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お買いモノログ 作者:monologger
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3.直接行動!

#0204

 ひと月近く経てばもう新入りさんとは呼べないだろう。そして今日は立春。否応なく気持ちは昂ぶる。店内では恵方巻関係が姿を消し、Vで始まる商戦モードに入った。
 「Vがこうも目立つとどっかの優勝記念セールみたいですね」
 「まるで他人事ひとごとね。大いに関係あるでしょうに。」
 「いえこれといって。今年はない、なぁきっと。」
 「フーン」
 社員として採用されたのには相応の理由がある。本職でのキレのようなものはお目にかかっていないが、器量ある女性であることはわかってきた。それに見方によっては十分モテ顔である。恋人とかいそうなものだが、いないのか・・・ 要らぬ詮索をしていた明日夏だが、チョコレートの山積みコーナーに残り、商品のチェック方々、何やら今度は品定めをしている模様。何を隠そう、この女性もいそうでいないもんだから、違った意味で力が入っている。あまり凝視するとチョコだけに溶けてしまいそうではある。

 動かざること某の如し。ペンネーム同様、ただ直立して定点客を待つ牧菜である。彼が小心な四条路さんで、早晩コメントを読んでいてくれれば、今夜はちょっとした変化が起こる筈。定刻が近づき、ドキドキが高まる。そして、
 時間通り、当人は現れた。だが、視線は合わない、というかわざとらす感じ。牧菜はちょっと不安になる。
 より確実に彼に来てもらうためには、明日夏に引っ込んでいてもらうという手もある。だがそれではブログの主である確認もできないし、コメントの効果の程も確かめられない。
 こんな緊張感を味わうための研修だったか、と半ば呆れながら待機していたら、彼はちゃんとやって来た。
 「いらっしゃい、ませ!」
 先方はコメントの主、つまり山女さんが誰なのかはわかっていないと思われる。が、ここで自白してしまったら、何の妙味もないし、違っていたら元も子もない。今日はあくまで第一次チェックである。
 という訳でいつも通り粛々と、と心がけていたのだったが、しばらくぶりということもあって、口が開いてしまうのだった。
 「あ、あの・・・」
 「?」
 「お客様の場合は、レジ袋無用ってわかるからいいんですけど、他のお客さんはそういう訳にいかず、つい出したり入れたりってなっちゃうんですよね。何かいい方法ってないもんですかね?」
 心得ある客人は、何の躊躇もなくサラリと答える。
 「出す前にひと声かければいいんですよ。『袋ご入用ですか?』って。それだけで辞退率上がるって話も聞きますし。」
 「あぁ、それだけ・・・」
 「タグとか用意するとそれでまたコストかかっちゃうでしょうし」
 コメントのやりとりでもQ&Aが実現し得るのだろうが、生きた声というのは代え難い。名ブロガー氏と直々に会話できたというのも大きい。
 話しながらでも手はちゃんと動いていて、半額キーからも正常に音が出ている。が、問題はその後。カードの名前どうこうというのをすっかり失念してしまった、のである。
 いや、その返しからして間違いない。この際、ヒュウガでもヒナタでも何でもいい。ネットでも現場でも接点ができたことが何よりなのである。お名前は二の次。

 更新されるタイミングを心得てきた女性読者は、眠い眼をこすりながらも記録を追う。
 「そういえば、今日は丼か何かをお買い上げいただいてたような。でも・・・」
 半額キーを押した記憶もあまりないくらいだから、何を買ったかなどもうろ覚え。だが、次のレジ袋評を読んで、いよいよ確信の度を深めることになる。

 言われた通りにその女性のレジに行ってちょっとした交歓があったこと、そしてお客にひと声かける云々の件が続く。マイバッグらしきものを持っているかどうかをまず目視するのも手であること、スタンプを押す手間をかけさせては悪いと客側が思えば、かえって辞退しにくくなるであろうこと、なども。さらには、
 「そうか、ポイントカードがあるんだから・・・」
 レジ袋辞退時の還元方法とその換算額の早見表のようなものが掲載されているではないか。この他店との比較対照を以ってすると、2ポイントと言わず、3ポイントを付加すればアドバンテージは得られる。しかし、これまでの一スタンプ5円相当というのからするとサービスダウンは否めない。辞退しやすくする分、換算額を下げるというのは果たしてどうなんだろう。いいヒントを頂戴できたのはよしとしたいが・・・。

