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初めての連れ込み宿

凛とのやりとりを終えた俺は心配そうに俺の顔を覗き込むイオリに笑顔で答える。


するとイオリが

「なんで急に何かを企んでそうな顔をすると思うよ。」

と小首を傾げて言う。


あれ?笑顔のはずなんだけど、、誰が何か企んでそうな顔だよ?


「いや、今日は昼過ぎまではエリシスと過ごすからイオリはこれで何か美味しいものでも食べて」

そう言って金貨を一枚イオリに握らせた。

そして、俺は部屋をでた。別にイオリのコメントがショックで逃げ出したわけじゃないんだからね。


「ドラゴン料理のフルコースが10人前位は食べれると思うの。正直、シンヤ様の金銭感覚が心配だから、これはヘソクリに回しておくと思うの。」

俺が部屋を出る間際、イオリがそう言っていたらしいけど俺には全く聞こえていなかった。



そして、エリシスが待つ泉の広場に向かった。


「悪い、エリシス、結構待ったか?」

「いや、いまきたところだが」

デートでお決まりの文句を言うエリシス。

もちろんデートではない。


「ところで、イオリ殿が何故いないのだ?もしかして、私と2人きりで人気のないところに行って‥‥‥」

エリシスはそう言って自らをかき抱くような仕草をする。何故かその頬はなぜか赤みがさしている。

もしかして、、、、くっ、殺‥でもしたいのだろうか?そう言えばエリシスって女騎士っぽいし。俺ってばオークっぽいし。


「‥‥‥‥イオリ抜きで会ったのはちゃんと、意味があるからな。前に言っていた短期的な目標の事だ。」

そんなこと覚えてなかったのかな?なら、わざわざこんな場を作る必要がなかったかもしれない。


「短期的な目標?確か‥お金を貯めて何かを買うという事だったな?」

なんだ覚えてたのか?


「そうだ、あれはなんだと思った?」

もしかしたら、勘のいいエリシスなら俺の目的を察しているかもしれない。


「新しい奴隷でも買うのかと思ったな。」

俺の思った通り、俺の目的を察していたようで即答するエリシス。


まぁ、俺の予想とは随分違った、、、


「ちょっと待て、新しい奴隷を買ってどうするんだ?イオリが居るのに」

エリシスの考えがさっぱりわからない。


「普通に考えると性的な欲求を満たす奴隷だな。」

せ、性奴隷だと‥‥?

この世界ではそんなものが存在するのか?

うらやま‥‥コホンッ、けしからん。


「えっ?俺?そんなに飢えてそうにみえた?」

脂ぎった金持ちの商人みたいに見えてたり?


「こういっては何だがあまりモテそうなタイプにはみえないな。」


な、なんだと?


いや、薄々気づいてはいたがイオリにしてもエリシスにしても全然俺を意識した様子がない。


いや、こんな俺でも前の世界で1人告白してくれた人が居た。あれは本気だったのかな?

それともからかわれただけ?


「なんなら私のムネでもまた触ってみるか?」


‥‥‥‥?‥?‥‥‥?

喜んで!

