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チート転生者と白狼娘  作者: ゴルゴン
16/17

貴族は苦手

どうチートにするか迷います。

  今日は街の郊外にきている。

  周りに人の姿はないが見晴らしはいい平原だ。

  なんでこんなところに来たかというと大樹山で放った『破滅の熱風カタストロフィブラスト』の魔力の制御の練習をしに来たのだ。


  この魔術は威力は凄まじいが燃費が悪く一発全力で撃つだけで気絶してしまうほどだ。

  実際の威力はリューグに防がれてしまったが大樹山程度なら簡単に消し飛ばせるらしいのだがそれを防いでみせたリューグも化け物である。

  こいつを全力で放つのではなく普段は付与エンチャントととして使い鎌鼬のように気軽に放てるようにするのが目標だ。


  ホロには周りの監視をお願いしている。魔物はもちろんだがあまり人に見られたくないのもある。


  タクヤは神羅を見つめながら魔術のイメージをする。

  『死炎』を唱え神羅の刀身に紅い炎を纏わせる。

  刀身の根元から紅い炎が上り刀身を覆い尽くす。

  次は『竜巻トルネード』で炎を荒々しくさせ神羅の長さを計りづらくする。

  傍目からは激しく見える魔術だが唱えている本人に対しては害はないようで炎の熱が全く伝わってこない。


  できる限り小さくしたがこの勢いが限界らしい。

  魔術のおかげで刀身の長さは少なくとも2メートル以上には見えるはずだ。しかも即死級の魔術が付与エンチャントされている。


  最後にこの状態で鎌鼬を放ってみる。

 

  近くの岩に向かって死炎を纏わせた鎌鼬を撃った。

  岩に当たると岩はまるで溶岩のカッターにでも切られたかのように断面がドロドロに溶けてバターのように両断されてしまった。

  魔力はそこまで込めていないが威力は十分あるらしい。


  「この魔術を名付けるなら……『鎌鼬・滅殺』とかなかなかいいかもしれないな。ひねりが足りないかな……」


  タクヤがブツブツと独り言を言いながらそこらを歩き回っているとホロが声をあげた。


  「タクヤ様!!十五人ほどの人数の野盗の人達がこちらに近づいてきております!」


  「……こんなところにまで盗賊なんているのか。まあ魔術の出来を確かめるいい機会だな」


  一旦魔術の名前を考えるのは後にして馬で近寄ってくる集団に意識を向けると見るからに見すぼらしく汚い格好をした奴らが俺たちの前で馬の脚を止めた。

  彼らは馬車も連れているが血がこびりついているから行商人か誰かを襲撃してきた後なのだろう。


  「ようニイちゃん……こんなところでそんな美人な女連れて何してたんだぁ?」


  盗賊のリーダーらしき男と部下達がニタニタと気色悪い笑みを浮かべホロを見ながら聞いてくる。

  ホロはそんな視線を受けてもケロリとしておりいつでも戦えるように背負っているクレイモアの柄に手をかけている。

  なるべく冷静に応えようと思って適当に考えていると頭の中で声が響いた。


  ”殺セ……”


  目の前の下衆な男達を猛烈に殺したくなってきた。まだなんとか冷静だがこれが殺戮衝動なのだろうか?

 呑気にそんなことを考えていると一瞬だけ馬車からガタンと何かが動く音が聞こえた。


  「まあデートってところだな……ところでお前達は何を収穫してきたんだ?」


  盗賊のリーダーはよくぞ聞いてくれたと言わんばかりに自慢げに胸を張って陽気に答える。


  「実はこいつらはこの国の貴族か何かだったみたいでよ、お嬢さんも使用人もみんな美人だからこれから俺達で味わってから奴隷商に売り渡そうとしてたんだがもう一匹いい商品が目の前にいるから今からお前をぶっ殺して奪い取ってやるよ!!ひゃ〜はははは!!!」


  周りの男達もゲラゲラと笑っている。


  「そうか、じゃあ手加減はいらないな……ホロ、もし俺がおかしくなったら……とりあえず抱きついてくれ」


  「えっ?それってどういう……」


  ホロが何か言い終わる前にタクヤは殺戮衝動に少しだけ身を任せ盗賊だけに狙いを定めて殺していく。

  いつものように風体など使わずに竜力と死炎と鎌鼬を使って盗賊達を殺していく。


  盗賊のリーダーは信じられないと言った表情をしながら目の前の惨状を見つめている。


  たった一人の冒険者に十五人もの部下達が蹂躙されていく。ある者は真っ赤に染まる引き寄せられそうな炎に焼かれまたある者は鎌鼬でみじん切りのされまたある者は剣で首と胴体が泣き別れし籠手を装備した拳が顔にめり込み頭蓋を潰す。

