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初めての冒険者登録

柔らか‥‥くない、、、鎧越しだもんな。

どうせなら鎧無しがよかった、、、

そう、俺はつまずいたはずみで女性の胸に飛び込んでいた。


「お、お、、お、おいっ、君は何をしているんだ?」

女性が動揺しながら抗議の声を上げたので、その声に我に返った俺はぴょ〜んと飛び起きると深々と頭を下げて謝った。


「も、申し訳ありません。お怪我等されましたでしょうか?」

もはや合っているかどうかわからない敬語だけど、気にしている場合じゃない。


「いや、そういうことをいってるのではないぞ。乙女の胸を汚した責任はどうやってとるつもりなんだと聞いているんだ。」


そう言われて俺は頭を上げて改めて女性を観察してみた。


ロングの金髪を後ろで束ねた、碧眼の女性だった。

また、10人の男に聞いたら9人が美人と答えるような整った容姿をしていた。ちなみに、残りの1人は残念ながらロリコンなので、彼女のことはもう守備範囲外と答えるだろう。


しかし、責任と言われても俺の灰色の脳細胞が思いついたのは、結局お金しかなかった。


「金貨何枚位が妥当なんですかね。こういう場合?」

思わず聞いてしまったのが不味かったようだ、、


「乙女を汚して金で解決するつもりか?この悪党め、成敗してくれる。」

彼女のその言葉で周りの冒険者もヒートアップする。


特に今回の出来事をちゃんと最初から見ていなかったもの達は『乙女を汚して』の部分がまるで性犯罪でもおかしてしまったようなそんな極端な受け取り方をしており、半数以上の野次馬達が一気に殺気立った。


袋叩きにされるどころで済めばいいが、下手したら殺されてしまうかもしれない。


何もしてないのになんでこんな私刑みたいな裁かれ方しなければならないんだよ?


唯一の罪といえばラッキースケベ罪ってとこか?

いや、鎧越しだからアンラッキースケベだな。


「エリシス、あまり殺気立つものではないよ。どうやら相手も冒険者のようだ。ここは決闘で勝負をつけるのがいいんじゃないか?」

騎士のようないでたちのイケメンが美女を宥めつつ提案したお陰で俺の命の危機は去ったが目の前の美女との決闘は避けられそうにない。


「‥‥エイジの言うことももっともだ。

私も頭に血が上りすぎたようだ。そこの君に決闘を申し込む。受けてはいただけないだろうか?」

彼女は正面から俺を見据えて少し柔らかな表情で尋ねる。その様子はとても決闘を申し込むような剣呑な感じではない。


「イヤだ」

俺は思わず即答した。

なぜ断ったかというと、『これはきっとテンプレで、この後俺の隠された最強チートが現れて美人を倒してしまう』と思ったからだ。

だいたい、冒険者ギルドに入っていきなり決闘とかテンプレ過ぎておかしいだろ?

そんな誰かに作られたレールに乗るつもりはない。


「えっ、あれ?ここは受ける流れではないのか?

では、勝ったら相手のいうことを何でも一つ聞くというのはどうだろうか?」

アテが外れたエリシスのほうがなぜか折れてしまう。


そんな姿を見てなんだかエリシスさんが妙に可哀想になってきてきたので俺は持論を曲げて受けることにした。


「わかった。エリシスさんがそれでいいなら。

それで、決闘ってどんなルールなんだ?」

なに食わぬ顔でエリシスの提案を受け入れた俺がルールの確認をすると、


「それは私から説明しましょう。」

いきなり三つ編み眼鏡のギルド職員が現れて説明を始めた。


全く気配を感じなかった、、、

いつの間に俺たちの近くに?


「ギルドの地下に闘技場があるからそこで試合をしてもらいます。

武器は殺傷能力の低いものを準備してますのでそこから選んで下さい。攻撃力は全て1のものを揃えております。

攻撃は何でもアリアリですので攻撃魔法を使って頂いても構いません。しかし、闘技場には結界が張ってありますので攻撃魔法の威力は0.1倍位になってしまいますので気を付けて下さいね。

また、勝負の決着方法ですが、どちかが降参すれば決着となります。それ以外の決着方法はありません。」

気絶しても、戦闘不能な状況でも降参しなければ続行ってことか?考えようによっては恐ろしいルールだな。


「説明ありがとう、マリナ。あっ、マリナからの説明には無かったがもちろんスキルは使っていいのだからね。」

エリシスが丁寧に補足説明してくれる。


「エリシスさん、よろしくお願いします。」

握手を求めるとエリシスが素直に応じた。

「こちらこそよろしく頼む。」


初めてのギルドでベテラン冒険者に絡まれるイベントだけどちょっと想像してたのとだいぶ違う、、、、、

ベテラン冒険者はやたら和やかだし、その他の冒険者からは「ぶっ殺せ〜」等の怒号が飛び交っている。


俺、生きてギルドを出られるかな?

それならいっそ一か八かあれをやるか?


