初めての魔獣支配
「そうよ、何勝手に手を出してくれてるのよ?ここは私が仲間のピンチに颯爽と現れて活躍する場面だったのに」
俺がレンに謝ると、宮下さんがまた絡んできた。
ほんとにメンドくさいな。
こんな女の子と付き合ったら、束縛が凄そうだよなぁ。
そのうち、俺の電話にかけてくれた時に『お掛けになった電話は電波の届かないとこにいるか、電源が入っていないためかかりません。』って音声にまで、『誰よ、あのオンナ?』とか言いそうな気すらするよ。
付き合うと言えば、まだ高校に行ってた頃宮下さんに告白されたことがあったんだけど、今考えるとあれってなんだったんだろうな?
その時は俺は宮下さんのことあんまりしらないし、昔のちょっとイヤな出来事を思い出しそうで断ったんだけど。
もし、受けてたら、『なに本気にしてんの?このモテない君が?』とかなじられたんだろうか?あの時はまだイジメられてなかったんだけど、、、思えばあの後だよな、、、
「ちょっとなに無視してくれているの?
ほんとに話聞いてるの?
それとも人語を理解する頭もないのかしら?」
‥‥さすがに言い過ぎだろ?これ、当事者じゃなかったら楽しめそうな気がするけどな。
「アイキャンノットスピークウイッチーズランゲージ」
文法が合っているか全く自信がないけどとりあえず、『魔女の言語はわかりません。』って返しといたよ。
あれ?魔物のほうがよかったかな?
「なんで英語‥‥えーと?誰が魔女ですって?こんな皆んながいる前で言われても、、、」
何故か赤面?してモジモジしている。
あれ?
ここは『キーッ、言ったわねぇ』って感じのリアクションを期待していたんだけど、、、女の子の中でも彼女はホントにわからない。
「それにしても、今回はやばかったと思ったから助太刀したんだけど。なんとか出来る奥の手でも持ってた?」
彼女は強そうに見えなかったのでそう尋ねた。
「えっ?私のスキルを知らないのかしら?」
知らないよ。
宮下さんって相手にわかってもらうつもりで話してるんだろうか?
「いや、知らないな、教えてくれないかな?」
正直、全く興味が湧かないんだけどさすがに空気を読んで尋ねたよ。
「私のスキルは『魔獣支配』よ。そして、オーガはこのルイが倒すハズだったのに見せ場を奪ってくれたって訳。わ、か、る?」
宮下さんはそう言いながら、馬車から疾風のように出てきたヒョウの頭を撫でる。
彼女?のカラダはしなやかな曲線を描いていて、ちょっと色っぽい。ちなみに彼女ってルイのことだから勘違いしないでね。
それとは関係なく、宮下さんのウザイ物言いに俺はちょっとウンザリしてきたよ。
しかし、撫でられてるルイは目を細めてキモチ良さそうだな。
「うーん、要はペットショップの店員さんみたいなもんか?」
あってるよな?
「ぺ、ぺ、ペットショップの店員ですって?
バカにするのもいい加減にしてくれるかしら?」
「いや、褒めてるんだけど。だって、今もケルベロスは俺に懐いてくれないんだよなぁ、アヤにベッタリだし。」
別に犬好きではないけれど、手を出しては噛まれるわ、足に小便かけられるわ、散々なんだよな。
一応、俺が召喚したハズなんだけど、、
「なんなのかしら?まぁ、いいわ。動物は純真だから、悪い人間はわかるんじゃないかしら?」
彼女は胸を張ってそう言うが残念ながら、張っても胸は少し寂しい気がする。
「すまなかった。次は手を出さないよ。しっかし、頼りになるんだなぁ、宮下さんは」
そうなんだよな、あれな性格じゃなかったら欲しい位だ。
馬車を引いているのも魔獣だ。宮下さんのスキルはハッキリ言って使えるんだけど、なんで選抜メンバーに選ばれなかったんだろう?
「‥‥まぁ、良いけど」
俺が謝って宮下さんの溜飲がさがったのか?話は終わった。
振り返るとエリシスはホッとした顔をしている。
心優しい彼女のことだ、揉め事が起こらないかハラハラしながら見ていたんだろう。
アヤとコトハさんはは何やらひそひそ声で話し合っている。しかも、チラチラ俺と宮下さんのことを交互に見ていたので妙に気になるんだけど、、、
イオリは構えを解いていた。‥‥構え?また、エクリクシスを使うつもりだったの?