  サーベルを振り回す者もいたが手首を掴まれそのまま握りつぶされている。

  返り血を全身に浴びながら盗賊達をバラバラにしていく様はただの殺人鬼である。


  「な、なんだこいつ?!!やばすぎるぞ!!」

  「化け物!!化け物めぇぇぇぇ!!!」

  「に、逃げるんだぁ……勝てるわけないよ……」

  「ゆ、許しプギャッ!?!」


  盗賊のリーダーは部下が数名やられると他の部下に指示を出し反対方向に逃げ出していく。


  「てめえらずらかれ!ぜってぇ死ぬんじゃねえぞ!!」


  「逃すかよ……!」


  全員が同じ方向に逃げていくので先ほどの魔術を使ってみる。

  さっきと同じように魔術をイメージしていく。

  一度目と違い急速に構成されていく。頭の回転率がさっきと違う。


  「『鎌鼬・滅殺』」


  すでに遠くまで逃げているので当たるかはわからないが適当に横薙ぎに魔術を振るう。

  100メートル以上は離れている馬に追いつき盗賊達を馬ごと焼き尽くした。

  盗賊達が死んだ場所に行き武器を拾い鑑定して行くがただの鉄でできた剣やナイフばかりだった。

  最後にリーダーの剣を拾うと見た目はあまり変わらないが少しだけ軽い。

 

  『グレン剣……材質、アダマンタイト。炎魔石が組み込まれた赤い刀身の剣。傷口を燃やすことができるが使用者の魔力次第で威力が変わってしまうが単純に頑丈で切れ味も良い剣』


  「思わぬ掘り出し物だな、見た目は赤いブロードソードだけどホロにあげようかな」


  剣を鞘に戻しホロの元へ戻るとホロは馬車の中にいたの人の安否を確認していた。


  「大丈夫ですか……?」


  手足を縛っていた縄を切りながら安否を確認する。

  俺も馬車の中を覗いてみると三人の女性がいた。

  三人のうち二人は上等なドレスを着た獣人だ。貴族なのだろうか?二人とも丸い熊のようなケモミミをしており一人は若くもう一人は壮年といった感じの女性だ。最後の一人はメイド服をきた褐色肌のエルフだった。

  貴族の女性は縛られていた手首を押さえながらこたえる。


  「え、ええなんとか大丈夫よ……あなたは……ヒィッ!」


  壮年の女性は馬車を覗いていた俺を見て怯えたように声を出した。


  「タクヤ様……そのお姿では誰でも怯えます……」


  俺を見たホロは少しだけ呆れたような表情をしながら言う。

  改めて自分の姿を確認すると全身に返り血を浴びていた。特に酷いのは盗賊の頭を貫通した拳で肉片まで付いている。

  全身を鎧で包み返り血を滴らせながら覗いている者がいたら誰だって怯えて当然である。


  「失礼した、ちょっと血を払う」


  馬車から少し離れ『風体』の風で血を吹き飛ばす。

  周りの草原は赤く染まって行くが気にしない。

  『風体』の応用で行なっているがまるで全身にドライヤーの風を浴びているような感覚だ。

  ある程度血を払うと馬車の中からホロと貴族達が降りてきて三人が頭を下げて礼を言ってきた。


  「危ないところを助けてくれてありがとうございました……!あなたがいなければ娘と従者共々盗賊の慰み者になっていたやもしれません。お礼をしたいのですが生憎今は手持ちがないので屋敷まで来ていただけませんか?」


