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パワー その未知なる力

パワー part1.5

作者: カケフ優馬

 この物語フィクションであり、実在の人物とは何ら関係ありません。<m(__)m>

 2012年5月終盤のある日の午前、ドイツ東部。ポーランドとの国境近くの、とある街の外れにあるカフェテラスの一角。

 2人の男性?が、小さなテーブルを真ん中にして顔を合わせた。1人は、眼鏡をかけたインテリ風の紳士で、紺色のスーツ姿に、スーツの色を更に濃くした濃紺で無地の地味なネクタイをしていた。もう1人は、それとは全く対照的にラフな服装で、白地に前と後ろにびっしり濃い緑色の文字がプリントされたTシャツと、どこにでもあるごく普通のデニム姿だ。ただ、Tシャツもデニムもどうも体にあってなくて、、Tシャツは肩幅が窮屈そうだし、デニムは寸足らずの感じがした。しかも、紳士風の男がちゃんと革靴を履いているのに、もう1人の方は、サンダルというラフさである。年の頃は、前者が20代後半くらいで、後者は20くらいといったところか。


 (尚、以下の会話は実際ドイツ語で交わされたものであるが、日本語に訳して表記します。)


 「美佳の娘が死んだね。」 開店して間がないせいか、客は他にまだ2,3人しかいなかったが、眼鏡の紳士は小声で話しかけた。

 「やっぱり、今日本で起こっていることの張本人は彼女達でしたか?」 その言葉には、深い落胆が籠っていた。

 「コロナの気持ちを察するよ。」 コロナは抑え切れない涙を拭いながら、子供時代に日本で感じ取った想いを回顧していた。それには、深い懐古の想いもあった。

 「ええ、事故で怪我をした私を、美佳は本当によくしてくれました。医者である父の計らいで、最も信頼出来る看護師である彼女だけに、私の看護を任せ・・ その為に幼い美野里にどれだけ寂しい想いをさせてしまったことか。」

 「仕方がないよ。コロナの身体に起こる変化に寛容に対応してくれる人が美佳だけだと、コロナのお父さんが判断したことは賢明だったと思うよ。」

 「ありがとう、ハロルド。本当のことを打ち明けられて、本当にこれからの世界について話せるのは貴方だけです。」

 「もう2度とあの悲劇を繰り返さない為にも、僕達は信頼し合い、力を合わせるべきだからね。僕達があの過ちを犯したドイツに生まれたことは、決して偶然なんかじゃないんだ。」

 「それは私も同感です。如何なる理由があっても、人は人を殺してはいけない。美野里の父親でさえ、美佳の為に封印して愛を貫いたのですからね。」

 「しかし、その為に美佳の娘は、自らに宿った力に悩み苦しんだんじゃないかな。」

 「会いたかった。1度だけでも美野里に会いたかった。一言謝りたかった。そして、友達になりたかった。共に力を持った者同士、仲間として・・。」

 「それは、僕も同じだ。彼女の力は、世界の混乱を鎮めるのに、とても大きく有効な力だと思うからね。」

 「ハロルドは、美野里の力の正体が分かるんですか?」

 「いや、ほとんどはコロナから聞いた話からで、その補足は僅かに入って来る情報でしかないが、僕の思うところでは、彼女の力の正体は、イマジネーションだと思う。」

 「ハロルドは、想像だけで奇跡を起こせる力を信じるのですか?」

 「もちろん、まだ確信を得ている訳じゃないよ。そこでだ、面白い情報があるんだ。」

 「面白い情報?」

 「美佳の娘と大きな関わりを持った少年と少女が、パワーリフティングの世界大会で、8月の終わりから9月にかけて、ポーランドにやって来るんだ。」

 「2人ですか?」

 「そうだ。少女の方は兎も角、少年の方は、今日本で起こっている蘇生騒動の張本人だよ。」

 「さかしたゆうまと、つきおかまなみ。」

 「何だ、名前まで知っていたのか。」

 「ええ、医学的に有り得ない事態に、うちの父も興味津々で、本当はすぐにでも日本に行きたがってますよ。それで、どこから得た情報か知りませんが、名前を教えてくれました。」

 「聞いたのかい?」

 「いえ、力を使いました。」

 「そうか。」 そう云ってハロルドは少し笑った。

 「おかしいですか?」

 「いや、医学的に有り得ないのはコロナも同じだと思ってさ。」

 「確かに。」 コロナも笑った。その笑い声で、初めて他のお客が2人の方を振り返った。


 3カ月余り後の9月の初め、ポーランドの某所。

 優馬と真奈美は、日本チームのユニフォーム姿で、試合会場でもあるホテルの周辺を散歩していた。すると、1人のブロンドの女性?が近づいて来て、優馬にドイツ語で話しかけた。その人は、20歳くらいで、白地に緑色の文字がプリントされたTシャツとデニムとサンダル姿だが、デニムは少し長めの様だ。話しかけられた優馬は、それが何語かも分からなかった。

 「アイムソーリー。ジャパニーズオンリー。」

 「優馬、それ多分ドイツ語だよ。」 真奈美の言葉にその人は頷き、笑いながら又ドイツ語で何か云いながら、右手を差し出して来た。どうやら握手を求めて来ている様だ。優馬はそれに応えて、握手をした。すると、その人は随分感激している様で、なかなかその手を放さなかった。優馬はそれに苦笑いし、真奈美は呆れて見ていた。初めのうちは、それがこの辺の風習なのか?としばらく応じていたが、やけに長いので、2人の間に真奈美が割って入ろうとした。その時、優馬と真奈美は相次いではっとした。感激して笑っていたその人が、今度は泣いていたのだ。そこへ、突然茶色の髪の20代後半のスーツ姿の紳士が現れた。

 「すまない。この人は僕の友人で、コロナと云います。そして、僕はハロルド。僕らは、ドイツ人です。コロナは、以前に日本に行ったことがあり、その時事故で大怪我をして、その時日本の方に凄く親切にされて、以来日本や日本の方を大好きになったのです。」 それは見事に流暢な日本語だった。

 「そうだったんですか。」 優馬は納得して、そのまま握手を続けていたが、少し面白くない顔をしていた真奈美に気付いたコロナは、ようやく優馬から手を放し、今度は真奈美に握手を求めた。真奈美もそれに応じ、しばらく交わしていたが、優馬よりはかなり早めにその手を放した。

 「ありがとう。コロナは堪能した様です。」

 「ダンケシェーン。」

 「いえ、こちらこそ。」

 「では、失礼します。」 彼らは優馬達から離れて行った。

 「何だったんだろう?」 2人が去ってから、真奈美が苦笑いしながら云った。

 「何だったんだろうね。まあ喜んでくれたみたいだし、よかったんじゃないかな。」

 「優馬、金髪の綺麗な人に手握られて、嬉しそうだったね。」

 「ごめん、真奈美の気も知らないで。」

 「冗談だよ。そんなんでやきもち妬かないよ。だって、優馬との絆は誰にも負けないから。」 笑顔を交わし合って、2人は、手を繋いでホテルに戻った。

 ありがとうございました。<m(__)m> 実は、これはパート2の冒頭に持って来るつもりで、パワー執筆直後には構想しておりました。ドイツ人の設定も、その時に既に決めておりました。パート2は、世界中に散らばる特殊能力者が、世界の混乱に立ち向かう話にする予定です。

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