初めての狂人化
すみません、ややシリアス路線です。
一回真面目にボス戦書いてみたかったので少し長いです。
関係ないですけど感想とか頂けないかなぁ〜?とか思いますけどそこのあなた、どうですか?
あれ?なにか様子がおかしい?
なんなんだこれ?
俺の周りの人達の俺を見る目が冷たい、、、
なぜだ?1人も傷つかず強敵を倒したんだぞ。
結果だけ見ればこれ以上のベストはないと思ってるんだけど。
いつもと変わらない眼差しで見つめてくるのはイオリぐらいのものか?
「あの〜、、橋本くん、、あの人、、助けを求めてたよ、、なんでそんなひどい事できるの?」
カスミが俺を非難する。
『ファイヤー』以外の言葉も喋れたんだな?
しかし、完全に嫌われたみたいだよ。
もしかして他の人もそうなの?
「あの?同じシチュエーションがあったら俺はまた同じ事すると思うよ」
仲間を守る為には手段を選ぶつもりはないし、その仲間の中に勇者隊は入っていないから別に批判されてもなんとも思わない。
俺がカスミの意見を真っ向から否定したことで、勇者隊のメンバーがざわめく。
こんなところで揉め事はちょっとまずいかもしれないな、どうしたもんか?
「カスミ、そこまでにしておいた方がいいよ。橋本くんは間違ってはいないよ。」
しかし、俺の心配は杞憂に終わったよ。
レンが何故かカスミを窘めた。
レンさん、マジイケメンだわ。
『キャー、レン様、ステキ。抱いてぇ〜。』とか思うところだったよ。
「レン、とうとうあの馬鹿に取り込まれたのかしら?あのような低俗な振る舞い、ワタクシは許せないのだけど」
レナが相変わらず上から目線で場を掻き乱す。
『ちょっと、レナちゃん。今大人の話ししてるからちょっとこれでジュースでも買って大人しくしててくれないかな?いい子にできる?』とか言ってやりたい。
言わないけど、、、
「あの?レナちゃん、カスミちゃん?なんで魔王軍の肩を持つの?もしかして、魔王軍の手先だったりするの?」
しかし、こちらには頼りになる味方がいるから俺が何か言う必要もなかったよ。
コトハさんが普段の弾むような口調ではなく、落ち着いた口調でそう言うものだから真実味が段違いで、場が凍りついた、、、
皆んなの視線がレナとカスミに集まる。
「あれ?そ、そんな訳ないじゃない。コトハ、何言ってるの?皆んなも何を勘違いしているのよ?私達は魔王軍の手先を倒しに来たのよ。なんで魔王軍の手先なのよ。意味がわからないわ。」
レナは皆んなの冷たい目線に耐え切れず、言い訳を始めた。この娘、攻撃は強いけど責められるとトコトン弱いな、、、、
すると、このタイミングでレンは《パン、パン、パン》と手を叩き、皆んなに落ち着くよう促す。
「皆、落ち着いたかい?彼女達のように情熱的な女の子も魅力的だとは思うけどね、私は情熱を内に秘める娘が好みだよ。少し私の話を聞いてくれないか?」
「レン、進めて。」
コトハが先を促す。
「さっきのはこの城の主、サイスだったのは僕ら最前列に居た人しか知らないんだよね。だから後ろに居たレナやカスミは橋本くんを批判したんじゃないかな?でも、これは私以外は知らないと思うけどサイスは第五形態まで変身するんだよ。そして、その度に段違いに強くなるんだ。私達は勝てないよ。」
レンが勝てないと断言したことで皆に動揺が走る。
「えっ?勝てないのになんで来たん?」
アヤが当然の疑問を口にした。
「あ〜、このタイミングならいいかな。この城の玉座の裏にオーブがあるんだが、これを持ち帰れば今回はミッション達成なんだ。そうすることで、この城が崩壊するからね。そして魔王軍はここ近辺の拠点を失ってしまうってわけさ。」
「タイミング、って仲間の動揺を防ぐためだよな?あと、目的はわかりやすく言うとオーブを盗みに来たってことか?」
タイミングの所は俺もぼやかしたけど、相手が強いってわかってたら、ヤマトが弱くなるんだろ?
