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初めてのヒーロー

待ち合わせ場所の泉の広場には、もう皆が集まっていた。


俺が近づくと、勇者隊の皆の視線と俺のパーティメンバーの視線が全て俺に集まる。


あれ?俺が最後?もう俺待ちだったの?

ものすごく気まずい。


『ハハハハハハッ、ヒーローは遅れてやってくるものさ。』とか言って堂々と登場する勇気は俺にはないんだよ。


それにさすがにこの注目の中、イオリにプレゼントを渡すのはやめといたほうがいい気がしてきたな。

完全に見せ物になってしまうし‥‥


いっそのことフラッシュモブみたいにみんなが踊り出せば俺も華麗にボックスを踏みながらイオリにプレゼントの杖を手渡すんだけど。


そして、プロポーズするんだ。

《俺のために毎日ビーフシチューを作ってくれ。》

あれ?これ、例の店のヒゲのドワーフ店長用のプロポーズだったわ。


「悪い、遅れたか?」

俺はレンに話しかけた。


「いや、まだ、昼の鐘は鳴ってないからね。

それより、さっきから気になっていたんだけど、その重そうに持っている杖はなんなんだい?魔法使いに転職でもしたのかい?」

レンの視線は翠石の杖に注がれていた。


「あ〜、ちょっとね。ところで、そろそろ出発したほうが、いいんじゃな「橋本、お前の杖、そこのチビッコにあげるんだろ?勿体ぶらずにサッサとあげろよ。」

俺は軽く会話をながそうとしたんだけど、ヤマトが勝手に会話に割って入った挙句苛立ったように言った。


「え〜、ヤマト?ウチのけるべろすと遊びたいって?悪い悪い、そんな怯えた顔するなよ、俺が悪かったって。」

むかついた俺がけるべろすの名前を出すと、ヤマトはすぐに青い顔をして震え出したので、思わず謝り倒してしまったよ。


「それで、リーダーその杖は?イオリ殿への贈り物なのだろう?」

あれ?エリシスさんそこ蒸し返しちゃうの?

仕方ないか?


「イオリ、ちょっとこっちに来てくれないか?」

俺が手招きしてイオリを呼ぶ。


「シンヤ様、どうしたと思うの?」

イオリは皆に注目され、戸惑いながらも俺に向かって歩いてくる。そして俺の前に来た時に俺は翠石の杖をイオリに手渡した。


「イオリ、いつも俺なんかについて来てくれてありがとうな。俺の感謝の意味を込めてこれをもらってくれない?」


受け取ったイオリは俺と杖をキョロキョロ交互に見て戸惑っているようだ。

「あの?これ?高かったんじゃないかと思うの。」


「あ〜、ちょっとね。でももう買ったし貰ってくれると嬉しいかな」


「うん、、、、シンヤ様、ありがとうと思うの」

そう言ってイオリは感動したのか泣き笑いのような笑顔で答えた。

それはそれは感動的な場面だったんだけど‥‥


やっぱり見せ物だよな?

勇者隊と俺のパーティどころか他の関係ない奴らまで俺たちをみてるんだよ。


ピュー。っと指笛を鳴らしている人まで居る始末だしね。

やっぱりここでみんなが踊り出すんだろうか?



なんとも中途半端な見世物が終わって俺たちはサイスの居城へ向かうと思いきや、話はそこで終わらなかった。


「ちょっとシンヤクン。それで私達の分のプレゼントはどこなの?」

コトハさんがそう切り出してきたよ。


えっ?なに?私達の分?

どうゆうこと?


いや、そう言えば確か、、、、楓が言ってたよな。


『お兄ちゃん、女の子ってのは贔屓が大嫌いな生き物なの。だから誰か1人の女の子に無条件に優しくするならそれ相応の覚悟を持つべきなの。』

あの時は、『なんじゃそれ?』と思ったけどようやくわかったよ。


女の子は集団になると完全に別の生き物だよな。

女の子こえぇ〜よ。


「いや、一斉に皆んなに渡すのにも芸がないだろ?