 気になる女性をこのように寝つけにくくしているブロガー氏だが、当人も思うところあったようで、日付が変わって以降は、プロフィールを更新し出していた。誰の目に留めてもらうつもりかはいざ知らず、月・木にその店に通う理由などが追記されるのであった。
 牧菜がようやく眠りについたのと同じくして、更新ボタンは押され、お買いモノログの一日が終わる。立春の夜は長かった。

#0207

 研修を始めてちょうど一ヶ月、その成果等を報告する会議が本部で開催され、牧菜は相応の評価を受けるに至った。そのネタの一つはご近所ブロガーさん、いや、かの定点客さんのおかげであることは言うまでもない。まずは目視、そしてお客に合わせた声かけ、さらにはポイントカードを使っての還元――企画書に落とし込んで、それがすんなり通れば来月にはマニュアルの改定ともどもポイントカードの新たな使途が実践されることになる。牧菜は、彼が来るのを待ちながら、思案に暮れる。その話をどう伝えるか、いっそ名乗り出てお礼の一つ二つでも、いやいや・・・

 今や当店のご意見番とも言える人物は、何食わぬ顔して定時に現われた。牧菜は明日夏を牽制しつつも朗らかに一礼。客も軽く会釈して応じる。もう以前ほどヤキモキする必要はなくなったが、今日はまた違った意味でドキドキ。お客とのコミュニケーションの大切さと難しさを否が応にも実感することになる。
 「いらっしゃいませ、先だってはどうも」
 表面上、コミュニケーションは円滑なるも、内心では波打つものがある。客の方にもそれは伝わったか、いつもの三枚組の順序がおかしい。
 「あ、そうだ、スタンプ今日でいっぱい・・・」
 とか言いつつ、ポイントカードを差し出してしまう。が、待てよ、スタンプ満了はいいとして、それでもってその場で使ってしまって大丈夫か。まずは5%OFF、判断はそれからである。
 「今日、お引き換えされますか?」
 合計額670円から5%引いて636円になっている。ここから百円引いても525円は超えてくるので、ポイントで割を食うことはない。
 「あ、お願いします」
 カードには引換確認枠があって、そこに店員のネーム印を押すことになっている。牧菜は自身の印をポンと打つと、客には手渡さずレジ脇に置き、続いて値引きキーを探す。一連の動作なのだが、わざと遅め、そして、
 「実は来月からこのスタンプの代わりにポイントカードを使った還元に変える予定でして」
 ほのめかしていた提案が採用された? いや、もともとそうするつもりでポイントカードが導入されていたんだろうと思い直す日向氏である。でもそうなったらなったで、
 「じゃ、スタンプカードは廃止ってことですか」
 「そ、そうですね」
 同じ想いかどうかはわからない。だが、これだけは言える。それはスタンプを押す・押さないを巡り、ちょっとした会話が生まれることもある、である。店員と客のコミュニケーションツールとしての有用性は決して小さくないのだ。
 そんな感慨とともに客に沸き起こるのはふとした憂慮である。仮に来月早々ということになると、新しいスタンプカードはスタンプ途中で使用停止? となると、今、引き換えた一枚って?
 客が何となくうなっているものだから、店員も気が気ではない。536円分、ちゃんとカードで精算をし終えたものの、またしてもお名前を見損なってしまうことになる。
 『黙ってた方がよかった? でもなぁ。』

 まだ正式決定でないのにあえて口にしたのには理由がある。彼の反応を確かめたかった、というより読者であることに気付いてほしかった、ただそれだけ。だが、その代償は重かった。彼の思いがけない沈黙があとを引くばかり。
 『百円引きよりも、記念にとっておく方が優先だった、かも』
 お気に入りの不動さんの印が押されたカードは貴重品である。それがもう手に入らないかも知れない、というのが氏を凹ませた最たる要因だった。が、それよりも何よりも重い事実が待ち受けている。
 そう、彼女はレジ係として、いつまでもそこにいる訳ではない、のである。

