神栖がここに来たからには、もう紗那様と離れ離れになることなど……
銀髪の少女が、校門の前に立っている。
いや――あれは男だ。
華奢な体つきと、髪が首までかかっていることから判断してしまったが、あれは男だろう。
しかし、蕭条の制服を着ているわけでもなく、
黒い、タキシードのような服装だ。
と言うことは、つまりは部外者と言うことか。
それにしては、どこかで見覚えがあるような気がする。
俺が見た中で、女の子のような男と言えば――。
その結論を俺が出す前に、彼の声が耳に入って来た。
「ここが……ここが紗那様の学校……」
神栖秀明。
鬼門院家の執事、神栖泰全の息子。
そして、なぜか紗那を追い回しながらも、全く振り向いてもらえない健気な奴でもある。
「この神栖秀明、紗那様と再びともに暮らせる日を待ち望んでおりました……紗那様、今まで一人にしてしまい、すみませんでした。この神栖としたことが……さぞや寂しい日々をお過ごしであったことでしょう。でも、もうご心配には及びません。神栖がここに来たからには、もう紗那様と離れ離れになることなど……」
紗那とはいいコンビかも知れないな――。
と、俺はちょっと思った。
でも。
「紗那様と離れ離れになることなど」「再びともに暮らせる日を」――。
まさか――。
神栖は、この学校に編入してくるつもりなのか――。
いや。神栖のことだから、きっとすべての手続きを周到に済ませ、明日からでもこの学校で高校生活が送れるようにしているに違いない。
いや――明日からでもというのは、勿論物のたとえだ。
少なくとも、この時はそうだった。
でも――。
まさか、本当にその「明日」が、明日だったとは。
その時の俺は、思いもしなかった――。