  娘の方は熱でもあるのか顔を赤くして俺を見ている。


  「目立ったお怪我もなかったのですぐに出発できますがどうしますかタクヤ様?」


  そう聞かれ俺はしばし考える。

  クラークのこともあり正直貴族の家に行くなど気がひけるし生前何もしていないのになぜか目立っていたのもありこれ以上目立ちたくないのだ。


  「あーたまたま通りすがったから助けただけだから気にしなくて結構です。それにお金に困るような生活はしておりません」


  その言葉に褐色エルフは眉をピクリと動かし一瞬だけ睨んできた。

  貴族の方は今度はめげずに娘の方が誘ってくる。


  「で、でしたらお食事はどうでしょうか?!我が家の料理人はこの国で五指に入るほど美味しい食事を作れます!」


  「料理………」


  ホロが耳をぴくりと動かし呟いている。 白狼の食欲は止まることを知らないようだ。


  「……ホロはどうしたい?腹が減ってるなら行ってもいいぞ」


  「え?!いいんですか?私は……行ってみたいです」


  ホロは少し考えた後正直に答えた。

  俺も少しは腹が減ったしまあいいかもな、もし毒なんか入れたら皆殺しにしてやればいい。


  「わかった。では護衛も兼ねて貴方方のお屋敷にお邪魔させたいただきます。一つ確認したいのですがクラークとは無関係の方ですよね?」


  「クラーク?ああ最近没落してしまった貴族ですよね?私達はあの方と仲良くなどなれませんわ」


  そういえば獣人やエルフなどの亜人を誘拐して売りまくっていたんだったな、そりゃ仲も悪いよな。


  「つまらないことを聞きました、では早速行きましょう。もうすぐ日も暮れそうですし急ぎましょう」


  俺とホロは馬車には乗らずに盗賊達の馬に乗り周囲の警戒をする。

  馬車の御者は褐色エルフメイドがやってくれた。

  彼女は口数が少なく目つきも鋭いが無駄な肉のついていないしなやかな肢体をしている。

  ぶっちゃけ貴族達よりも美人だが周囲を警戒しているのもあり隙がない。もしかしたら貴族達の護衛役でもあるのかもしれない。


  なんとか日没前に街の門に到着した。門の衛兵に止められ馬車の中を見るとめちゃくちゃ畏まっていた。

  もうすぐ仕事が終わるのか疲れた顔をしていたが一瞬で姿勢を正し通してくれた。


  「このまま王都の方へいきます。到着するのは夜になりますが夜の王都は衛兵が常に巡回しむやみに出歩いているは輩を捕らえるかもしれないので外に出ないようお願いします」


  「王都はなかなか物騒なところなようだな」


  「いくら治安が良い国といっても他国が刺客を送ってくることもありますからね、油断できない。あ、ご紹介が遅れました。私はエミリア・ローデン様のメイド兼護衛を務めているルカです。以後お見知りおきを」


  無事に街に入り少しは気が抜けたのか褐色エルフメイドが話しかけてくれた。声は大きくないが凛々しく不思議とはっきり聞こえてくる。

 

  しばらく馬車を護衛しているとまた門が見えてきた。門の向こうでは豪奢な建物がたくさん見えるので王都まできたということだろう。

  気づけば周囲の喧騒は小さくなり人通りも減っている。

 

  門に着くとまた衛兵に止められた。

  今度の衛兵はさっきよりも驚いていなかったが俺とホロを不思議そうな顔でみてきた。


  「やっぱり貴族様の護衛ってのはちゃんとした兵がやるのか?」


  視線がなんとなく気になったので聞いてみると衛兵は頷いた。


  「普通は屋敷にいる騎士が護衛に当たるはずだ。冒険者の中には刺客や盗賊がいることもあります」

 

  なるほど、確かにそうだ。ボアラのような奴がいそうだしな。


  すっかり日が沈みようやく屋敷についたのか馬車が止まる。すぐにルカが馬車を開けエミリア達を降ろした。


  「ようやく着いたわね〜ささ、冒険者様方上がってください!馬車は他の使用人に任せましょう」


  気づいたらルカが屋敷の大きな扉の前でスタンバッていたのでエミリア達の後につく。


  屋敷に入るとまるで某ゾンビゲーの洋館を明るくしたような煌びやかな内装をしていた。

  床や階段には真っ赤な絨毯が敷かれツボや絵画などが飾られている。天井には魔石をふんだんに使って作られたシャンデリアのようなものが吊るされており神々しい光を放っている。


  「おかえりなさいませ奥様。そちらのお二方はどちら様でしょうか?」


  二階から燕尾服をきた中年の男性が降りてきた。

  メガネをかけてはいるが髪は黒く顔にはシワがたくさんありスマートな体型だ。執事なのだろうが歩くときに音がしない上にルカ並みかそれ以上はありそうだ。


  「ああガルマただいま。こちらの冒険者様たちは私とエミリーとルカの命の恩人だよ。もてなしの準備をしておくれ。夫にも紹介しなきゃ……そういえばバタバタしてて自己紹介してなかったな、あとで改めて紹介するけど私はエミリア・ローデン。ジーグ・ローデンの妻の熊人です。もう一人の熊人は娘のエミリー・ローデンです。エミリーはいつの間にか自室に着替えにいっちゃったみたいだねえ……あ、この執事はガルマ。見た目通り執事だよ」