 自分が書いたことが伝わったとしたら、それはそれで喜ばしいが、果たしてそうだとすると、とんだお節介をしたものだ、とも思う。
 本日のお買いモノログに、ポイントカード寸評等が載ることはなかった。ただ単に、何々がどんな表示でおいくらで、というごく基本的なログだけ。
 これでは読者からのコメントなど来るべくもないのだが、山女さんは違った。今日のこの素っ気なさがかえって何かを駆り立てるのである。
 コメントを打ちかけて、その手が止まる。記事量が少ない時は、えてして別のコーナーに目が行くものである。
 「消費生活アドバイザー? 確か経産大臣認定どうこうって。あの資格の持ち主、かぁ。」
 日常的にはアフィリエイトやブログの開設サポートでもって小稼ぎしているが、月と木は午後から某消費生活相談コーナーで相談員をやってらして、社会との接点を辛うじてキープしてるんだとか。コーナーは夜七時までだが、その後は日報を書いたり、資料を整理したり。それでも終業時間がほぼ決まっているので、お決まりのスーパーで記録用のお買い物へ、となる。
 「ハ、ハハ、こっちも観察されてたってことか、そんで、え?」
 プロフィール末尾、最近のブームと銘打った小欄には「お気に入りの店員さんとの会話等」などと書かれてあるもんだからさぁ大変。記事の方も改めて読み返してみて、ようやく当事者意識が確たるものになる。
 「私、タイプってこと? でも、どして?」
 その勢いで何らかのコメントを書き送りたくなってしまう牧菜だったが、いい考えがよぎり、再度ストップ。本人との接点がある以上、何もブログ上でどうこうするものでもない。来週月曜に直接、でいいのである。
 自称山女が動く。つまり、相当の一件が起こることが予想される。

#0211

 誰かさんが定期的にブログに載せてくれているので、買い物行動の一考察については、さほど力を入れずに済んでいる。それでも本職は本職。引き続き実地マーケティングをしながらの店頭業務が待っている。
 さぁこれからこれから。本人はそのつもりでいたのだったが、何やら風向きが変わってきたようだ。
 ポイントを付加したい心理は、倹約精神に通ずるものがある。その倹約がより広義にわたると、本人にその気はなくとも何らかの環境配慮につながる可能性は高い。レジ袋を断ることでポイントが加算されるというのはその点、よくできている。客にとっても店にとっても、そして社会や環境にとっても、ということになろうか。この際、マーケティングどうこうよりも、斯様かような心理面を突いた仕掛けとともに、社会的責任を少なからず果たせる何かを適えてほしい――牧菜の報告を受けて、俄かにそんな話が部署の内外で持ち上がっていたのである。

 Vの日が近づいている。と同時に、社員さんが当店を離れる日も近づくことになった。要するに前倒し、である。
 「あーら、せっかくイイ感じだったのに?」
 「逆にさっさと企画をまとめて、また実地トライアルに来る、というのもアリかと」
 「そうは言ってもとりあえず今週限りってことね。てことはあのお客さんとも。」
 「えぇ、まぁ」
 心なしか淋しげではあるが、決然とした表情も見て取れる。今日は間違いがなければご来店日である。思い切って尋ねてみよう、そして・・・。まずは「ブログ、拝読してます」から行くか、それとも「今日の記事、楽しみにしてます」か、いやいやこれじゃどっちもいきなり過ぎる、か。
 食品トレイ、紙パック等の回収に至ってもお手の物。寒い中ではあるが、テキパキとこなしている。「ま、無難に時候のご挨拶から、かな。『今日も寒かったですね』とか?」 不思議と心温まる気がする。定刻まであと三時間となった。

 その三時間は長く、そしてその後もただ長かった。
 「九時半、とっくに回ったのに・・・」
 ハッピーでも何でもない月曜の夜が過ぎていく。客足が少ない分、余計に時間が重く感じられる。明日夏も持て余し気味だったが、気を利かせてか、カゴの上げ下げに取り掛かり出した。レジは今、一ラインのみである。
 先の中国人女性が片言の日本語で「ども」と言い残し、店を出た。本日はこれにて閉店。彼はとうとう現われなかった。

 「だって祝日でしょ? 公共機関、お休みだからよ。」
 「でも先月のハッピーマンデーは確か・・・」
 定点客が来ないというのは、中規模店舗では一大事。物議や憶測を呼ぶものである。とにかく早く帰宅して、ブログをチェック! すっかり熱心な読者になってしまった牧菜である。

