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初めての‥‥‥

世界が時を止めている。


ダーツ召喚を使っている時、皆は瞬きすらしていない。もちろん、マネキンチャレンジをしているリア充達というわけでもなかった。


この状態で攻撃出来たらホントに無双できるのになぁ。あっ、攻撃力弱いままだから倒すのにかなり時間かかりそうだけど。


「何、ぼーっとしてるの?ダーツ召喚のお時間ですよ。起きてますか?起きてますよね?死んでもいいんだけどね」

いつの間にかリヴが現れて目の前に立っている。


「あっ、悪い悪い。それにしても、リヴは人を罵倒せずには生きられない。そんな業をもって生まれて来たのか?」


「コホン、そんなわけないじゃない。私はSかMかで言われれば断然Mだから。ベッドの中では」

いや、誰が下ネタに舵を切れって言ったんだよ?


実は危ないオンナということが発覚したリヴと雑談を続けるのはとてつもなく危険な気がしてきた。

それで俺は大急ぎで話を進める?


「ところで、今回はダーツの中身はどんなかんじになってるの?」


「もぅっ、せっかちさんですね。まぁ、いいでしょう。本題に入りますね。」

リヴは無理矢理話を変えられたので一瞬顔を顰めたが、すぐに持ち直してダーツの準備をしてくれた?


リヴが用意した的は

光学兵器発射 角度45度

5分だけステータス10倍 角度45度

とりあえずDEATH 角度45度

罰ゲーム 全裸でエリシスに告白 角度75度

罰ゲーム 全裸でイオリに告白 角度75度

罰ゲーム 全裸でアヤにツンデレる 角度75度


「‥‥‥ちょっと待て、、、前回とほとんど変わってないじゃないか?変わったところと言えば罰ゲームの相手が俺の周りに居るオンナノコって位か?どうなってるんだこのダーツは?パーティを解散に追い込みたいのか?」


「あらあら?何をいってるのかしら?この

ダーツ召喚は発言時に望んだことを叶える内容が的に入るようになってますから」

また、それか?


「俺は何て望んだんだ?」


「自分自身でわかりませんか?まぁ、いいです。

『イオリを助けたい』と望んでダーツ召喚したんですからこういう的になったんです。前回よりかなり甘くなっているでしょう?」


「まぁ、そう言われるとそんな気がしてきたが、とにかく光学兵器かステータス10倍を引かないと。。。エイッ」


俺はプレッシャーのため、何時もより力んだ状態でダーツを投げてしまった。


しかし、幸いなことにちゃんと矢が的に向かって飛んでいき、刺さる。


「トンッ」

的の回転が弱まっていく。

ダメだ、やっぱりドキドキしてきた。


あっ、もう少しで文字が読めそうだ。

見えてきた、見えてきた。


‥‥ウソだろ?

矢が刺さったのは無情にも『罰ゲーム 全裸でアヤにツンデレる 』の部分だった。


これまで俺は筋力のステータスを除いては大体当たりを引き当てていた。

『ダーツ召喚』さえ使えば何とかなると思っていなかっただろうか?


ダメだ。頭が真っ白で何も考えられない。

イオリ、イオリ、イオリ、イオリ、イオリ、イオリイオリイオリイオリ。

イオリが俺のせいで死んでしまう。


そうだ、今からでもなんとかしないと。


「女神様。罰ゲームは受けます。その上でもう一回ダーツをさせて頂けないでしょうか?」

俺は恥も外聞もなく頭を下げた。


「ハァ?アレだけダーツの恩恵をうけておきながら今度はルール違反してくれって言ってますか?バカですか、あなたは?」

しかし、リヴの反応は冷たいものだった。


「バカでもいい、卑怯者でもいい。俺の命が無くなってもいい。イオリを助けてくれ」

俺は意図せず涙さえ浮かべてしまっていたが、それにさえ気づかず必死に懇願した。


女神は俺のそんな態度につられたかの様に何らかの衝動を抑えて、口元に手を当てて耐えていた。

そして尚も何かに堪えるようなしぐさをしながら言い放つ。


「あれも欲しい、これも欲しい?買い物中毒の主婦か何かですか?そんなもの叶える必要はないですわ。

サッサとこの空間から立ち去りなさい。」


「でも、、そこを何とかお願いします。」

深々と頭を下げて更にお願いするが、、、


女神はとうとう、俺の顔すら見たくないとばかりに後ろを向いて絞り出す様にひとこと告げる。


「失せろ、ニンゲン風情が」


言われた俺は呆然と突っ立ったってしまい、心は時を止めていたが、時は動き出した。




オトコが剣を振り上げている。

俺はカラダの自由が全くなくなってしまい自動的に体が動き出した。


これが罰ゲームの強制力なのか?


一瞬で全裸となった俺は綾崎に流し目を送った後、更に勝手に口が動く。

「アヤなんて‥‥ぜんっ、ぜん。好きなんかじゃないんだからね」


アヤは爆笑している。

「アハハハッ、アホや、アホがおるやん。」


そして、イオリはハイライトが消えた目で明後日の方向を見つめ続けている。


そんな状況を目の前にして、オトコは状況について行けず完全にフリーズしている。


そして、エリシスは‥‥いない?


「ウグッ‥‥不覚」

オトコが前のめりに倒れていく。


オトコの後ろからエリシスが現れた。

いや、エリシスが殺ったのか?


「遅くなってすまなかった。それにしてもシンヤ殿はすごい機転だな。完全に相手の動きを止めてしまったぞ。お陰で確実に仕留めることができたな。」


エリシスは何か非常に勘違いしていた。

でも、このまま勘違いさせておこう。


「エリシスならここまでお膳立てすれば楽勝だと思っていたよ。」

もちろん、この台詞を言うときはドヤ顔だった。



「シンヤ様、シンヤ様、これでカラダを隠してください。」

あたふたした様子でイオリが荷物袋から取り出した火トカゲの衣を渡してくれる。

俺は真っ裸だったがすっかり忘れていた。


丸出しだったわ。

丸出しでドヤ顔、、、

うん、忘れよう。俺は何もしていなかった、、、、


火トカゲの衣を腰に巻いてようやく変態バージョンじゃなくなった俺はアヤを見る。


まだ、爆笑していた‥‥‥



五分後、、やっと落ち着いたアヤが言った。

「そう言えばもうスライムはいいん?」


その言葉で火がついてしまった俺はそこからまたスライムを探し始めた。

そして、スライムとの死闘がはじまった。




スライムを探し始めたのはちょうど日の入りだった筈だが‥‥‥

「よしっ、スライムエンブレムぅ〜◯ットだぜぇ」

俺が狂喜乱舞している後ろで朝日が昇っていた‥‥



一方、リヴはまだ笑い転げていた。

実は今回のダーツは最初から『とりあえずDEATH』以外は全てイオリを助けることが出来る結果に繋がっていた。


何しろ時間を稼げればエリシスが助けに来る状況だったからだ。


リヴはそれがわかっていたので必死に頼むシンヤに対して笑いを堪えるのに精一杯だったのだ。


有り体に言うと、リヴは性格が悪かったので実はイオリを助けられることを教えてなどあげず、シンヤのあたふたする様を愉しんでいたのである。

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