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山崎さんを知りませんか?  作者: 佐伯瑠璃
第一章 医者として
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長州挙兵!?早すぎやしませんか?

もう此処で宣言しますっ!

この話、鳥羽伏見の戦いまで突っ走ります。

池田屋事件を迎えてしまったらもう止められないですよ…ね?

山崎さんを知りませんか?最後までお付き合い下さいm(__)m

池田屋での騒動が落ち着いたと思った矢先、すぐに長州にこの事件が報告され十日も経たない内に挙兵されたと知らせが入った。

今回はこの情報は会津藩の隠密が突き止め、挙兵後半月も過ぎてから新選組に知らされた。


「なんでこう会津藩の隠密はトロいんだ!」


土方はかなり苛立った様子で何処かを睨みつけている。

聞くと今回は新選組の監察隊は動いていなかったらしい。

いつものように土方の部屋で助手を兼ねた仕事をしている椿は、ふと今回の情報の遅れは自分の所為ではないかと不安になった。

先日まで感冒で伏せっており、その間は山崎が付ききりだったからだ。


「あの、申し訳ございません!私のせいで」

「なんだ、お前何かしたのか」

「私が体調を崩さなかったら、山崎さんも諜報活動が出来たのに。新選組の邪魔をしてしまって」


自分が山崎の足枷になってしまったと後悔していた。


「莫迦、お前の病は関係ねえよ。あれ以降、会津藩が仕切ると言ってな指示が来ない限り動けなかったんだ」

「そうなんですか?」

「それに、お前が倒れたって必要であれば山崎は任務に出すさ。お前が泣いて頼んでも聞いてやれねえ」

「なっ、泣いて頼んだりしません」

「だから、気に病むな」


土方の言葉を聞いて少し安心したものの、以降はあのような事が無いように気をつけようと気合を入れる。


「にしても遅いっ!」


土方の苛立ちは治まらなかった。

何かを待っているのか、書物(かきもの)の手を止めたままだ。


「副長、宜しいでしょうか」

「入れっ!」


山崎が入って来た。


「局長がお呼びです」

「分かった、直ぐに行く」


頭を下げ、山崎は部屋を出ていった。

隊務中の山崎はお面を被ったように表情は堅い。

椿が側に居ようとそれは変わらない。椿もそれをよく理解している為、敢えて山崎を見ないようにしている。

気配で緊迫しているものか、緊張を要するものなのか分かるのだ。


「椿、悪いが此処を頼む」

「承知しました」


局長が副長を部屋に呼ぶという事は、なにか面倒な事になっているに違いない。

椿は土方が勘定した物を整理し、新しい紙と筆を馴らして置いた。

墨はまだ十分にある。


戻って来てすぐ、作業が出来るようにする為だ。

会議が終わると書面での申請や申告は土方が全て行っているからだ。


一刻ほどして土方が戻って来た。

表情は堅いように見える。黙って文机に向かうと何やら書きはじめた。

眉間に皺をぐっと寄せ、一気に何かを書いてある。


「よしっ」


書き上がったその時、山崎が計ったようにやって来た。

この二人は何処で通信し合っているのかと不思議でならない。


「山崎、これを頼む」

「はっ」


素早く文を懐に仕舞うと再び部屋を出ていった。

今回は普段着だったので危険を伴うものではないだろう。


「椿、暫く忙しくなる」

「あ、はい」

「今回は隊を率いて、一番遠くて伏見か大阪まで出る」

「・・・」

「椿は此処で待機だ」

「待機?」

「ああ、新選組に正式な出動要請がなかなか来ないから押し掛ける。動きが読めねえから連れて行けない」

「分かりました」


幕府は今回、薩摩藩が加勢するとの申し出を受けた。

扱いの難しい新選組は蚊帳の外なのだ。しかし、それを黙って見ている近藤と土方ではない。

山崎に持たせた文は新選組の出動要請を依頼する為のものだろう。


「山崎は伝令で連れて行く。お前は屯所で不測の事態に備えて、救護班を取りまとめるんだ。分かったな」

「はい!」


長州は池田屋で同胞が殺されたことに激昂(げきこう)し、僅か十日程で兵を挙げ京に向かっているのだ。


もしかしたら銃が使われるかもしれない。

椿はいよいよ其れに備えるべき、行動に出たのである。



「あっ!先生が戻ってきているかもしれない。文を出そう!」


椿には師匠がいる。その師匠の医者としての姿勢を椿はとても尊敬していた。女、子供、年寄、金持ち、貧乏関係なく診ていたからだ。

そして女でどこの馬の骨か分からない椿を弟子にしてくれたのだ。

ある日、蘭学を学ぶと言い異国に旅立ってしまった。

あれから四年が経っている、大阪に戻っている頃だろう。


「蘭方医なら銃弾の傷にも詳しいはず」


早速、椿は書いた文を飛脚に託し師匠に届くことを神に祈るような思いで見送った。


この時代、いつ文が届き相手が受け取ったのかなど分からない。

飛脚は余程のことがない限り襲われることはない。

大名行列にでさえ脚を止める必要はないとされている。

これが一応の規則だ。それを守らぬものはお上から厳しく罰せられる。


しかし、世も乱世。

何が起きてもおかしくはない。だから信頼する隠密に託したり、その方向へ向かう仲間に託すのだ。


「どうか、先生に届きますように」


椿が出したこの文は、すっかり忘れた頃に思わぬ形で返ってくる。

それは新選組にも影響を及ぼす事となるのだか、椿はまだ知らない。


新選組、幕末好きの方ならば蘭方医と言えばっ!…です。

見え見えですみません(笑)

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