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あなたを嫁とは認めない!  作者: 須賀川乙部
② 第三章「カレーのことは置いといて!血沸き肉躍る体育祭です!」
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わたくしにお任せください。奇策がございます

 紗那が何の因果か「チーム対抗騎馬戦対決」の出場者募集を告知するポスターを発見してしまったのは、「兄様の学校生活に何か変わったことはないか拝見しに」紗那が俺の教室に来た時だった――というのが紗那の話だ。

「お前はまだ俺の教室の周りをうろついてるのか?」

 俺が言うと、紗那はそれが当然であるかのように、胸を張って答える。

「兄様は正式な後継ぎになられるかもしれないのですから、素行がそれにふさわしいものかを調査するのは、妹であるわたくしの役目です」

「お前は俺のお目付け役か何かなのかよ⁉」

 俺の行動が全部紗那に筒抜けになっていると思うと、何か嫌だ。

「俺はそんなに信用ねえのかよ」

 俺が言うと、紗那は「い、いえ、そんなことは」と言うが、「でも兄様に万が一のことがありましたら……」という。

 やはり信用なかったようだった。

「それに、兄様に変な女がついてしまうと困ります」

 変な虫――なんて言い出したら完全にヤンデレの言葉だ。

 いや、今でも相当怪しいぞ――。

「兄様は純粋で、しかも女性経験が少ないですから……変な女にコロリと(だま)されてしまう様子が、目に浮かぶようです。ですから妹として、そんな兄様をお守りしたいと思って……」

 言っておくが、この学園の中にとどまっていれば、紗那の言うような意味での「変な女」とはほとんど行き会わない。

 違うベクトルで「変な女」なら、両手両足で足りないほどにいるが。

「兄様をお守りするのは、妹たるわたくしの役目ですから」

 それは分かったから――と俺は続ける。

「何でわざわざ、そんなもんに出ようと思ったんだ?」


「まあ、それは止めてもらうとして……何でそんなもんに出ようと思ったんだ?」

 「チーム対抗騎馬戦対決」は、われらが蕭条学園高校で創立の昔から行われている、体育祭の中でも極めて伝統のある行事だ。

 しかし、チームを組んで出場するのは、大体が運動系の部活。

 蕭条学園の長い歴史の中では茶道部が出たり、教員団が出て大勢の生徒の見ている前で無残な姿をさらしたこともあったそうだが、あくまでも特例である。普段は文化系部活の出るような幕ではない。

 それを、こいつは寮でチームを組んで出る、と言い出す。

 当然、後にも先にもそんなことはないだろう。

「兄様は、もしかしたらゴキブリを退治したりカレーを食べて点数をつけたりされていて、お忘れかもしれませんが――」

 改めて言われると、この一か月、妙に忙しかったわりには中身のあることはほとんどしていないような気がする――。

「――兄様とクラスメートの女子の皆様をここに集めた目的はただ一つ、兄様に未来の婚約者候補を選んでいただく事です」

 そうだ――紗那が寮生活を初めて、一日たりともそれを忘れた日はないだろう。

 そして、紗那がそういう考えを持っていることを俺は忘れたことがない。

「勿論、鬼門院の家に嫁に来る方には、最低限の家事などは出来てもらわなければなりません。しかし、鬼門院の嫁になる上で、最も必要とされること。それは、どんな時でも家の当主――この場合は兄様ですが、鬼門院の当主を蔭から日向から支え続けること!」

 それこそが、鬼門院の家に来る女性に求める心構えです、と言う。

 紗那は主語を敢えて出すことはしなかったが、この場合は勿論「鬼門院家の人間が」だ。そしてそれには勿論、紗那も含まれている。

「ですから! 兄様と一緒に騎馬戦をやっていただくことによって、皆様にどれだけ兄様を支えるというお気持ちがあるのか、ある程度参考になると思いまして」

「おいちょっと待て」

 俺は、幾分興奮気味で話す紗那を制して言う。

「男女混合で騎馬戦をやるのか?」

 いくらチーム対抗騎馬戦と言っても、男子と女子では別々に試合が行われる。

身体の接触を伴う競技なのだから、当然だろう。男女混成チームなんて、聞いたことがない。

「ええ。そのつもりですが」

 紗那はあっけらかんとして答える。

「さすがにそれは無茶なんじゃないのか――?」

 俺が難色を示すと、紗那は何かを思いついたように口角を上げる。

 また碌でもないことを考えついたのは明白だった。

「わたくしにお任せください。奇策がございます。実行委員も理事会も、まとめてだましおおせる奇策を……」

 合法的な手段で俺を競技に参加させる気など、紗那にはさらさらないようだった。

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