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あなたを嫁とは認めない!  作者: 須賀川乙部
② 第五章「女子バスケ部には絶対に負けられません‼ですよね、兄様っ‼」
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私、今日お弁当作って来たんだ。でも、うっかり作り過ぎちゃって……

 霧ヶ峰に命令されるのは毎度ながら(しゃく)だが、言っていることはその通りなので、俺も運動場へと向かうことにした。

 俺も、もともとあんなところで突っ立っているつもりはなかったし。

 というわけで。

 二年生の観客席に戻ると、そこにはなぜか紗那が座っていた。しかも、俺が座っていたはずの席に。

「兄様! もうすぐお弁当の時間ですよ!」

 一体どこへ行かれていたのですか、という紗那。

「……それより、なんでお前らがいるんだよ」

 俺は、紗那の問いには答えないで、紗那の後ろの二人に視線を送った。

 黒瀬と道明寺。

 よりにもよって、どうしてこいつらと紗那が一緒にいるんだ。

「今日は大活躍だったな、杉内」

 俺の怪訝(けげん)な表情に本当に気づいていないのか、黒瀬は快活な笑みを浮かべて言う。

「女子の騎馬戦に参加した男子なんて、お前が多分初めてじゃないのか?」

「まあ、そうでしょうね。兄様は騎馬戦界のパイオニアです」

「何でお前が先に答えるんだよ……」

 しかもそんな先駆者になったって嬉しくもなんともない。


「そういえば、仮装みたいなのしてたけど、あれ結局何だったんだ? 渡辺は何かの余興じゃないかって言ってたんだが」

 何か知ってるか、と黒瀬は道明寺に訊く。

「ああ! あれは」

 男子二人と紗那に囲まれて、美少女オーラ三十パーセントの道明寺が、人差し指を立てて言う。

「杉内少年は、私の格好をしていたのでありますよ」

「そうだったのか!?」

 ただでさえ道明寺と紗那という、二人の美少女と一緒で――俺もこの二人が見た目だけはいいのは認める――テンションが上がっている黒瀬が、一層大声を上げる。

「声がでかいんだよお前は!」

「でも、女子たちに混じって騎馬戦なんて(うらや)ましい限りだぜ。お前が誰かに恨まれるんじゃないかと思って、俺はそろそろ本気で心配だぞ」

 不吉な予言をする黒瀬だった。

「電信柱にぶつかるとかですな。是非とも、未来ある少年には気を付けて欲しいところです」

「小さいな……」

 妙に軽い不幸を考える道明寺だった。

「騎馬戦と言えば、紗那女史も普段に似合わぬ猛将(もうしょう)ぶりでしたなあ」

 紗那に視線を送り、美少女オーラ七十パーセントになる道明寺。

 こいつの美少女オーラの発生スイッチって、場所じゃなくて注意の対象なんだな――と本気で考察して、それが不毛なことに俺は気づく。

「そうそう。いつものおしとやかな紗那ちゃんが、あんな鬼指揮官になるもんだから、俺もびっくりして目が離せなかったな」

 お前が目が離せなかった理由は、別のところにあるんじゃないか――?

 しかも紗那ってそんなにおしとやかだとは思えないのだが。

 家柄が家柄だから、口調からはそんな感じを受けるが。こいつがおしとやかだったところなんて、ほとんど見たことがない。


「そうだ! お二人も、お昼ご一緒にいかがですか?」

 ここに集まったのも何かの御縁ですし、と言う紗那。

 褒められて気をよくしたな、こいつ――。

「お! それは本当か!?」

「美少女を囲みながらの昼食は、格別でしょうなあ」

 じゃあお前は鏡でも見て食えと思ったが、確かに紗那の提案はいいかも知れない。

「霧ヶ峰様も、ご一緒にいかがですか?」

 紗那が、生徒会の腕章(わんしょう)をつけて通りかかった霧ヶ峰をその場で呼び止める。

「わ、私はいいわよ、生徒会の仕事もあるし……」

 そういえば、ついさっき忙しそうにしてたな――。

「お食事の時くらい、お休みになったらよろしいのに」

 紗那がそう言うと、「……分かったわよ」と言って、その場に腰を下ろす。

「お前、忙しいんじゃなかったのか?」

「……私の仕事は終わったからいいの!」

 さっきと言ってることが違うぞ、と突っ込みを入れようとしたが、また殴られると嫌なので黙っておいた。


「姫ヶ崎様も是非!」

 そう、紗那が霧ヶ峰の頭越しに呼びかける方向を見ると、そこには姫ヶ崎が一人で立っていた。

 紗那と霧ヶ峰が手を振ると、彼女も手を振り返してこっちに走ってくる。

 途中何度か転びそうになったが、手に携えた包みをひっくり返すこともなく、無事に俺たちのいる場所まで到達した。

 姫ヶ崎のような天然ガールは、平地でも転んだりするから危険がいっぱいだ。

「おお! 姫も一緒ですか! それはいいですなあ!」 

 姫ヶ崎が入っただけで、美少女オーラ百パーセントを振り切る道明寺。

 こいつの身体の仕組みを、一度でいいから見てみたいと思うのはこんな時だ。

 それにしてもさすがはミス蕭条に他薦(たせん)で出ただけのことはある。

 姫ヶ崎は、俺と霧ヶ峰の間に腰を下ろした。

「確かに、ここが一番安全かも知れないわね……」 

 そう言いながらも、俺を睨みつけてくる霧ヶ峰。

 俺、こいつに何かしたか?


「ところで、その包みは何ですか?」

 紗那が問うと、姫ヶ崎はその包みを紗那の前に持ってきて言う。

「私、今日お弁当作って来たんだ。でも、うっかり作り過ぎちゃって……」

 その言葉が嘘なことくらい、包みの大きさを見たらすぐ分かる――はずなのだが、姫ヶ崎のことだから案外本当に作り過ぎたのかも知れない。

 なんせジュースと間違えてコーラを振って飲もうとする奴だ。

「でしたら、何か敷物を用意しませんと」

 紗那はそう言って、ビニールシートを地面に敷く。

「準備のいいやつだな……」

 まるでこの状況を見越していたかのようだ。

「では、時間も時間ですし、お食事としましょうか」

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