とか何処かの居酒屋みたいに元気よく言ってみたい。しかし、話の流れから言って冗談だろう。


‥‥‥わかっている。そうさ、わかって、いるさ。それでも、もしかしたら1パーセントくらいは本気の可能性も‥‥


「なんてな。もちろん冗談だぞ。ちなみに私はに縁談話ぐひっきりなしに来ている、私に選ばれる男性は幸せものだとは思わないか?」

エリシスが自慢を混ぜ、軽い口調でそう言った。

こいつ、、、いつかイタイ目に‥‥‥いや、気持ちイイ目にあわせてやる。


「エリシス。話が脱線したが俺が買いたいのはエリシスだ。」

俺は話しを本題にもどす。


「えっ?私?それは私が欲しいという事か?お金で?それはちょっと人として‥‥「悪い、エリシス。言い間違えた。俺が買いたいのはエリクサーだ」

言い間違えたので俺はすぐさま言い直した。


危ないところだった。今の俺の発言は変質者一歩手前どころか一歩先に進んでそうな位の発言だった、、

相手がエリシスじゃなくてイオリなら今頃牢獄行きだったかもしれない。


「えっ?えりくさー?あー、エリクサーだな。。。もしかして、イオリ殿の為に?」

エリシスはすぐに頭を切り替えて理解してくれた。


「いや、その言い方で言うなら自分の為だよ。俺がどんな手を使ってでもイオリを元気にしたいと思っているんだから。」

俺は想いを口にした。思わず両手を強く握り込むほどの想いがこもっていた言葉は、エリシスにちゃんと届いたようだ。


「そうか。思ったより情が深い男なんだなシンヤ殿は。それでお金がいるんだな?」


「そうだ。病にかかって四年経ってるみたいでもう時間がないんだ。1日でも、、1秒でも早く病を治してあげたいんだ。」


「わかった。私も頑張るからそんな悲壮感に満ちた顔をしないでくれ。」

なんだかんだでエリシスはお人好しなので一緒に背負ってくれるらしい。ほんとに頼もしい仲間だよな。


「そして、今後の方針だが、スライム討伐に向かう。スライムエンブレム狙いだ」

俺は高らかに宣言した。



「‥‥いくらなんでもギャンブル過ぎはしないか?」

しかし、エリシスは今度は少し困ったような顔をして俺を諌めるので、


「うーん、、、、ここは俺に任せてくれ。」

胸をはってエリシスを安心させるようにそう言ったのだが、その言葉を聞いてエリシスはなぜか頭を抱えてしまった。


「更に倍にして返すとか言い出さないし、まだ完璧にギャンブル依存症にはなってはいないとは思うのだが‥‥」

何か小さな声で呟いている。



だめだ、やはり運のステータスのことを話さないと話が前に転がってくれない。むしろ後ろに転がってる気すらしてくる。


はぁ〜、しょうがないか。ここは話すしかないか。


「ちょっと二人きりになれる場所に行きたいんだがどこか知っているか?」


「ふ、ふ、二人きりだと?」

エリシスが何故か目をまん丸にして驚いている。


「そうだなぁ、俺はこの街に詳しくないからな。エリシスがよく使っているところを教えて欲しい。」

知ったかぶりしてもどうせばれてしまうと思い、場所はエリシスに任せることにした。


「よ‥‥よく使ったりするのか?シンヤ殿は?」

エリシスは少し声を震わせながらそんな質問をした。


「あー、そうだな、前の街では結構使ってたな。」

これはウソだった。何しろひきこもっていたから。まぁ、もし引きこもっていなかったらカラオケボックスとかでちょっとした秘密の話をしたりしたんだろうか?そう思ってのウソだった。


そう、引きこもってた経験は俺にとってもまだある種の後ろめたさを持っているからな。まぁ、仕方がないのかもしれなかった。


「そ、そうなのか。結構行ってたのか?意外だな」


??あれ??引きこもりだったことがばれてるのか?


「いや、結構ってこともなかったかも‥‥たまにかな」

どんどん勢いがなくなる俺。


「まぁ、いい、私も行ったことはないのだが場所は知っているので入ろう。」


そしてエリシスの案内で、ある宿の前に着いた。

エリシスが先に進んでいく。


「夕焼けまでの時間で銀貨一枚だよ」

受付のオバサンにそう言われてエリシスが手早く銀貨をはらい、指示された部屋へ入っていく。


「ココでよかったか?」

エリシスが尋ねる。


「えーと、連れ込み宿だよな?ここ。」


「そうだな。シンヤ殿が二人きりになりたいというのでな。」

赤面してエリシスが、言った。いや、そんなに赤面されると俺まで照れてくるよ、、


「‥‥‥まぁ、間違ってはないか。さっそくだが俺の秘密を話そうか」


「わかった。心して聞こう」

エリシスは真っ直ぐ射抜くような真剣な目を俺に向けている。


もし、ここで『ハァ、ハァ、俺の秘密はこのパンツの中にある。ちょっと見てくれないか?』とか言ったら二度と口をきいてくれそうにはない位真剣な目だ。


「他言は無用で願いたいんだが、俺の運のステータスは3100なんだ。しかし、千の位は他人からは見えないみたいだ。これはウソじゃない。そのステータスがあるからやたらレアドロップするんだよな」

なんか話してみるとものすごくウソっぽいけど、果たしてエリシスは信じてくれるんだろうか?


「あー、、、、、普通は信じられない話だが確かにドロップ率が異常だったものな。あんなのは見たことがない。あぁ〜、それでスライムエンブレム狙いなのか。‥‥‥間違ってはない考えだな。」

し、信じてくれたよ。

エリシスさんさすがだよ、彼女の背中に天使の羽が見えてきたかも。


「話はそれだけなんだけどまだ時間もあるしちょっと色々(エッチなことを)していくか?」

さり気なさを装って俺がエリシスに問いかけると、、

、鬼のような顔をしたエリシスがこちらを見ていた。



一旦宿にもどってイオリと合流し、善は急げとばかりにそのままスライムの居た森を目指す。

すると、、、


「つけられているぞ。」

エリシスがそう言った。


俺は特にそう言う感じはしないけど、イオリもウンウン首を縦に振っているし、たぶんつけられているのだろう?


「しかし、なんで俺たちなんだ?」


「私の考えでよかったら話そうか?」

エリシスは心当たりがあるようで即答した。


「是非聞かせてくれ。」


「昔々、ある所にスライムエンブレムを売って大金を手にした若者がギルドでもひと暴れして有名となってしまいました。

良からぬことを考えた悪い人達が、そのパーティは3人しか居ないし、少し遠出した時に闇討ちして有り金とオンナを奪おうと考えました。。。。。。

そんなとこじゃないだろうか?」

‥‥あ〜、思ったより分かりやすい理由だったよ、、


「‥悪かった。俺が考え足らずだったんだな」


「いや、私は全てをリーダーの所為にするつもりはない。」

相変わらずエリシスさんは美人なのにカッコイイ。

近づくと物凄いいい匂いするのにカッコイイ。


「イオリも勿論そうだと思うよ。」


「ありがとう二人共。」

俺は思わず頭を下げていた。




「いや、当たり前だ。ところでリーダーはどう対処するつもりだ?」

エリシスにも考えはあるだろうにリーダーの俺を立ててくれている。きっと俺に自信を取り戻させようとしてくれているのだろう。

その優しさがむしろ、ココロに突き刺さるんだけどね。


「出来るなら奇襲がいいけどな。出来て待ち伏せじゃないかな?」

俺がなんとか冷静に答えを出すと、


「なるほど、それならあの洞窟のようなものに入って待ち伏せするか?何かの巣の可能性があるので手早く対処する必要があるが。」

エリシスが具体策をすぐ提案してくれる。やけに手慣れているな。こういうことは初めてではないということか?


「悪い、突入はエリシスに任せる。俺は洞窟の入り口に近いあたりで敵を待ち伏せる。イオリ はエリシスの側に居てくれ。」

俺が指示を出すと二人は行動を開始した。


そうして予想外の対人戦がはじまった。


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