M=FCシステム
ウルスラー達が3日間の密林への行軍を徒労に終え、基地に帰還したのはそれから2日後の昼だった。
「おーい!ウルスラー!」
機体をガレージへと繫留するウルスラーに下から呼びかけるのはガタイのいい黒人の男。
クレイン小隊長だ。
ウルスラーはAFのシステムを落とすと自らの頭部に繋がれたプラグを引き抜き、コックピットを解放する。
「お疲れ様です。クレインさん……。」
「おっと!大丈夫かウルスラー!?」
地面に足をつけた瞬間にフラつくウルスラー。クレインに手を貸して貰わなければそのまま倒れ込んでいただろう。
「す……すみません……」
「なに……。M=FCシステムとか言ったか。そんなもので五日間もこんなマシンと繋がれていたんだ。お前の疲労は相当なものだろうな…。」
そう言って抱き止めたウルスラーの襟足に目をやるクレイン。
そこにはAFパイロットの証……M=FCユニットの無骨なプラグジャックが深々と埋め込まれている。
M=FCシステム……。
それはこのアームズ・フレーム操縦の基幹技術の名だ。
パイロットは外科手術により頭部に埋め込んだM=FCユニットを介して、自らの脳神経をAFと直結。
複雑なAFの操作と膨大な量の機体情報を従来よりも遥かに簡潔に、素早く脳内で処理できる革新的で理想的な操縦システムだ。
あるひとつの問題を除いては……。
「すまないな。お前ばかりに負担をかけて……。しかし、M=FCの適正は誰にでもあるものじゃないんだ……。」
「……わかってます。しかし、さすがにこの五日間は堪えましたよ。今までの人生で一番キツかった作戦かもしれませんね。」
疲労を感じさせながらもそうおどけてみせるウルスラー。
「ははは! よく言うよ! お前はこのAFでもう何年も戦場を走り回っているんだろ?」
そう言うとクレインは3〜4mほどの藍色の機体、ウルスラーのAFを見上げる。
綺麗に整備されてはいるが所々に見える経年劣化、そして刻まれた無数の古傷がその機体とその男が乗り越えてきた数多の激戦を物語っていた。
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