 お買い物記録がない分、本日付け記事がアップされたのはそこそこ早かった。
 「え? 風邪ひいてダウン?」
 買い物がNGの時は、宅配サービスか。が、それではお届けモノログになってしまう。などなど、病人にしては何とも軽妙な書き様が続く。が、それだけで終わらないのが名ブロガーたるところ。
 倹約どうこう、調査対象云々もあるかも知れないが、氏の安物買いにはまた格別の理由があった。特に日配品については、買われないことで廃棄されてしまうのは忍びない、つまり、期限が近いものを率先して選ぶとこうなる、というのがそれ。自らの嗜好よりも、そこに居合わせた品を優先しつつ、アドバイザーなりに調べるところを調べ、表示に記された様々な添加物等を身を以って取り込み・・・と御託のようなのが並ぶ。はては、フードマイレージの言及とともに、食品輸入国というのはもっと謙虚であって然るべき、と来た。何を食べたいかは程々に。こういう時勢では、まず何が食べられるか、なんだと云う。
 結びの一文がまた重かった。食の貧困国にならないためには、一人ひとりの思慮を伴った買い物が物を言う、とのこと。
 「そんな買い物行動があったなんて・・・」
 女性読者は、社員として受け止めるものを感じ、ふと溜息。企画書のネタがより深く重厚になりそうな予感もあって、もうひと息。早く本部に戻ってまとめたい、だが、まだ・・・。
 熱したら冷ます、そんな抑揚が感じられなくもない。心憎いブロガー氏は、末尾の末尾にこんな短文を載せていた。
 「という訳で、今夜は店員さんにはお目にかかれませんでした。明々後日しあさってが待ち遠しい私情、もとい四条路でございます。」

 あれこれ悩んだ末だったが、日付が変わる前に間に合った。コメント欄にはさりげなく小文が挿入される。
 「お大事に。彼女もきっと待ってると思いますよ。」

#0214

 会話が成り立たないことだってあるやも知れぬ。ならば、ちょっとしたメッセージを挟み込んでおこう、と思う。午後早々に客としてやって来た牧菜は、何となく下調べしておいたV関係品を購入すると、ロッカールームにこもる。そして、ペンを走らせるのだった。
 まだ時間はあるが、早めに入って現場での研鑽に努めるとしよう。当店でお世話になるのは、もう今日と明日の話である。まずは、サービスカウンターで・・・。いや、どうも動きがおかしい。
 「ラッピングって苦手、あっ」
 客の立場であれば、誰か得意な店員に頼めば済みそうなものだが、事情が事情なので、自らやるしかない。だが、こういう時はちゃんと助っ人(?)が現れるもの。いきなり肩を叩くもんだから、テープが変な位置で仮止めされてしまう。
 「ハハーン、牧菜さんも役者ねぇ。今日はそういう日ですもんね。」
 「あはは、こりゃまたお早いお着きで。チーフに見つかる前に、と思ったけど。」
 「フフ、アタシもアプローチしちゃおっかな」
 「エ?」
 「ウソウソ」
 時間前とはいえ、この調子。何はともあれ、明日夏の見事な手捌きで以ってVギフトはキレイにまとまった。あとはギフトされる当人が来るのを待つばかり。が、待てよ。
 『どうやって渡せばいいんだろ? お客様が続いちゃうと渡しにくいし。』
 てなことをあれこれ考えていたら、研鑽時間は早々と過ぎ去り、外が暗くなって来た。研鑽も研修も何もあったものではない。

 女性客が駆け込みで買い求める時間帯というのが一応あったが、それをクリアしてからは俄然、時が経つのが遅くなり、退屈にもなってくる。退屈しのぎというのも何だが、新サービス開始時はその案内を四言語で、などと話し合っているうちに、定刻を迎える。そして、

 その人物は颯爽と現われた。風邪はすっかり治ったようだ。だが、お迎えの挨拶を受け容れる様子はなく、そそくさといつもの巡回を始めてしまう。牧菜は居ても立ってもいられない。不動心が試されることこの上なし、である。
 よくよく考えると、バレンタインデー当夜に、まだこうして店にいるということは即ち、なのである。それ自体が一つのメッセージになっている訳だが、それは客にしても同じ。こんな日こんな時間に一人ご来店ということは・・・。