その前に気になることがあるから職員さんに聞いておくことにした。


「あの?ところで職員さん。質問なんですが、決闘って冒険者登録してなくても出来るんですか?」


「いえ、できるわけ無いですよ。。。。えっ?」

三つ編み眼鏡の職員は驚きを隠せずにいた。


「君?まだ登録もしてなかったのか?そんなルーキーに私は決闘を、、、、」

そして、エリシスさんは落ち込み出した。

なんだか妙な雰囲気になってきたので俺から提案をしてみることにした。


「いますぐ登録とかできますか?」

「、、できますけど、いま混んでますので、、、、えっ??」

職員が難色を示しかけたその刹那、並んでいた人の列が真っ二つに割れて、カウンターにいる職員までの道が出来あがっていた。


モーゼの十戒のパロディーか何かなの?これ?


いや、しかしメチャクチャ睨まれてる。

こんな中歩いて行かなきゃならないの?


背中に冷や汗をかきながら、カウンターまで歩いた。

数メートルなのに何キロも歩いたような疲労が全身を包む。


そして、ようやく冒険者登録がはじまる。

たかが冒険者登録だけで、どんだけ苦労しているんだろ俺。


凛のこととても笑えないな。


それにしても何か忘れてる気が、、、


「お名前と、戦闘タイプを書いてください。」

職員が話し始めた。


「戦闘タイプって?なんなんですか?」


「戦士とか騎士とか斥候とか魔術師とか治癒術士とか荷物持ちとか大まかなところでいえばそんなところですね。稀に魔法戦士とか暗殺士等がいますけどね。」


「あー、じゃあ、戦士タイプでお願いします。シンヤって言います。」


「わかりました。それじゃ、次はあなた手をこの水晶にかざしてね。」

言われるがままに水晶に手をかざす。


「じゃあ、ここに手を載せてくださいね。」

俺はは鉄板に右手の平をのせる。


「はい、ありがとうございます。シンヤさんは7級冒険者となりました。ようこそ冒険者道ぼうけんしゃロードへ」

‥‥なんだ?この決め台詞?こいつ厨二病か?キメ顔がウザ過ぎる。


「どうしました?」

フリーズしている俺を、不思議に思い職員が問いかける。


「‥すみません、続けてください。」


「いえ、後はこのカードを渡すだけですよ。はいっ」

カードを渡してくれた。


免許証や学生証と同じくらいの大きさのカードだが、名前とランク位しか書いていない。


個人情報保護の観点からステータスと戦闘タイプは伏せられているのか?中世ヨーロッパっぽいのに物凄く現代日本っぽいな。


あれ?何か忘れてる気が。


「終わったのか?そろそろ私の方の用事も始めていいだろうか?」

何も言わずに待ってくれていたエリシスが後ろから声をかけた。

振り返ると少し眉を下げ、困った表情のエリシスが居た。そして、周りに人殺しのような殺意に満ちた冒険者達がいた。


その全てが俺を見ている。

あれ?冒険者どもがさっきよりヘイトを貯めまくっている。もしかして俺って重戦士向き?


だめだ、思わず現実逃避してしまうとこだった。


「わかった。待たせてすまなかったな。闘技場に行こう。」

なんとか言葉をしぼりだして答えた。

声、震えてなかったよな?大丈夫だよな?


「こちらです、どうぞ。」

三つ編み眼鏡の職員が案内してくれる。


「職員さん、ちょっと聞いていいかな?今回、闘技場で使う武器にこれを使ってもいいかな?」

丈夫な棒を見せて職員に尋ねた。


「それは?鑑定しますね。‥‥‥丈夫な棒ですね。攻撃力1 耐久力∞ 特殊効果 不壊ですか。女神による効果付与の付いた武器とは珍しいですが攻撃力は1なので構いませんよ。闘技場に置いてある武器も攻撃力1のものですから。」


「ありがとう。鑑定使えるなんて凄いね、職員さん」


「いえいえ、鑑定は珍しいスキルではありませんよ。結構持っている人いますし。そうそう、エリシスさんも持ってますよ。」


何か忘れてる気が、、、、


そうこうしている間に闘技場に着いた。

そして武器を持って向かい合っているときにやっと気づいた。


イオリがいない。


「ちょっと待った。」


「‥‥‥また待たせる気か?私も気が短い方ではないがちょっと往生際がわるいのではないか?」

エリシスが眉をひそめてやや弱めに抗議する。


「違うんだ。俺の仲間が居ないんだ。ギルドに入るまではいたんだ。」

俺は必死に訴えかける。


「‥‥わかった。どんなやつなんだ?」

必死さが伝わったのか、話を聞いてくれそうだ。

というかこの人、相当お人好しだろ?

困っている人を放っておけないオーラがハッキリみえるもんな。


「ボロボロのフードをまとっている娘だけど」


「エイジ、シス、頼む」

そうエリシスがお願いしたと思うと。


数分後、エイジと呼ばれたイケメンが、イオリをつれて来た。


どうやらトラブルが起こった際に冒険者に押されて机の角にアタマをぶつけて気絶してしまったらしい。


「シンヤさん、心配かけてゴメンなさいと思うよ。」

イオリが頭を下げながら謝っている。


「いいよ、気にするな。それよりアタマ大丈夫か?」


「大丈夫だと思うの。それよりほんとうに決闘するのと思うよ?」

イオリは心配そうに俺を見つめる。


「ああ、やるだけやってみる。

待たせたな、さぁ楽しんでやろうか」


そうして決闘が始まった。

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