初めてのヒートアップ
通称女神の間でカップを割ってしまった女神が1人いた。
そう、アリアである。
「や、やられたわ。埋伏の毒に気付いた時点で何か策を打っておけばこんな事態にならなかったのに。」
そう言って頭を抱えてしまった彼女の真正面に別の女神が出現した。もちろんリヴだ。
「ちょっと前回勝っているからって油断したわね。でも、私の僕はあくまでもこちら側の陣営の駒に離間の術を使っただけだからルール違反はしていないわよ。」
と言いながら嘲笑を浮かべていた。
この策の可能性に思い至らなかったアリアを思いっきり馬鹿にしていたのだ。
「こ、これで、こちら側の戦力が二分されただけです。まだ終わってはいません。」
「ウフフッ、強がっちゃって。ダーツの子と離れたあの少女が今迄のように十全に魔術を使えないことは見ててわかるでしょうに。まぁ、もう勝負あったと思うわ。後は、決着の時までこのヌルゲーになってしまったゲームを楽しませてもらうわ。」
リヴは高笑いを堪えてはいるが、もう完全に上から目線だった。
「イテテテッ、ちょっと強く叩きすぎなんじゃない?」
俺は右頰についた真っ赤な紅葉を抑えながら宮下さんに怨みがましい目を向ける。
今ならスキル『邪眼』とかつかえそうな気がしたがもちろん気のせいだった。
「橋本が無神経なことを言うから悪いんじゃない?」
「いや、それはなんとなくわかるけど。あれだ、あれ。元はと言えばネット君が悪いんだからここは連帯責任でお願いします。」
とりあえず俺だけビンタされるのは納得いかなかったのでネット君も巻き込むことにした。
「いや、あれは橋本の説明の仕方が悪いだろ?俺はそんな言い方はしていないぜ。」
ネット君は宮下さんをチラ見しながらそう言うのだ。もしかして。いや、もしかしなくても嵌められたのだろうか?
「そうよ。胸が豊かな人が好きなのは良いとして、それで何故『だから、宮下さんの胸なんて内田君より無いし、イヤラシイ目で見られることなんてないよ』なんて発言になるのかしら?」
宮下さんは俺に人差し指を突き付けて熱弁する。
ちなみに賢明な皆様ならお気付きでしょうが、内田君は少しふくよかな男子だ。
俺も言い過ぎた。
完全に失言だ。
‥なんて思ってはいるが、やはり俺だけというのはなんとなく納得いかない。
『我等生まれた時は違えども死すべき時は同じと願ワン。』とか言うだろ?
語尾をカタカナにするだけで犬感が20パーセントくらい出るのはなんでなんだろうな。
まぁ、そう言うわけでネット君、一緒に地獄に落ちるんだ。
「いや、俺は一言一句間違えずにネット君が言った言葉を復唱しただけだけど。」
俺は爆弾を投下した。
「ふぅん、そうなんだ。ところで、まだ左の頬があいているよね。」
しかし、効果はなかったようだ。
宮下さんは明らかに聞いていない相槌を打った後、そんなことを言い出した。
いやだ、俺、まだ、ドウテイナンダゼ。
死にたくない。
「宮下さん、落ち着いて。ネット君も宮下さんを止めて。」
俺はそう言ったが、
「焚きつけたのはどっちよ?」
宮下さんはますますヒートアップする。
「俺、痴話喧嘩の邪魔する趣味はないんでね。終わったら起こしてね。」
と言ったと思ったら、ネット君は目を瞑って耳を塞いだ。完全に我関せずを貫いていた。
数分後、両頬を抑えながら俺は旅をつづけるのだった。
「あれ?もオツキ村が見えてきたけど、アヤ達と会わなかったよな?もしかして、先に町に入ってまってるのか?」
「うーん、早く行きましょ。と言いたいところだけど、ケンタもオツキ村に行くんだったのかしら?」
「いや、ちかくの祠に用事があるから。またな、まぁ、まぁ、楽しかったよ。イチャイチャするのもほどほどに。」
ネット君は訳の分からないことを言って去っていった。




