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初めてのキリングマシーン


「それでは〜決闘祭、決勝戦始めさせて頂きます。な、な、な、んと、ブレイバーズはエリシス選手が試合前に棄権。三対一の勝負となってしまいました。まず、一戦目はナツミ選手とトモヤ選手となります。それでは、はじめ。」


審判兼司会者の合図でナツミさんとトモヤさんの決闘がはじまりまった。



「嘘だろ?こいつ、隙だらけじゃねぇか?」

明らかに馬鹿にした様子でトモヤさんは木刀を構えすらしていなかった。



その隙を突いてナツミさんがトモヤさんと距離を詰めた。


その瞬間トモヤさんが無造作に木刀を振るった。しかも、連撃だ。これは避けられない。


ガツッ。


そういう音がしたと思ったらトモヤさんがナツミさんの背面からの攻撃を木刀で受け止める。


そう、正面に注意を向けさせる為に接近して、スキル『ワープ』で背後に回り込んだが、トモヤさんにあっさり反応されてしまった。


相変わらず、反応速度が異常過ぎる。


「で、次はどんな芸を見せてくれるんだ?」

トモヤさんは追撃もせずにそんな事を言ってニヤリと笑う。


「そうですね。これでは体力を削ることも難しいでしょうから、こうさ‥」


ガツッ。


スキルで更に背後に回り込んだナツミさんの攻撃を事もなげに受け止めると。

ナツミさんを見つめる。


「ヒッ」

ナツミさんはトモヤさんの眼力にやられてしまったのか、そのまま腰を抜かしてしまった。


あまり期待していなかったとはいえ、かなり厳しいな。このままでは大将の俺までまわってきてしまうかもしれない。



「任せろ、お主までは回さんよ。」

口角をキッと上げて不敵に笑うセツナさんが頼もしい。是非、俺まで回さないで欲しい。


いくら、あの化け物と戦いたくないとはいえ、決勝戦の大将対決が始まった瞬間に降参なんてしたらブーイングされたりしそうだし。



「それでは〜、キリングマシーン中堅のセツナ選手前へ。それでは、トモヤ選手とセツナ選手の対決を始めさせていただきます。それでは、はじめ」

司会者兼解説者さんは相変わらずのマイペースな開始宣言を行った。


始まると同時に2人の攻防が始まった。

トモヤさんは無造作に木刀を振るうがセツナさんがあっさりかわしながら横薙ぎの一撃を放つ。


ガツッ。


しかし、セツナさんは止められた時点であっさり木刀を手放し、重心を落とすとトモヤさんの軸足を足で払った。


そこで、あのトモヤさんの悪魔的な瞬発力が発揮された。


トモヤさんは軸足への払いを瞬発力でかわした。更にセツナさんが払った足を更に払い返す。いわゆる、ツバメ返しだ。


セツナさんはそのまま転倒してしまう。

そこを逃すトモヤさんではなかった。ということもなく、ワザと追撃せずに右手をチョイチョイと動かし『かかってこいよ』とアピールする。


しかし、素人の俺から見ても分かる。

実力は伯仲などしていないのだ。

セツナさんは強いが、トモヤさんは別格だ。

やはり頭一つ抜きん出ている。


セツナさんは立つと、バックステップで距離をとり、トモヤさんに話しかけた。


「うちのチームの名前は『キリングマシーン』と言うのじゃが知ってたのだろうか?」



「いや、チーム名など正直どうでもいいな。それより早く熱い闘いをしようぜ、まだ奥の手を隠しているんだろ?」


「やはり、覚えておらぬか。まぁ、これで思い出すんじゃな。『キリングマシーン』」

セツナさんは叫ぶと彼女の纏う空気が変わった。ドス黒いオーラが彼女から溢れ出して、傍から見ている俺たちですら息苦しくなってくる。



「おいおいっ、ナツミさん。あれ?誰なの?見た目は変わらないけど雰囲気は明らかに別人なんだけど。」


「あぁ〜っ、あっ、やっぱりこうなったのね。ゴブリンさん、勇者がやられたら2人でセツナを止めましょう。」