  ガルマは静かに頭を下げる。


  「俺の名前はタクヤ、最近C級冒険者になりました。こちらの白狼人はホロ、俺の……恋人です」


  少し迷ったが恋人と言っておいた。隣にいたホロは実に嬉しそうに尻尾を振っている。


  「ホロです。タクヤ様に命を救われて以来ずっと一緒に行動しています。タクヤ様一筋です」


  自己紹介を終えると二階からまた一人の男性が降りてきた。

  赤や黄色などの派手な色を使ったダブレットやサーコートを着用し指には高そうな指輪がいくつもはめられている。

  特徴だけなら優雅な貴族なのだが全身が筋肉の鎧で覆われており服はピチピチで強面だ。

  プロレスラーが貴族の服装をしているようなもので似合っていないので笑いを堪えるのが大変だ。


  「おかえりエミリア、エミリーを親に見せると言って帰省していたのに随分早い帰りだったな。それに護衛まで誰もいないではないか。何かあったのか?


  ごつい男は表情は変わらず強面だがエミリアを心配しているようだ。顔に似合わずいい人なのかもしれない。


  「盗賊達に襲われてルカ以外は全滅してしまったよ……タクヤさんとホロさんに救われたけどもっと護衛を増やしておくべきだったね。護衛の兵達には悪いことをしちゃったよ……」


  「そうだな……遺族には賠償金と葬式代をだしてやろう。何かしらの仕事も与えてやらねばならんが一先ずお前とエミリーが無事でよかった……君が私の妻と娘を救ってくれたタクヤ君とホロさんだね?ありがとう……私はジーグ・ローデン。この屋敷の主で熊人だ。どのような礼をすればいいだろうか?」


  ジーグはじろりとこちらを睨んで聞いてきた。

  特に何もいらないのだがどうしたものかとエミリアの方を見るとエミリアはハッとした顔で口を開いた。


  「ジーグ、とりあえず夕飯を先に食べよう。お客様をいつまでもこんなところに立たさねおくわけにはいかないでしょ!」


  ちょうどどこかの部屋からきたエミリーがドレスを着て登場した。

  先ほどの薄汚れたものとは違い可愛らしいピンクのドレスを着ている。


  「珍しいドレスを着ているなエミリー。好きな人に見せたいと言っていなかったか?」


  「そんなこと言ってない!!汚いドレスよりマシでしょ!」


  エミリーは否定してはいるが目は泳いでいる。エミリアはその様子をニヤニヤしながら見て食堂に行く。


 



  長いテーブルにこれでもかというほどの贅を尽くした料理が並べられホロが猛烈な勢いで食べている。無礼かと思ったがジーグあまり変わらない感じで食べているのでまあいいのだろう。

  エミリーは何度もタクヤに話しかけようとしたがその度にホロに邪魔をされており若干不機嫌になっていった。


  「……本当にそれだけでいいのか?君なら王都の騎士にだってしてやれるのだぞ?」


  「俺は目立たず冒険者として生きたいのです。それに騎士は規律とか多すぎて息苦しそうですので」


  「ふうむたしかに規律は多いな……無理強いはできんか……では報酬はB級昇格依頼の推薦とホロさんの防具の強化とコンソメの格安販売にしておこうか」


  ジーグは見た目は強面だが実は貿易商がうまくいきすぎて貴族になったようで下手な貴族よりも金を持っていることと貿易に関しては王よりほとんどのことを任されているから色々嫌がらせをしてくる連中がいるという。

  コンソメは貿易で輸入しているのだがとても高いのだが俺個人に対しては格安で譲るという報酬をもらっている。証拠として紹介状ももらっておいた。


  これだけでも結構な礼かと思ったのだがジーグにとっては『たったそれだけ』らしい。

  改めて貴族の懐の暖かさを知った。


  宴が終わりどでかい風呂に入りルカに部屋に案内された。ホロはすでに別の部屋に案内されたらしい。

 

  「相部屋じゃダメか?相部屋の方が安心するんだけど……」


  そう言うとルカは少し困ったような顔をしながら言う。


  「エミリー様がどうしてもお話がしたいとのことでして……あとでホロ様と同じ部屋にご案内いたしますので今だけはエミリー様に従ってはいただけないでしょうか……?」


  何か用事なんてあっただろうか……?まあこのまま断って貴族を敵に回すなんてことがあってはいけないので従うか。

 