「話は終わった?じゃあ、一旦ここで休憩入れるから各自食事取るなりしてね」
レンはそう告げると、皆は休憩に入った。
「しっかし、あのチビっこツインテールはなんであんなに生意気なんだ?昔はあんな娘じゃなかった気がするんだけど」
宮下さんについてついついアヤに愚痴ってしまう。
「うーん、レナちゃんはかわいい子なんだけどなあ。シンヤが絡むとあんなことになってしまうんよぉ。」
アヤがレナを庇う。あれ?珍しいな。
「ホントに分からないのかい?橋本くん。」
えっ?いつの間にか俺の背後に居たレンが話しに入ってきた。
「わからないというか、わかりたくないのかもな。
俺は俺に敵意を持っている相手には興味が持てないからな。それにしても、宮下さんは使えるのになんで勇者隊の選抜メンバーから抜けてたの?」
スキル『魔獣支配』だけど相当汎用性があるように見えるんだけど何故選抜に入らなかったのか疑問だった。
もしかして、あの性格のせいか?
悪い意味で異世界デビューしたように見えるんだけど、、、
「コトハと少し能力が被っているのと、後は城内に戦力をのこしたかったんだよ。留守番組みが心配だったのでね。しかし、見ての通りレナが居ないと選抜が回らない状況だから仕方がなかったんだ。」
あ〜、レンってば色々考えているんだな?
この世界に来てから意外と苦労してきているんだろうな。
「あれ?もしかしてコトハさんを引き抜いたことを遠回しに責められてる?」
これは当たりかもしれないな。
「ソンナコトナイヨ、ハシモトクン」
「レン、なんでそこは棒読みなんだよ?」
「あははっ、バレたみたいだね。まぁ、橋本クンをからかうのはこれくらいにして本当にごめんね、普段は結構良い娘なんだけどね。
頼むから彼女を爆発とかさせないようにしてくれないかな?」
レンはイオリのことをチラッと見ながら言う。
そりゃそうか?
俺だってあんなことがあったと言っても、元クラスメイトの爆破シーンは観たくないしなぁ。
「話は変わるけど、勇者隊は割りと連携がしっかりしているよなぁ。訓練とかしてたの?」
ちなみにウチは実践派なので訓練とかしたこと無いよ、ということにしといて。
実は、訓練とか考えた事もなかった。
だって皆、もともと俺よりずっと強いんだもん。
「あはは、そうだね。やれる事はやってるつもりだし、やっていくつもりだよ」
俺とレンのどっちがリーダーに向いているか、、、考えたくないな、、、
「‥俺たち、連携の訓練とかした事ないんだけど。」
「いや、、、橋本クンの所は彼女が居ればなんとかなるんじゃないかな?」
チラッとイオリを見るレン。
「いや、他のメンバーも頑張ってるよ。エリシスとかアヤとかコトハさんとか。」
「いや、橋本クンは頑張ってないの?武器練成しなかったの?」
‥‥あ〜、これ話すのイヤだな。
「まぁ、乞うご期待ってトコだよ。」
自分で言ってて思うんだけど、何がご期待なんだろうな、、チョーヤバい短剣しか無いんだけど。
ほんと悲しくなるな。
「レンクン、シンヤクン2人で何してるの?アヤシイなぁ〜」
コトハが笑顔で近づいてきた。
別に下卑た笑みではないので、レン×シンヤのカップリングを想像していたわけではないようだ。
「あっ、コトハ!元気そうだね。他のメンバーとも上手くいってるみたいだね。」
レンは爽やかな笑顔でコトハに応える。
呼び捨て、、なのか、、、?
イケメン様は何をやってもホントにカッコいいな。
腹が立つわ。
俺が同じ事したら、『何を企んでいるの?』とか言われそうなのに、、、
「うん、イオリちゃんは可愛いし、エリシスちゃんは美人で可愛いし、楽しいよ」
あっ、コトハさんってばアヤだけじゃなくてイオリとエリシスも毒牙にかけようとしてるの???
イオリ、エリシス〜、早く逃げてぇ〜。
「ちょっとコトハさん、程々に仲良くしてあげてよ。」
そう言った俺の腕にコトハは腕を絡みつかせ、
「それにシンヤクンが居るしねぇ」
いや、コトハさん、胸当たってる。
「仲が良いことで何よりだね。」
レンは他人事のようにそう言う。まぁ、他人事のなんだろうけどなぁ。
「こんなので照れてたら、ハーレムパーティーなんて維持できないよ」
コトハさんが俺に事実を突き付ける。
「‥‥‥‥いや、別に作りたくてこんなパーティー構成な訳じゃないんだよ。」
うん、次はオトコをパーティーに入れたいな。
出来れば俺よりカッコ悪いやつ希望で。
「またまたぁ、私含めて可愛い娘が揃ってるじゃん。」
コトハは悪戯っぽい笑みを浮かべていると、
「‥‥馬に蹴られても困るから私は戻ることにするよ」
レンは厄介ごとをさけるように逃げていった。
「‥‥イヤ、ちょっとレン兄さん、助けてくれないかな?」
そんなレンに助けを求めたけど、、、、
「あの、イオリって娘を勇者隊に頂けるなら考えてもいいけど?」
俺がそんなことは受けないとわかっててレンはそう答える。
この後、イオリが乱入してきてとにかく疲れたよ、、、、




