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初めての召喚

エリシスとエクリクシス‥‥紛らわしい。

こちらは俺、エリシス、アヤの3人。

あちらはヤマト1人だ。

やりようによっては勝てるはずだ。


「リーダー、先ずはシンヤクンが行こう」

そう告げてエリシスがスキル【五段突き】を使いヤマトに攻撃を仕掛ける。

‥‥いつまで続けるんだろうな?シンヤクンネタは。


ヤマトはエリシスの攻略を何とか捌いた上で反撃にでる。彼女より一撃多い六段突きを放つ。


エリシスは捌ききれない‥‥致命傷は何とか避けているものの、エリシスの体に少しずつキズが増えていく。


「ターゲットオン」

ヤマトの意識がエリシスに向いている隙に少し離れた所からアヤが光弾を放つ。

光弾はアヤの狙い通りヤマトの右側こめかみの辺りに直撃した。

そして、直撃によりヤマトが体制を崩した隙にエリシスがなんとか距離をとることができた。

しかし、アヤの攻撃はまったく効いていないようだ。


「はははっ、本当に歯ごたえがないぜ。少しは楽しませてくれよ。」

俺は余裕をかましているヤマトの背後から忍び寄り丈夫な棒を振り下ろす。


「はぁ〜?なにかしたか?」

しかし、ヤマトは俺が振り下ろした棒をアッサリ手で掴んでしまった。圧倒的だ。

ちょっと勝てる気がしない。


俺の心が早速折れかけてもエリシスの心は折れない。彼女が再度五段突きを放つ。

しかし、今度はヤマトに余裕で捌かれている。


ヤマトの反撃でまたエリシスにキズが増えていく。

アヤの援護もあって今すぐにやられることはないが、やられるのは時間の問題だと思う。


しかし、仲間が戦っているんだ。異世界に来た当初のように俺だけが簡単に諦めてしまう訳にもいかない。


今だ。

「ラックゾーン」

これで何らかの幸運で勝てるかもしれない。

俺は文字通り運任せで勝負を決めにかかった。


「ヤマト、4メートル後方にジャンプだ。それだけで橋本君のスキルは防げる。」

レンがそう叫ぶ。

『もしかして、ブラフか?』とも思ったけどここでそんなことする必要性を感じないよな。彼の全てを見通す目で俺に見えない何かを見ているのか?


マズイ!!!


このスキル、効果時間が短いんだよな。

もう少しすると効果が切れてしまうだろう?そうするともう勝つ為の策はほとんど無くなってしまう。


負けたら相手の望むものを渡さないといけないっていう勝負だったよな。

相手が欲しがるものなら実はなんとなく想像できる。イオリだろう?


それこそ奴隷の譲渡という話になったらイオリはどんな目にあってしまうことか。

イオリは今まで苦労してきたんだ。また、苦労の多い人生に逆戻りさせてしまう。

それがイオリの運命だとでも言うの?


ホントのホントに心の底から使いたくないんだけど‥‥使うしかないのか?

迷うな、やってやる。

運命なんてクソくらえだ。


「ダーツ召喚」

俺はいつも以上に気合を入れて叫んだ。



そして世界は時を止めた。


「またですか?懲りない人ですね。」

目の前に前回と変わらない姿のリヴが居る。


「悪い、リヴ。どうしても勝たないといけないんだ。早く始めてくれないか?」

俺は焦っていた。今回はちょっと勝てそうにない上に今回の決闘を行うにあたり証人は沢山いる。

負けた後に相手の言うことを聞かないという選択肢はとれそうにない状況だ。


ヤマト1人に勝てない実力でこの場にいる全員から逃げ果せる方法を考えなくてはならない。はっきり言って無理ゲーだよ。


やはりテロ扱いをされるのを承知でイオリのエクリクシスで目くらましand威圧して、その間に逃げるか?

あの大人数から、ヤマトの強さから、或いはレンの頭脳から逃げきれるのだろうか?


「‥‥ちょっとシンヤさん、あなたにはデリカシーが足りないのではないでしょうか?」

俺が加速する思考に振り回されている時に、何故か悲しそうな顔をしてリヴがそんなことを言った。


いきなり何を言っているんだ?このバカオンナは?


いや、女性という生き物はチョットした変化でも気付いてくれないとキレる生き物だと確か楓が言っていた気がする。


何か彼女に前回と違う点はないだろうか?思い出せ。

瞬間記憶能力なんて持ってはいないが、ここは分水嶺だ。


審判を買収すればどんな勝負でもかなり優位に進められる筈。『頑張ったけど負けちゃったね』とかは今は要らないんだよ、必要なのは結果だけだ。


これまでで一番に集中して前回登場時との違いを記憶の中で洗い出す。

そうしてようやくわかった。



「あっ?スカートの裾を5mm短くした?」

よしっ、正解だ。


「‥‥‥間違ってないけど気持ち悪いです。」

リヴはおぞましいものでも見るような顔で見てくる。

あれ?なんで正解なのに気持ち悪がられてるの???

