲るような表情を浮かべながら、拳を突き出す。
わたしの左の拳と村中の右の拳がぶつかりあった瞬間、大気が歪むように風が吹き荒れる。わたしは左拳を下げ、右腕を出すふりをする。
村中が左手でそれをガードし、同時に右手で顎を守る。前回のアッパーを警戒している。そこでわたしは、攻撃をすぐに肘打ちに変えた。
上体を下げ飛びながら、村中の鳩尾に向けて強烈な肘打ちを浴びせる。
フェイトに村中は反応できず、身体をグの字に曲げた! それでもその場でとどまるが、さすがに片膝を突いたため、後頭部が見える感じになった。
そこで隙ができた後頭部に向けて、両手を組んで腕を大きく振り上げ、勢いをつけて強烈な一撃を叩き込む!
さすがの村中も衝撃で姿勢が崩れ、地面に倒れた。
その頭に向けて強烈な左蹴りを浴びせる。村中はピクリともしなくなった。わたしは、さらにとどめとばかりに、体重を乗せた膝蹴りを後頭部に落とそうとしたところでやめた。
「ナナたん、もうそれぐらいしよう」
よこたんがふらふらと立ち上がる姿が見えたからだ。
「よこたん、大丈夫?」
「うーん、少しふらふらします」
わたしは村中の背中に蹴りを入れてから、よこたんの前まで歩き、よこたんを支えた。
その後、村中が起き上がるが、先ほどのダメージが残っているのか、地面にぺたりと座りこんだ。その姿勢のまま軽く両手を上げた。
「わらわの降参だわ」
「ここまでして許すと思うの」
わたしの怒りはまだ収まっていなかった。よこたんを傷つけたのだ、それだけのことをしておいて、はい終わりっで済ませる気はなかった。
わたしはよこたんの元を離れ、再び村中の前まで立つと、村中の胸倉を掴んで持ち上げた。
「死ぬ覚悟はできてるよね?」
わたしは怒りをそのままぶつけようとした。過去の村中の悪行を含めてだ。
後ろでよこたんがあわわと慌てている気配がしたが、わたしを止めることはできない。
「どうしてもわらわを許せないのね」
「あと百発殴ったら許してあげるかも」
「そ、それでは死んでしまうわ」
わたしが笑顔で頷くと、村中はわたしの本気さを悟ったようで、ブルブルと震え始めた。死の恐怖を感じたのだろう。
それでもわたしは殴ろうと決意していた。それにより村中が死んでも、どんな結果になろうと後悔する気はなかった。
「チェンジ」
突然、村中が呟き、再び煙に包まれた。しかし、わたしは村中を逃がさない。持ち上げたままでいる。今までの分、殴ってやるつもりだ。
しかし、煙が消え、再び姿が現れると、わたしの決心は驚きで消えてしまった。思わず手を離してしまった。
わたしの目の前には、細目で痩せた高校生ぐらいの年齢で、頭に角を生やした少女が立っていた。
「か、かのさん・・・」
わたしは驚きで口から声が漏れた。目の前には中学時代の友人だった南田カノの姿があったからだ。
「ななさん、ごめんなさい。もうしないから許して」
カノさんは、その場で土下座をし頭を下げた。申し訳なさそうに謝罪するカノさんの姿に、わたしの心はかなり動揺した
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