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あなたを嫁とは認めない!  作者: 須賀川乙部
② 第二章「華麗なるカレー対決です‼ってわたくしも参加するのですか⁉」
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美少女の手料理に点数をつけるなんて、心が痛むな

「さすがに家庭科室を二日連続で使うと怒られてしまいます」

 調理部の活動は金曜もあるらしいので、と紗那は言う。勤勉で何よりだ。

「ですので、甲賀沼様が潜入した倉庫で偶然ガスコンロを見つけたため、家庭科準備室から持って来た道具とそれをここまで持ってきて、本大会を執り行うことといたします」

 紗那は高らかにそう宣言した。

 というか、倉庫に潜入してそこでガスコンロを見つけるってどういう状況だ――。

 そもそもなぜ倉庫なんかに潜入――いや、侵入したのだろうか。それを聞いたら、また厄介ごとに巻き込まれそうなので、訊きだすことはしなかったが。

「コンロを置く簡易机は、霧ヶ峰様に言って生徒会で用意していただきました。調理器具は、六人分だけと言うことで調理部から」

「部活があるのに、よく貸してもらえたな?」

 俺が言うと、紗那に代わって道明寺が「調理部の人数は少ないですからな」と答える。

 何で調理部員でもない道明寺がそんなことを知っているのかはともかくとして。

 予想以上に大事になってしまったが、紗那はこの程度は計算に入れていたのかもしれない。

 ここは、教室棟から弘学寮へ通じる道の途上、図書館からほど近い広場のように開けた場所だ。俺と姫ヶ崎がリヤカーで荷物を運んでくるときに休憩を取った、自販機のある場所よりさらに教室棟に近い。

 青空調理場、といった格好である。何人か野次馬が集まっているが、紗那はそんなことなど気にせず、放送部から借り出したというマイクを持って高らかに叫ぶ。 


「第一回! オーソドックスなカレーライスオールスターゲームの開催を! ここに宣言いたします!」

「よく噛まずに言えたな……」

 何でそんな長いタイトルにしたのか、俺は理解に苦しむ。でも、どうせ二度と使うことはないだろう。

「カレーは全員が同時に作ればいいとして、食べる順番は――あみだくじで決めることにしましょうか」

 そう言って、紗那はメモ用紙を取り出してそこに直線を縦横無尽に引く。

あの機密事項満載の小さなノートでもなければ、普通の六号ノートでもない。紗那なりに用途に応じて使い分けているようだ。

「ではくじびきをしますので、どこがいいか選んでください」

 ゴールが見えないようにページを折り曲げて紗那が言うと、他の五人も集まって来て、頭を突き合わせるようにしてノートの空欄に自分の名前を書き込む。

黒瀬と道明寺はそれを見ているだけでも楽しいようだが、俺にとってはこの上なく暇な時間だ。

 結果は、紗那がページを広げたと同時に明らかになった。

 霧ヶ峰、御影、甲賀沼、紗那、鷹司、姫ヶ崎のカレー――という順番に、審査員である俺たちは食べて行けばいいのか。

「この順番で審査員の皆様に食べていただき、十点満点で点数をつけていただきます」

 そう言って、紗那は俺たち三人に、一から十の数字がサインペンで書かれた厚紙を手渡す。こればかりは、生徒会室の備品を使ってもどうにもならなかったらしい。

「美少女の手料理に点数をつけるなんて、心が痛むな」

 黒瀬が、歓喜と憂鬱の入り混じったような微妙な表情をして言うと、道明寺が、憂いを帯びた笑みを浮かべて返す。

「あなたもそうでしたか、実はこの私もそうなのですぞ。気が合いますなあ、デュフフフ……」 

 そう言い交わす二人に、「点数をつけていただかないと困ります。それでは審査になりません」と困惑していう紗那。それを見て二人も得点制にしぶしぶ同意したようだ。

「では、調理を開始いたします」 

 紗那は自らそう宣言して、自分が使うコンロの乗ったパイプ机の前に移動した。

 

 調理の最中にも、紗那のテーブルで小爆発があったり、御影が野菜を真剣で切り刻んだり、甲賀沼が謎の調味料を入れたり、いろいろなトラブルはあったのだが――。

 ともかく昨日のような大きな事故になることもなく、全員がカレーを作り終えた。

「では、早速審査の方に移っていきたいと思います」

 野次馬が増えて来たことに気を良くして、紗那が一層声を上げて進行する。多分噂を聞いて、集まって来たのだろう。

 何せ、ミス蕭条と新女王、さらに生徒会副会長と、それなりに生徒の間では有名な女子たちが一同に会しているのだ。

「では、まず霧ヶ峰様のカレーから……」 

 紗那の言葉を聞き、おお、と道明寺が拍手をする。

 紗那が三人に、台車で皿を運んだ。生徒会と書かれているが、これも霧ヶ峰が借りだしてきたのだろう。

 こいつもこいつなりに、姫ヶ崎の力になりたいということなのだろう。

 この企画のアイデアを出したのも霧ヶ峰だし、紗那を参加させることにしたのも霧ヶ峰だ。生徒会の面々に、協力を頼んだに違いない。

 オレンジのエプロン姿の霧ヶ峰が腕を組んで、胸を張っている。相当自信があるようだが、ラーメン屋の女店主にしか見えない。


「では、いただきます」

 道明寺が真っ先にスプーンに手を付け、黒瀬、そして俺の順でそれに続く。

「……成る程、安定感があってバランスのとれたスパイスの配合具合。丁度良いサイズに切られた野菜……霧ヶ峰女史らしいですなあ」

「俺も全く同感。やっぱり料理うまいんだな、霧ヶ峰は」

 霧ヶ峰は「改めて言われると、照れるわね」と呟く。

「杉内もそう思うだろ」

「……まあ、料理はな……」

 こんなところで強がっても、仕方ないか。

「次の審査もあるので、あまり食べすぎないようにしてくださいね」

 紗那が俺たちにわざわざ忠告する。そんなにがっついてるように見えたのか。

 霧ヶ峰のカレーには、道明寺が九点。黒瀬が十点。俺が七点をつけた。

 この後どんなカレーが出るか分からないので、あまり高い点数もつけられない。点数基準は、今は様子見、といったところだ。

「霧ヶ峰様、下馬評通りの高得点です!」

 どこでその「下馬評」を耳にしたのかは知らないが、紗那がそう言うと、霧ヶ峰は「ま、まあね……このくらい私も……」と呟くように口にした。

「では、次の審査に移らせていただきます」

 紗那がそう宣言すると、それに対する歓声に混じって霧ヶ峰のファンの声らしきものも聴こえて来る。

「うるさいわね!」

 顔を真っ赤にしてそう言い捨てるように言うと、彼女は自分の定位置に戻った。

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