どちらにしても気づいて欲しいのはそこでは無かったらしい。


「リヴ、悪かった。以前との違いがわからない。」

ここは素直に頭を下げてヒントを貰いに行こう。


「髪型ですよ。髪型。本当にわからないんですか?」


「えっ?あっ、そういえば‥‥」

何も変わってない気がするんだけど。


「毛先を1mm切ったの、やっとわかってくれましたか?」

わかるかぁ!俺はリヴの専属美容師じゃないんだぞ。


「そこまでヒントをくれたらさすがにわかるよ。それで、リヴ様そろそろダーツとかしません?」

とりあえず話を合わせたけど、ボロが出る前に本題にはいった。


「はぁ〜〜。普通髪型変えたら褒めるなりあるんじゃないんですか?ホントにダメ男ですね。こんなのになんでアリアは‥‥‥」

リヴは深いため息をついている。

いや、あの、俺って女の子と付き合ったこととかないしわからなくてもしょうがないんじゃない?

もしかして、アヤやエリシスもリヴみたいな事思ってて、、、


「シンヤ殿は本当に気が利かないな。あんなオトコを好きになるオンナが三千大千世界に居たりするものか?ホントにダメ男だな」


「うんうん、エリシスの言うことわかるわぁ、シンヤってほんまにダメ男やよなぁ。前の世界でも笑えるほどモテへんかってんでぇ。ほんまに気をつけた方がいいでぇ。モテないオトコは勘違いしてストーカーになるかもしれへんよ」


「それは最悪だな。それであんな幼いイオリと一緒の部屋で寝たがるのか?モテないオトコが奴隷であるイオリに夜な夜などんなことしてるか‥‥成敗してくれる。」


‥‥‥なんて陰口叩かれたり、、、なんてことさすがにないか?


「シンヤさーん?生きてますか?さっさとダーツしますよ。」


リヴが手早くダーツの窓の準備をする。


「あれ?今回おかしくない?」

的の内容だけど以下のようになっていた。


重力魔法 90度

時空魔法 90度

いつも通り 90度

召喚魔法 90度


なになに?とうとう魔法が?

重力魔法?相手に重力魔法をかけて動きを阻害したりするのか?


時空魔法?時間跳躍とか?


いつも通り?よくわからないな。


召喚魔法?コトハさんと同じか?

ユニユニ呼べるかな?


「とにかく投げるしかないな、エイッ」


俺は今回はかなりリラックスした状態でダーツを投げた。


矢が的に向かって飛んでいき、的に刺さる。


「トンッ」

また回転が弱まっていく。

ダメだ、毎回慣れないな、この瞬間は。

またドキドキしてきた。


的の回転が弱まっていく。

あっ、もう少しで文字が読めそうだ。

見えてきた、見えてきた。


‥‥ヨシッ、良くやった俺。

矢は『召喚魔法』の部分に刺さっていた。


「シンヤ、珍しくいいとこに当てましたよね。」


「リヴが褒めてくれるのも珍しいな。また、すぐに時が動き出すんだろ?また暫くお別れだなぁ。」

どんなのが召喚されるか楽しみだ。

もしかして帝龍だったりして。


「あれ?何か勘違いしてませんか?さっきのダーツはジャンルを決めるだけのものなんですが‥‥今からもう一度ダーツを投げてもらいますので。」

そう言いながらリヴが的を入れ替えている。


的に書かれた内容は以下のようなものだった。


帝龍エンド 15度

番犬けるべろす 200度

エンペラーオーガ 30度

亡霊騎士団長 115度


あれ?今回はどれに当てても勝てそうな気がするんだけど。超イージーモード?


「エイッ」


俺は今回はリラックス通り越して只の気の抜けた状態でダーツを投げた。


矢が的に向かって飛んでいき、的に刺さる。


「トンッ」

また回転が弱まっていく。

ダメだ、今回は全くドキドキしない。

こんなダーツは初めてだ。


もう少しで文字が読めそうだ。

見えてきた、見えてきた。


うーん、なんの感慨もないけど。

『番犬けるべろす』のところにダーツが

刺さっていた。まぁ、一番面積が広いからそうなるよな。


そして時は動き出した。


「魔の世界の秩序を守る番犬よ、我が命に従い顕現せよ。出でよ番犬けるべろす」


シンヤのかざした手の先に光が集まる。


眩しくて少しの間は何も見えない。

そして、暫くして光に目が慣れてくるとけるべろすの姿が目に映った。


へっ?チワワ??


ウルウルした瞳、愛らしい容姿。大きさも普通のチワワと同じだ。こいつがけるべろす?

ベビベビベアーの件もあるし見た目だけで判断するのは危険だけど、、、


見た目はこんなのだが俺なんかには計り知れない強さを持っているってことか?


「ま、まずい、そこを攻めてこられるとは完全に計算外だった。」

真実を見通す目を持っているレンが思わず呟いてしまう。相当ヤバいやつみたいだ。


そして、けるべろすが口を開く。


そこから地獄の業火が吹き出す‥‥‥ことはなく、その口から漏れたのは

「くぅーん、くぅーん」という可愛い声だけだった。

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