「いや、トモヤさんがやられた時点で逃げるしかないって。まぁ、一か八かで切り札は出すけど、ちょっとあれはヤバイって。」


「腰抜け。だからオトコは嫌なの。オトコなんかに頼ろうとした私が間違ってたわ」


「いや、ほんとにヤバかったら俺はナツミさんを止めますから。それより、戦いが再開しましたよ」


セツナさんが一気に前に出る。

只の上段からの振り下ろしが、最強不可避の必殺技になっている。


かわせないと悟ったトモヤさんが木刀で受けようとしたがすぐに受け流しに変えながら中段前蹴りを放つ。


しかし、そこにセツナさんは居なかった。


セツナさんはトモヤさんの背後に回り、そのまま拳を彼の顔面に放った。拳を受けたトモヤさんは咄嗟に首をひねって衝撃を吸収したが、少し足にきてしまっていた。


それでも相手の追撃を阻止するために突きの連撃を放つが、足に力が入ってないせいで威力がまるで足りない。


更に木刀を弾かれて、そのままボディに一撃貰ったトモヤさんは苦悶の表情を浮かべながらも確かに笑った。


「くっ、はははっ、あっぱれな強さだ。あの時より腕を上げたな。喜べ、俺が本気を出してやる。チビるなよ、ガキンチョ。解放【タフリール】」

その時、何かが弾ける音がした。


そして、次の瞬間には凄まじい攻防が始まった。場所を移動しつつもお互い高速で剣を繰り出すが、まるで殺陣のようにお互い綺麗にそれをさばいたり避けたりしてる。


そして、しばらくそれが続いた後にお互い距離をとった。


「ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ、中々やるのぅ。でも、儂もなかなかじゃろう?本気のお主と互角に渡り合っておるのだから。」

少し余裕さえ見せるセツナさんの態度は頼もしかったが、数瞬後にはその考えが甘かったと思い知ることになる。



「ん?あぁっ、さっきまで自分の動きを重力魔法で縛っていたからな。ちょっと準備運動してただけなんだが。そろそろ本気でやるから頑張って耐えろよ」

そう言って一気に畳み掛ける。


一見、先程と同じく目にも止まらぬ閃光のような応酬は先程の焼き直しに見えたが、決定的に違うのはトモヤさんの攻撃だけがセツナさんに当たり出したのだ。


「ガッ、ぐぅっ、くぅ」

のようなうめき声が次第に目立つようになり、

木刀でやられているはずなのにセツナさんが血に染まっていく。



その数十秒後には立っているのもやっとのセツナさんがいた。そして、その目の前には相手に興味を無くしたトモヤさんが構えずに立っている。



「まだ、儂はやれ、、「もういい、後は俺に任せろ。」

俺は無意識にその間に割っていってしまった。

でも、その行動を後悔はしない。



「シンヤ選手の乱入により、セツナ選手の反則負けで〜す。シンヤ選手も失格にするかは対戦相手であるトモヤ選手に決めてもらいま〜す。

どうします。」

そこで、ようやく司会者兼審判が試合の終了を宣言した。



「早くシンヤとやらせろ。凄く楽しみにして、あんまり眠れなかったんだからな。」

トモヤさんは遠足を楽しみにしている小学生みたいなことを言う。


「マジか。まぁ、腹をくくるしかないか。ナツミさん、セツナさんを宜しくお願いします。」



「それではブレイバーズのトモヤ選手対、キリングマシーンのシンヤ選手の決闘をはじめさせていただきます。泣いても笑っても最終戦です。それでは始めて下さい。」

司会者兼審判のその声で俺とトモヤさんの決闘が始まってしまった。


最近更新が遅くてすみません。

ちょっと、氷結姫の閑話と新作(2作(現実恋愛とハイファンタジー)書いてますが、恐らく投稿せずにボツにします。)のせいです。


また、一段落したら投稿ペースを上げさせていただきますので見捨てないで頂けるとありがたいです。

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