 木曜日の偶然というのはあるだろう。だが、もう後には引けない。彼は今、目の前にいる。他のお客は明日夏がうまく引きつけているようだ。渡すなら今?
 「レジ袋お持ちでしたら、先にお預かりします」
 「あ、はいはい」
 我ながらうまいことを考え付いたものである。スキャンして、必要なキーを押して、お品をそのまま袋に入れてしまえばいい、そしてその時についでに、という作戦である。
 客がカードを取り出そうとする一瞬、目線がレジから離れたすき、店員はその小箱を彼のマイレジ袋に入れ込むことに成功した。
 「と、5、5%お、お引きして・・・」
 うまく行き過ぎるとかえって緊張が高まることもある。が、ここで作戦がバレてしまうと、勤務時間中ゆえ、マズイことになりかねない。この場では気付かれないよう、何とか平静を保たねば。
 そんな緊張が吉と出ると、反動を生むことがある。俄かに平常心がみなぎってきた牧菜は、カードお返し時にご本人のお名前を鑑識することにも成功。
 『KAZAMIさん?』
 と今度は何でまた日向なのかがわからなくなり、不安を募らせることになるのであった。こうなると、早く箱に気付いてほしい、という気持ちになるが、客はすでに店の外。
 「違ってたら、どーしよう・・・ でももう明日までだし。」
 Vの字ほど鋭角ではないが、何となくへこんでしまうのであった。

 値引きされていた紙パック珈琲を道中で飲もうと袋をガサガサやり始めた時、彼はようやくその小箱の存在に気が付いた。
 「え? いつの間に?」
 あまりにキレイにラッピングしてあるものだから、開けるのがもったいなくもなる。が、そうは言っていられない。ビリビリ・・・ いやいや、そうはならないところが、彼らしい。
 アドバイザー資格とはあまり関係ないところだが、ゆっくり丁寧に扱おうとするあまり、何だかんだで時間がかかるのであった。
 『これはほんのお礼です。四条路さま。(山女より)』

 かくして、そのメッセージを読んで引き返した頃には、すでに閉店後。照明はまだ点いているが、パイプシャッターは下りている。真野さんの姿は見えるが、山女さん、いや不動さんはいない。

 日向氏が引き返そうとしたその時、後方から不意に声がかかった。
 「ええと、ヒュウガさん? でよろしかった、でしょうか。」
 「あ、ふ、どうさん?」
 「よく言われるんです。不動産って。」
 お互いにちゃんと名前を知らないとどうにも話がしにくい。
 「説明しにくいんですけど、何々かな、のカナに人と書いて」
 「はぁ、カナトさん? 風見哉人さん、ですね。」
 日向四条路といい、不動牧菜といい、ともかく城北方面の駅名をアレンジした名前ということで、二人には妙な共通点があった。
 「それにしても四条路ってのは・・・」
 「市場にしようとも思ったんですけど、ちと冴えないなぁと思って」
 マーケティングつながり、というのもありそうである。

 そんなこんなで大笑い。お買いモノログにまつわる話はすっかり後回しになっている。
 「ちなみにチーフは飛鳥山さんです」
 「?」
 そのアスカさんは、二人に気付き、シャッターの間から小さくVサインを送る。牧菜も同様に返して見せる。
 Vの日の真意はどうやらその辺にあったようだ。

 * * * * *

 食だ環境だとやっている割には、深夜まで開いている某ファストフード店を選んでしまうところが何とも言えない。本日お買い上げのお値引き品関係は持ち越しとなり、お腹の足しにと、ミートパイとホットドリンクのセットなどをいただく日向氏、もとい風見氏である。牧菜とのよもやま話に興じているうちに、アツアツ感はなくなるも、特に月・木の夜食については温かい状態で食べることがあまりないのでこれでいいんだとか。もっとも、気があった女性をこうして前にしている限り、飲食物の温度などもはや問題ではない。何を口にしても心温まる感じがするから不思議なものである。
 「今夜のブログ、明日付けになっちゃいますね」
 「こういう日にさっさと更新しちゃうと、彼女いないのが見え見えでしょうから、いいんです」
 「彼女いない? そう、なんだ。」
 店員と客、社員とアドバイザー、読者とブロガー、いろいろな関係性がすでに成り立っているが、それにもう一つ加わりそうな予感。
 次に会う約束を交わすも、どの立場で、というのはお互い決めかねている。(おわり)
 ご一読いただき、ありがとうございました。本作の設定解説(レジ袋事情、環境配慮型買い物行動等)については、PC用サイト(http://www.chochoira.jp/okaimono/)をご参照ください。
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