だから他のメンバーに渡すタイミングも考えて決めるよ。」

俺は胸を張ってそう答えたけど、完全に出まかせだから背中の汗が止まらない、、、


「そうなんだ?意外とサプライズ好きなのね。アヤや、エリシスさんと一緒に楽しみにしてるからね」

コトハさんにそんなプレッシャーをかけられてようやくこの話は終わったけど、、ほんと気を使うな。俺もハーレムパーティは男の夢だと思っていた時期があったけどね。


それからほんとにようやく、サイスの居城へむけて出発することになった。


コクランから出て少し歩くと早速、ベビベビベアー20体が現れた。

ちょっと多すぎないか?


打ち合わせ通りレン達に任せて俺たちは見学の時間だ。決して女の子の日だからじゃないんだからね。


「ケンタ、いつも通り敵の動きを止めてくれ。そして、カスミはファイアーだ。今回は手数ではなく一体ずつ確実に敵を減らしたいから頼む。

レナはルイへの指示を任せたよ。

カイトは敵の攻撃に備えて。タイミングは指示する。

ヤマトとリョースケは近接戦闘準備して。」

レンは素早く的確に指示を出していく。


そしてケンタがスキル名を叫ぶ。

「ネット」

ブッ、そのままか?

ネーミングセンスをどこかに忘れてきちやったの?この子。


ケンタが出したネットがベビベビベアーを包む。よしっ、ほとんどのベビベビベアーをネットで拘束した。


「‥ガファイア」

カスミがそう叫ぶと前回より一回り大きい炎の塊が2つ出来てベビベビベアーに向かっていった。


よく聞こえなかったけど、まさか、あのインドのファイターが使う技じゃないよな?炎が出たのは口からじゃなかったしね。


ベビベビベアーの内2体が炎に包まれたかと思うとそのまま消滅した。


残りは18体。

その内5体がネットの足止めにも負けず勇者隊に向かっていく。


「アースシールド」

カイトがそう叫ぶと鉄板がレン達の前に出来てベビベビベアーの行く手を阻む。


動きの止まったベビベビベアーにヤマトが飛び込んで斬撃を浴びせる。しかも連撃だ。

そして、今回はリョースケの槍もベビベビベアーの胸を刺し貫いていた。


しばらくするとヤマトとリョースケは5体を片付けることに成功していた。

前より戦いがサマになっているな。


そして、残りのネットに絡まっているベビベビベアーはルイによって命を刈り取られていた。


過半数の13体がルイの討伐数か、、、

ケンタが動きを阻害したとはいえ、大活躍だったなぁ。うちのけるべろすと替えてはくれないだろうか?


「皆んな、お疲れ様。今回はずいぶん動きがよくなったよ。レナもルイが大活躍だったね。」

レンは皆んなに声をかけている。



そうこうしている間に、またベビベビベアーが現れたよ。今度は13体。

今度は俺たちのターンだ。


「アヤ、倒せるだけ倒してくれ。コトハさん、ガルムを召喚頼むよ。エリシス、後は2人で抑えるぞ。」

そう俺が指示して戦闘が始まった。



「ターゲットオン」

アヤはいつもより一際大きな声でスキル名を叫んだかと思うと、光の玉が7つベビベビベアーに向かっていき、その全てが命中し、7体が消滅した。


残りの6体を盾を前にしてエリシスと地味に耐えながら攻撃していく。

チョーヤバい短剣を振り回すと当たりどころが悪かったのか一体倒せた。


よしっ、次だ。そう思い、正面を向き直ると、起きている敵はもう一体も居なかったよ。


俺が一体に苦戦している間に残りの5体をエリシスとガルムが仕留めたらしい。


「エリシス、ガルム、ありがとう。悪かった。」

なんとか戦闘は終わったけど、、

俺のが弱いのが勇者隊にもバレてしまったかな?


そして、そこからは魔獣が現れることもなく、サイスの居城に着いた。


目の前には立派な城が建っている。

西洋風の砦といった出で立ちのそれは少なくとも完成して5年はたっていないだろう。

結構建物が新しく見えるし。

まぁ、新築そっくりさんになってたら素人の俺にはわからないんだけどね。


そして、堀まであるにも関わらず城の中まで入るのは簡単そうに見えた。


なにしろ、正面の門は開いているし、そこから堀で阻まれているはずのところは跳ね橋が降りていた。


もしかして、あの仕掛けは俺たちを進入させないように使うのではなく、俺たちをにがさないように使うんじゃないのか?


そんなことを考えながら俺たちは城内に突入した。



つづく


ちなみにカスミが使ったのは『メガファイア』ですので、某インドのファイターとは何も関係が御座いません。

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