スキルの詳細は知らないが、恐らく精神状態と連動したスキルだ思う。対イオリの時はわかりにくかったけど対けるべろす戦、そしてレンの発言で確信したよ。
「まぁ、盗みって言うと人聞きが悪いけどそうだね。だから、サイスと戦うのは第二形態までで、その戦闘の間にオーブを持って逃げる予定だったんだけど、サイスを落と穴に落としてくれたから余計な手間が省けたね。」
そう言いながらレンが最奥の大きな扉を開けると、、、、サイスが居た、、、ウソだろ?
双子?影武者?
「ハロ〜〜〜、ブラザー。ヒドイなぁ、まさかあそこで小指をふむなんてな。こんなヒドイ人間が世の中に居るとは思わなかったよ、世の中は広いね。
はははっ、そんなに驚くなよ。
あの穴には抜け穴があってね、近道させてもらっただけなんだぜぃ。
さぁ、今度こそ正々堂々勝負だぜ、とりあえず死ね」
サイスは笑みを浮かべて手品のタネ明かしをする三流マジシャンのようにペラペラ喋り始めた。と思ったら急に彼の周りの空気が重苦しく変わった。
「ネット」
ケンタがスキルを使用する。
ネットがサイスにまとわりつく。
この状況で、いつも通り動けるってなかなか度胸があるよな。俺はケンタをちょっと見直したよ。
「なんだ、これ、卑怯だぞ。正々堂々と戦え。」
サイスがネットで足止めされて喚いている内に他のメンバーも畳み掛ける。
「ルイ、軽やかに舞いなさい」
レナの声に従い、ルイがサイスの首筋に食いつく。
「ガルム、お願い。」
コトハがガルムを呼び出し、ガルムがサイスの足に食いつく。
不利と悟ったのかサイスがルイとガルムを振り切って後方へ移動し、咆哮する。後方に下がったことにより、ちょうどカスミが放ったファイアがかわされる形となった。
様子がおかしい。
サイスの容姿が変わっていく。
尻尾が生えて手足に鱗が、、、これが第二形態か?
その間に俺とレンが玉座へ向かっていると。
ルイがサイスに殴り飛ばされた。と思うと、ガルムもお腹に蹴りを受けた。
「ターゲットオン」
アヤが狙撃する。
今回は一撃必殺なのか光球は一つだ。
これがサイスの側頭部に直撃。
やった。これで、チェックメイト。
俺たちももう玉座の前だ。
サイスは吹っ飛んで玉座に身体を打ち付けた。
「へっ?」
俺は思わずへんな声が出た。
何しろサイスと俺の距離が3センチ。
キス出来ちゃう距離だよ、、、しないけど。
マズイよ、マズイよ。
しかし、サイスは弱者には興味ないのか勇者隊の主力へ向かっていく。
エリシスとヤマトが抑えにかかるが直ぐに耐え切れず吹っ飛ばされた。
更にサイスの攻撃によりガルムの召喚が解けた。
ルイもサイスの先程の攻撃により既に気絶している。
これ?そもそも、逃げ切れるの?
いくしかないか?
「ラックゾーン、ダーツ召喚」
俺がそう叫ぶと世界は時を止めた。
「‥‥あれ?リヴだよね?どうしたの?」
目の前には仏頂面したリヴが居た。
今はアリアの方が良かったよ。ちょっとでも有利な条件を引き出したいのに。
「あっ、居たんですか?人のスカートの裾の位置までしっかり覚えているヘンタイさん」
まるで、ゴミでも見るような目で俺を見てくる美女。新たな快感に目覚めたらどうしてくれるんだよ。
「リヴ、ちょっと待って。今回は俺は何を望んだの?」
ここがいつも、俺の想いとズレがあるんだよな。
最初に聞いといた方がダーツの的に書かれていることに一々絶望したりしなくていいかもしれない。
「さぁ、早くダーツしてください。後、私の半径三メートル以内に近づかないでください。」
俺の発言はなかったものと見なされていた。
あれ?物凄く嫌われてないか?
