初めての通り名
今気付きましたが、最近メインヒロインが出ていなかったですね。思いつきで申し訳御座いませんが、次の次の話は凛の回にします。一応最初から書くつもりでいます。宜しくお願いします。
「楓の女の子評をそのまんま信じたら、俺、女の子が怖くてたまらないんだけど」
嫉妬、束縛、見栄、、、などなど、、女性不信になりそうだ。
「え〜、随分オブラートに包んだつもりなんだけど。私の話している女の子評なんて可愛いものだと思うよ。本当はもっとドロドロしてるし」
楓は少し首を傾げてそう言う。
相変わらず可愛い妹だ。
本当にこんな娘が学校では無表情、無愛想なんだろうか?想像がつかないよ。
「え〜、、、でも、アヤとか全然ドロドロしてないぞ?」
うん、アヤとは付き合いが長いしそんなキャラじゃないのは分かってるんだよな。
「あ〜、あの人はオンナノコとはちょっとちがう人種の人だから。」
「だよな、サッパリしてるし、どちらかというとオトコっぽいよな。」
そんなこと言ったらアヤは怒るかもしれないけどね。
「そうよね、、普通、お兄があんなに胸をガン見してたら気づきそうなもんだよね。」
えっ?楓、知ってたのか?
「‥‥ごめんなさい、アヤには言わないで、、、」
俺は必死でお願いしたよ。
「そうだよね。じゃあ、なにしてもらおっかなぁ?」
可愛い楓がもの凄く悪そうな顔をしている。
何を要求されちゃうの?
「‥ン‥‥ま、‥‥き‥‥く‥‥さい」
??あれ??夢だったの??というかいつの間にか寝てたよ。
ん〜、あれ?寝る前何してたっけ?
「シンヤさま、起きてください」
あっ?イオリか?あれ?
あれれ?
「皆んなは無事なのか?サイスは?」
俺はガバッと跳ね起きてイオリに尋ねる。
あれ?イオリの目が真っ赤だ。泣いてたのか?
「もしかして、誰か死んでしまったのか?」
俺は意を決して尋ねた。俺が意識を失っていた間に誰か犠牲になってしまったのか?
俺の言葉に応えるようにイオリは悲しそうに目を伏せて首を横に振った。
嘘だろ‥‥?
「誰なんだよ?まさかパーティメンバーなんじゃ?」
俺は恐る恐るイオリに尋ねた。
正直聞きたくなかったけど。
「えっ?あっ、違うと思うの。誰も死んでいないと思うの。」
イオリはガバッと音がしそうなほどの勢いで顔を上げて俺の勘違いを訂正してくれた。
「それじゃあ、なんでそんな悲しそうな顔してるの?」
俺がそうたずねると、イオリは俺をじぃーっと見つめると右手を差し出した。
そして右手を開くと手のひらに何かの欠片がのっている。なんだこれ?
「なんなんだ?これ?」
もしかして俺、彼女の退屈を埋めるための欠片の一つに選ばれちゃったの?
「シンヤ様に頂いた翠石の杖の欠片なの。ごめんなさい、無理な使い方したら粉々になっちゃったの。」
え?あ?そう言えば、イオリ、魔法使ってなかったか?
「そう言えば、イオリ、魔法使ってなかったか?約束しただろ?」
というかサイスを一撃で倒してたよな?
俺とかエリシスの決死の覚悟はなんだったんだよ?
正直恥ずかしいよ。
「‥‥約束破ってしまったの。ごめんなさい。でも、 シンヤ様を護れたから後悔はしていないの。」
う〜ん、サイスは第5形態までさっさと変身しなかったことを後悔しただろうなぁ〜
「‥‥でも、約束したろ?」
それに今の弱った状態で魔法を使うとイオリの寿命が縮みかねないんだから約束は守って欲しかった。
「うん、心配してくれているのわかってるから、なるべく自分の身体に負担がかからないようにコトハに協力してもらったの。でも、約束やぶってやっぱりごめんなさい。捨てないで。」
えっ?あれ?なんで捨てるとかいう話になってるの?
