初めての同士討ち
今回は丸々エリシス視点となります。
「あっ、俺は怪しいものではないぞ。」
広い背中の持ち主はそう言って弁解するのだが、ますます怪しい。
「不審者は皆んなそう言うんだ。正体を現せ、不審者め。私が成敗してくれる。」
私は残った力を振り絞って不審者と戦う決意をした。
「ちょっと待て、俺のどこが不審者なんだよ?割と小ざっぱりした格好をしているだろ?」
不審者は必死に弁解しているが、そもそも身なりもそうとうくたびれているように見えるし、、、、
「う〜〜ん、、、、君はタイプな男性ではないな。顔の作りは悪くないのだがどこか無神経そうな顔をしている。一回、胎児からやり直してみてはどうかな?もっと性格が良くなるかもしれないぞ」
うん、顔に性格が現れるというものな。
彼は残念イケメンの部類に入ると思う。
「いや、遠慮しておこう。もうオンナは懲り懲りなのでな。」
そう答えながら不審者は煉獄の騎士の首をはねた。性格はともかく、彼はかなりデキる。
具体的に言うと私より一次元は高いレベルの動きができている。
「ところで、俺のこと、本当に覚えていないのか?」
背中の男が尚も食い下がる。
‥‥新手のナンパなのか?いい加減しつこいのだが、、、しつこくしても純愛とか言われるのは一部のイケメンだけだと思う。
それ以外は皆ストーカーとか呼ばれる。
いや待てよ、どこかで見たような気がする。夢の中で逢った、ような、、、なんて曖昧模糊なものじゃない。
「あっ、帝国最強の剣、、あのいけ好かない元騎士なのか?あの決闘以来だな。」
私は記憶を手繰り寄せ、なんとか思い出した。
「いや、まて、お前は勘違いしている。確かに腹に一撃拳を見舞ったのは悪かったと思っているんだが、、、まあ、ネタバレさせることもないか。今は仲間になったんだから仲良くしようや。」
仲間?どういうことなのだ?
「なぜ仲間に?これはワナか?でも、この状況でワナを仕掛ける意味がわからないな。
帝国最強の剣、なにが目的なんだ?」
「いや、目的も何も、俺はシンヤに一対一の決闘で負けたからな。それでシンヤのパーティーに入ることになったんだよ。まったく、負けたとか悔しいこと俺の口から言わせんなよ。とんだドSだな、お前は。」
えっ?シンヤ殿は一対一で帝国最強の剣に勝ったのか?
相変わらず、強さの読めない人だ。
普段は雑魚に手間取っていると思えば、ココ一番は頼もしい活躍をしてくれるのだからね
私に背を向けている帝国最強の剣が、きっと苦々しい表情をしているだろうことは想像にかたくなかったが、その重々しい口調とは裏腹に素早い動きで煉獄の騎士の四肢を切断した。
そして、残った胴体に剣を突き立てると魔術士へ視線を向けて言い放つ。なぜかトドメはさしていない。
「ほら、早く次召喚してみろよ。」
私からは見えないが、きっと彼は獰猛な顔をしていたに違いない。
魔術士は「ヒッ」と短く悲鳴を上げたかと思うと私達に背を向けて走り出した。俗に言う敵前逃亡だ。
それを見た帝国最強の男は私の予想外の行動にでた。なんと、仰向けに倒れて剣を突き立てられている煉獄の騎士の首をはねたのだ。
「‥‥つまらない反応だな。もう一回やり直しだ。」
彼はその後訳のわからないコメントを添えていた。
しかし、その光景を見た魔術士は口の両端を上げ、下卑た笑いを浮かべていた。
「ば、バカがぁ〜。行け〜」
魔術士がそうさけぶと、、煉獄の騎士が三体あらわれた。またか、、、
「急に元気になったな。じゃあ、そろそろ、俺も少し本気をだすか?」
そう言った帝国最強の剣が剣を振るうと、煉獄の騎士の内一体の首が飛んだ。
「くっ、ま、まさか、、、こんなに圧倒的だとは、、、」
魔術士は忌々しそうな視線をむけるが、なぜか追加で煉獄の騎士を召喚したりはしなかった。
「ほら、これで終わりだ。」
きっかり1分後、帝国の剣がそう言うと三体目の煉獄の騎士の首が舞った。
つ、強すぎる。もう三体を仕留めた。
こんなのにホントにシンヤ殿は勝ったのか?
「くっ、行け〜」
魔術士がそう言うとまた煉獄の騎士が三体現れた。
それで、私ですら気づいてしまった。
帝国の剣は遊んでいる。
私が気づくのが遅すぎたくらいだが、煉獄の騎士は一体でも残っていれば召喚が出来ないのだろう。
それがわかっていてはじめは彼も三体目を無効化した上で倒さなかったのか?
そして、今後はそれがわかっていながら三体目も倒し続ける気なんだろうな?
まったく悪趣味なオトコだな。
これで圧倒的に強いのだから本当に手に負えない。
‥‥‥あれから7度煉獄の騎士を全滅させた時にとうとうその時が訪れる。
「行け〜、、、あれ、、、?魔力が、、、」
魔術士が召喚の為の言葉を叫ぶがなにも現れない、、、召喚の為の魔力が尽きてしまったようだ。
「あぁ〜あっ、思ったよりつまらなかったな。もうちょっときばれよ。なぁ、シンヤもそう思うだろ?」
帝国最強の剣は何度目かの戦いの際には私のそばに来ていて手持ち無沙汰になっていたシンヤ殿にドヤ顔で話しかけていた。
しかし、予想外の攻撃が帝国最強の剣に迫ったことにより彼の顔色が変わった。
慌ててバックステップするが、更に追撃の拳が帝国最強の剣に迫る。
「つっ、やめろ。おまえの攻撃は洒落にならないんだよ。」
帝国最強の剣は剣を抜いて相手の拳をさばいているが、やはりその顔には先程まで感じられた余裕がない。相手の女の子はそんなに強いの?
というか、さっきシンヤ殿にベッタリくっついて登場したような、、、、
「ストーップ」
シンヤ殿がすぐに止めに入ってなんとか戦いが収まった。
「楓〜、なんでトモヤにいきなり攻撃したんだよ?ダメだろ?」
シンヤ殿が女の子を宥めている。
あれ?シンヤ殿とやけに親しそうだがどういった関係なのだろうか?
「‥‥ドヤ顔がウザかったから。私は悪くないよ。」
‥‥なんなんだ、この少女は。確かに私も帝国最強の剣のドヤ顔はどうかと思ったけど、、、あの少女が繰り出した攻撃なら私ならやられていたぞ。
そんな理由であんな激しい攻撃を?
あんなに可愛いのに狂っているのか?
「いや、、楓、ちょっと理由が、、、そのうち『ムシャクシャしてやった』とかいいそうだな。」
シンヤ殿はそう言いつつ優しく彼女の頭を撫でていた。あれいいな、私もやってほしい。
「エリシス、そういえば新しい仲間を紹介してなかったよな?」
シンヤ殿は今度は私の方に向き直りそう言うのだ?そうそう、この娘の正体を教えて欲しい。いや、本音ではちょっと聞きたくない気持ちもあるのだが、、、
「俺の可愛い「お嫁さんだよ」」
シンヤ殿の紹介に被せて少女がそう告げた。
それにも驚いたが、、戦闘中にもかかわらず大事なことをすっかり忘れていた自分にも驚いた。
魔術士の姿がない。
私は気を揉んだが、少しするとガルムが魔術士を咥えて帰ってきた。
もちろん、彼はご褒美にコトハ殿にナデナデしてもらっていた。