仕方がないのか?
取り敢えずダーツの的を見てみる。
スキル…ハズレ 90度
スキル…一発芸 90度
スキル…スキル10倍 90度
スキル…召喚獣強化 45度
光学兵器 45度
???ハズレ???
???一発芸???
今回は酷くないか?
取り敢えず光学兵器かスキル10倍か?
今回は結構シビアな気がするな。
「とにかく投げるしかないな、エイッ」
俺は今回は気が急いていて、すぐダーツを投げた。
矢が的に向かって飛んでいき、的に刺さる。
「トンッ」
的の回転が弱まっていく。
あっ、もう少しで文字が読めそうだ。
見えてきた、見えてきた。
召喚獣強化の位置に矢が刺さっている。
けるべろすを強化するってこと?
「リヴ、これってどんなスキルなのか教えて貰ってもいいかな?」
俺はそう尋ねたけど、
リヴから説明のないまま、時は動き出した。
「召喚獣強化」
俺がそう叫ぶと、けるべろすが光に包まれる。
光が収まると、強化前と変わらぬ姿のけるべろすが居た。ちょこんと座って少し首を傾げているよ。
滅茶苦茶可愛いんだけど、強くは見えないよ。
「こいつ、相当強いな。」
サイスはそう呟くとけるべろすへ向かって突撃する。
そして、次の瞬間。
けるべろすの頭がサイスの腹に突き刺さっていた。
「ぐはぁ、やられた、、、、カウンターとはな」
そして、そのままサイスは膝をついた。
けるべろすはそこに追い打ちで右前足での攻撃。そのまま、クルッと回って尻尾の攻撃。
サイスは壁まで飛ばされた。
「マズイな、第三形態へ変身だ。ウォ〜、えっ、ちょっと待って、、、ごめん、やめて。ほんとお願いします。」
けるべろすはサイスに変身の間を与えない。そのままサイスの首筋に噛みついたかと思うとそのままサイスを床に叩きつけた。
このままけるべろすがサイスを倒すかと思われた時、《ピコーンピコーン》という音が鳴ったかと思うと、けるべろすは何処かへ飛んで行ってしまった。
「へっ?」
このタイミングで?
どうすんの?
「あ、あっぶねぇ、死ぬかと思ったわぁ。ウオ〜〜〜、第三形態だ。そろそろお別れの時間だな、楽しかったぜ、安らかに死ねよっ」
サイスはそう言いいつつ玉座に座る。
『サイスが座ってる間に逃げろよ。』なんて思うかもしれないけど、サイスは先程より段違いに強くなっているのがなんとなく分かるくらいに格段強くなっている。
これは逃げることすら出来ないだろう。
俺とレンは皆と合流したが、なんでも見透す目を持っているレンですらもう手はないようだった。
俺の頭の中に《GAMEOVER》という文字がフッと浮かんだ。
でも、、、、諦めるのは結構得意なつもりだったのに、学校も、将来も、友達も確かにあの時は諦めたんだから今回も諦めれば苦しまずに楽になれるかもしれないのに、、、イオリは、アヤは、エリシスは、コトハさんは諦めた表情はしていない。
何かがストンと身体の中に落ちてきたわけでもないのに自然と覚悟は決まっていた。
「俺に秘策がある。イオリ、例の剣を出してくれ。そして、皆逃げてくれ。アヤ、コトハ、イオリを殴ってでもいいから必ず一緒に逃がしてくれ。」
もちろん、秘策なんてない。
剣も持つだけで精一杯で、振ることなんてできない。でも、脅し位にはなるだろう。
「わかった。皆んな行こう。橋本くん、死ぬなよ」
俺の覚悟を読み取ったレンは皆に逃げるようにすぐ指示する。そう、それでいい。
「手柄を一人占めにしてしまって悪いな。後で報奨金で一杯ずつなら奢ってやるよ」
俺は最期の強がりを言ったあとはサイスの方へ体を向ける。
「おっと、逃すと思うか?きこえているんだぞ。」