  「すぐに終わるのならいいぞ、だけど問題が起こらないようルカもいてくれないか?」


  「エミリー様が許可してくれたらご一緒します……着きました。こちらがエミリー様のお部屋になりますので失礼のないようお願いします」


  結局ルカは立ち去ってしまった。はじめから二人きりにしろと言われていたのかもしれない。

  俺はドアをノックし一声かけて部屋に入る。

 

  「失礼します、俺に話があるとか……」


  部屋に入るとエミリーがベッドに座って待っていた。


  「あらタクヤさんよく来たわね!私のお部屋中々いいところでしょ?」


  部屋には大きな見たこともない動物のぬいぐるみが大きなピンク色のベッドの上に無造作に置かれている。化粧台もありその上にたくさんの化粧品が並べられている。

  勉強机も置いてあり本が何冊も置かれている。

 


  「貴族らしい豪奢な作りだが派手ってわけでもないな、女の子らしい部屋だな」


  貴族を怒らせたくないから適当に褒めるとエミリーは頬を赤く染めて「そ、そう?ありがと……」と小さな声で呟いた。


  「ルカがもうすぐ紅茶持ってくるから椅子に座って待っててくれる?ええっとその……た、タクヤさんは獣人が好きなんだよね……?白狼の人と一緒にいるし……も、もしよかったら私と付き合ってくれないかな〜って思ったんだけど……うぅ恥ずかしい」


  なるほど、帰って来てから急いで着替えて来たのはアピールをしたかったのか。しかし俺はホロ以外と付き合うつもりはないしやんわり断っておくか……。


  「たしかに獣人は好きだけど俺はホロ以外と付き合ったりはしません。それに俺は家族と釣り合うような男でもありませんしね」


  「……だよね〜……ホロさんとタクヤさんはお似合いだしはじめから勝負になるなんて思ってなかったですよ!ルカ!入ってきてもいいわよ」


  ドアに向かって言うとルカが一礼しながら入室してきた。

  紅茶のいい匂いがする。夜だからお菓子はないようだ。


  「ほらほら飲んで飲んで!ルカの紅茶は絶品なんだから!」


  急かされ紅茶を飲むととても美味しく体が温まってくる。


  「これは美味い……!お菓子があれば尚よかったんだろうが十分だな」


  「ありがとうございます……」


  ルカは事務的に答える。美人だが少々無愛想なのが欠点だ。


  お茶会が終わり部屋に戻ろうと立ち上がりドアに向かうとエミリーに呼び止められる。


  「まだ何か……っ」


  振り返るとエミリーが口づけをしてきた。

  口を開いていたのもあり舌まで入れてくる。獣人は貪るようにキスをする習慣であるのだろうか?ホロに負けず劣らず激しいキスだ。


  「………お礼はこれでおしまい。もう寝るわ、お休みなさい」


  エミリーは顔を真っ赤にしベッドに向かう。

 

  「おやすみ……情熱的だな」


  それだけ言ってルカと共に部屋から出る。


  「……失恋って辛いな」


  ホロの待つ部屋に案内され入室するとホロが珍しくソファでだらしなく座っていた。

 

  「タクヤ様〜お帰りなさいです〜……お酒って美味しいんですね〜うふふ…」


  ルカを見ると少し申し訳なさそうな顔をしていた。

 

  「すみません……エミリー様と二人きりにするためにワインを飲んで酔わせて大人しくさせていただきました」


  「……はぁ〜……実害はないから許すけど二度とやらないでくれ。またやったら許さないぞ?」


  少しだけ殺意を開放し威嚇するとエミリーはブルリと震えて頷いていた。


  「ホロ、大丈夫か?寝るぞ」


  「わわっ!お姫様抱っこでしゅか?!恥ずかしいけど嬉しいです!!」



  今日はこのまま寝て明日さっさと帰ろう。

  エミリーのことは嫌いじゃないが貴族という人種はどうも苦手だ……。


 


 

 


 


 

 


 


 


 


 

 


 

 

 

 


 

 

 


 



 


 

 


 

 

 

 

 

 

 


 


 

 


 


 

 


 

 


 


 

熊人……生まれつき体格が良く戦士になる者が多い。普段は穏やかだが怒るとやばい種族。男性は筋肉質な体型で女性は豊満な体型が多く耳が小さくて可愛い。

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