「いや、捨てないよ。それに杖だって、イオリを守ってくれたと思えば安いものだよ。」
それに、これはチャンスだ。
これで、他のメンバーがプレゼントをねだってくることはないだろうしね。
もし、ねだってきたらチラッとイオリの方を見ればいい。杖を壊してしまったイオリに遠慮して、誰も俺にプレゼントくれとは言えないだろ?
「それより、イオリ、カラダは無事なのか?」
「大丈夫だと思うの。」
そう言ってイオリはようやく微笑んでくれた。
その時ちょうどトントンとノックの音が聞こえた。
「どうぞ」
俺がそう言うとゾロゾロ人が入ってきた。
「シンヤくん、あの‥‥大丈夫?」
「シンヤ、大丈夫やったん?」
「シンヤ殿、申し訳なかった。お詫びに何で償ったらいいかわからないが、何でも言ってくれ。」
コトハ、アヤ、エリシスの順で声をかけてくれるが一番気になった発言はやっぱりエリシスだ。もしかして、なんでも叶えてくれるの?
でも、人間は学習する生き物なんだよ。今回は絶対に二人きりのときにエッチなお願いをしてやるからな。
「ああ、心配しなくてももう大丈夫だよ。皆んなも大丈夫だった?」
俺は殊更優しげな表情でみんなに話しかけた。
「シンヤくんの事が心配で心配でご飯が喉を通らなかったけど、他は全然大丈夫だったよ」
コトハさんからは健気な答えが返ってきたが、、、
「えっ?コトハ、さっきご飯をおかわりしてグフッ‥‥」
アヤが余計な事を言ったかと思うと、乙女にあるまじき声を出した。
よく見るとコトハさんの肘がアヤの鳩尾に突き刺さっている。うん、俺は何も見ていない、きっと気のせいだ。
「私は大丈夫だ。それよりシンヤ殿は本当に大丈夫なのか?」
エリシスがそう言うので取り敢えず安心させるように微笑みながらうなづいた。
「シンヤ様、エリシス様に対してエッチなことを企んでると思うの。」
なんてこと言うんだ、イオリは?
「えっ?なんでそうなるんだ?」
俺はそう言ったけど、周りの皆んながウンウン言っている。
あ〜、笑うと俺は企み顔になるんだったっけ?俺は少し落ち込みながらそのまま眠りに落ちた。
翌日、レンとて今後の予定を話し合って、出発は10日後ということに決まった。
「ということで、ダンジョン探索するぞ。いやぁ、やってみたかったんだ。皆もいいかな?」
俺は昼の食堂でパーティメンバーにそう言った。
「イオリはシンヤ様について行きます。」
「ウチもダンジョン探索してみたいわぁ」
「私はちょっと用事があるから明日は参加できないけどそれ以降なら。」
「私はダンジョン探索の経験はあるからシンヤ殿の力になれるだろう」
イオリ、アヤ、コトハさん、エリシスの順にそう答えた。
早速依頼を受けようと5人でギルドに入る。
すると、何故かギルド内が騒めいた。
なんだこれ?ものすごく色々な人に見られているんだけど、、、
更に騎士風の冒険者が話しかけてきた。
もちろん知らない人なんだけど。
「あの?疾風剣のエリシスさんに、爆裂姫のイオリ様ですよね。サインとか貰えませんか?」
あれ?いつの間に?通り名ついてるの?
冒険者歴の長いエリシスはともかく、なぜイオリが?
「ちょっと君?イオリの通り名なんていつの間に知ったの?」
俺は彼に思わず問いかけていたよ。
「あっ?ゴールテンボーイか?勇者隊と昨日ここでサイス討伐の祝勝会があったんだけど、そこで彼女の信じられない武勇伝を聞いたんだよ。そしてサイスを一発で倒した話を聞いた時に誰かが言い出したんだよ。
『爆裂姫』って、、、」
そ、そんな逸話があったのか?知らなかったよ。