サイスが逃げるレン達を見て警戒を強めてそんなことを言ったが、俺だって仲間を攻撃させる気はない。
「サイス、俺と勝負しろ。」
俺は床に刺さった剣でそのまま居合いするような構えを取った。さも、一撃で勝負を終わらせるつもりに見えているに違いない。
本当はただの時間稼ぎだと気付かれた瞬間が俺の命が終わる時ってのが泣けてくるけどなぁ。精々警戒して俺の寿命を1秒でも伸ばしてもらいたいものだ。
「お〜〜、俺の強さを見てそう言える奴は中々だな。足が震えてさえいやがらねえ。いいだろう、お前の度胸に免じて一撃で終わらせてやんよ。」
サイスが王座から立ち上がった。
脚さえ震えていないのは覚悟が決まったからだ。
覚悟が決まったのはきっと仲間達のお陰だけどな。
仲間だけは何としても生かす。
「俺と、この剣は、今からお前を塵一つ残さず滅ぼすだろう。滅びる前にゆっくりと祈るがいい、戦いが始まれば生きてるうちには二度と祈ることすらできなくなるんだからな」
俺はやたら大仰な言い回しを使って少しでも時間を稼いだ。よく噛まなかったもんだよ。
「はははっ、笑ってやがる。その心意気、気に入った。確か居合いとか言ったか?初撃を躱すのは簡単だが、正面から打ち破ってみせよう。
ほら、ココを狙うんだぜ!」
サイスはそう言って親指で自分の胸を指し示す。
もの凄くテンション上がってるよ、コイツ。
脳筋野郎なの?
でも、本来は瞬殺のところを少しは時間が稼げたな。
後は1秒でも長く粘るだけか。
イオリ、怒るかな?
パーティの仲間は悲しんでくれるんだろうか?
「その勝負待った。」
俺の背後から急にエリシスの声が
あれ?逃げたんじゃ?
何やってんの?
隣にはレンもいる。
どうなってる?
俺を犬死ににしたいの?
「エリシス一体どうしたんだよ?邪魔しないでくれない?」
俺が命がけで時間を稼いだ意味がないじゃないか?
「私に秘策がある。スキル、狂人化だ。これで奴に勝てる。」
えっ?確かにエリシスにはそんなスキルがあったけど、、、
「でも、もう人には戻れないんだろ?敵味方構わず殺し回るバーサーカーになるスキルだからね」
レンがそうタネ明かしをするが、エリシスは否定しない。きっと事実なんだろう。
「エリシス、リーダー命令だ。そんなものは認められない。逃げろ。」
俺がそう言うやいなや、エリシスが俺に近づきお腹に一撃、俺は気絶した‥‥‥とかならよかったんだけど、何故かエリシスは俺の大事な股間にかなりの威力で拳の一撃、、、
◯×△□?!△□×?
俺は痛くて気絶すら出来ずにその場にうずくまった。
「リーダー、今までありがとう。大好きだったよ。あと、これからの私はどうか見ないでくれ」
そう告げるとエリシスはそのまま、サイスに向かって走っていく。
まだ、スキルは使っていないようだ。
きっと俺たちを巻き込まないようになるべく俺たちから離れた位置でスキルを使うつもりなんだろう。
チクショー、俺は本当に動ける状況じゃない、、、、股間に一撃を食らわされて悶絶中に仲間にお別れとか、、、、、
こんなお別れはイヤだ、、、
というか、自分だけ犠牲になって、、とか認めないからな。
俺は自分を棚にあげて本気でそう思った。
いつの間にか俺は涙を流していたけど、痛いから泣いているのか?
悲しいから泣いているのか?よくわからなかったよ。
そして、とうとうエリシスがサイスの前に来る‥前に
「エクリクシス」
サイスが爆発した。
あれ?サイス、一瞬で粉々なんだけど、、、、
あれ?あと2回の変身はどうなったの?
色んな疑問はあったけど俺は股間が痛くて結局気絶した。
どこが真面目にボス戦だよ。とか思った方。
割とお約束な展開ですみません。




